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天使たちの天界戦線(二章、熾天使の大罪)


二章、熾天使の大罪


ヌーラ「戻りました。」


オッソ「お帰り。下界は出来た?」


ヌーラ「出来ましたよ。あとは、時の流れを待つのみです。」


カリタル「ビランチはどうしたんだ?」


ノーヴェ「ビランチなら、しばらく休んでるぜ。」


ヌーラ「そうですか。」


イアス「取り込み中のところ済まない‼ヌーラはもう戻ってきてるか?」


ヌーラ「ええ。今戻りましたが。どうしました?」


ヴェッキ「(モルタとチュルがいる・・・まさか・・・)ヌーラ。人間はもう作ったのか?」


ヌーラ「ええ。あとは時を待つのみです。」


イアス「その人間のことなんだけどよ・・・その・・・なんだ。」


オルゴ「なんだ、歯切れの悪い。はっきり言え。」


ヴェッキ「なら率直に言う。生命の木と知恵の木。植えたか?」


ヌーラ「植えましたが・・・それが何か?」


ヴェッキ「さっきシェンスが言っていたんだが、人間に生命の木と知恵の木を食べさせるのはまずいらしい。」


ヌーラ「なぜです?」


ヴェッキ「不完全を知るためだそうだ。そもそも今回、人間を創る理由がその不完全を知るためで、それを知るには俺たちとまったく同じ模倣物を創るのはまずいらしい。」


ドラーク「なら、今すぐにでも抜かないとまずいじゃない。」


イプノ「待ってくれ。僕はその話初耳だぞ?」


セイ「私も初耳ですね。」


フォルテ「とりあえず、ヴェッキとイアスは一旦シェンスのところに戻って今の状況を伝えてきてくれ。その後、再度シェンスを伴い、こちらに戻ってきてくれ。」


ドラーク「私はビランチを呼んでくるわ。」


フォルテ「頼むよ。」


モルタ「(やっぱり、ダメだったのか・・・。)」


イプノ「ところで、不完全の件を僕やセイ以外に知らなかった天使は何人いるんだ?」


フォルテ「僕も知らなかったよ。」


ヌーラ「私も知りませんでした・・・。」


イプノ「だよね。だったら最初からモルタとチュルを呼ばない。」


オッソ「私も知らなかったけど、今は誰が知っている知らないよりも、早くビランチかシェンスに不完全の真偽を確認することが先じゃない?」


イプノ「それは分かっているよ。でも、ここで誰が知っているかくらいは、確認しておきたいんだ。もし知っていたのに言ってない奴がいるなら、そいつにも少なからず責任はあるからね。」


グラント「責任って・・・まだ、真偽もわかってないのに話が飛躍しすぎよ。」


セイ「しかし、イプノの意見も一理あると私はあると思います。もし、シェンスの言う通り、不完全にするならば、人間には不完全という宿命を背負わせることになる。ならばせめて、完璧に不完全にしてあげるべきです。それが私たち天使の手違いで狂っては、天使の責任も問わざる負えないでしょう。」


グラント「確かに、天使だからってそこに甘んじちゃだめよね。」


シェンス「来たわよ。」


フォルテ「シェンス‼それにプロイビーもいるじゃないか。」


シェンス「ヴェッキとイアスから聞いて飛んできたわ。まず、不完全の件だけど、生命と知恵は必要ないから植える必要はないわ。だから、ビランチに抜いてもらう。」


イプノ「分かった。」


シェンス「それと、モルタ‼」


モルタ「は、はい‼・・・何でしょう?」


シェンス「生命の木植えた場所覚えてる?」


モルタ「・・・だいたいの場所は覚えていますが、正確な位置までは・・・。」


シェンス「チェルは?」


チェル「・・・同じく。」


シェンス「やっぱりね・・・。念のためプロイビーを連れてきて正解だったわ。」


セイ「どういうことですか?」


プロイビー「私が知恵の木と生命の木を天界から知の力で探って見つけるのよ。」


シェンス「そ、もし生命と知恵を植えてるなら一つや二つじゃないからいくらチュルとモルタがちゃんと覚えていても抜くにはそれなりの時間がかかっちゃうと思ってね。でもプロイビーなら、手の中を見るように正確だから、ビランチが抜く時の指揮系統もシンプルになるし、素早く抜けると思ったの。」


イプノ「流石、思考をつかさどる天使の一人なだけあるね。」


シェンス「まあねん。でどう?プロイビー。知恵の木と生命の木は見つけた?」


プロイビー「着々と見つかっているわよ~~。(それにしても、人間ってグロいというかキモいというか・・・なんか変な感情になるわね・・・。)あっ‼ヤバ‼」


オルゴ「どうした⁉プロイビー‼」


プロイビー「木の実、食べちゃった・・・‼」


グラント「・・・どっちのを⁉」


プロイビー「知恵の方・・・。」


ノーヴェ「あっちゃ~~~~。」


ドラーク「連れ戻ったわよ‼」


イプノ「・・・一足遅かったね。ビランチ。」


ビランチ「・・・悪かったわね。で、状況は?」


シェンス「・・・知恵の方は食べられちゃった汗。」


ビランチ「・・・なるほど。分かりました。」


シェンス「プロイビーが中継するから、せめて他の知恵の木と、まだ食べられてない生命の木を抜いてきて~~。」


ビランチ「・・・いろいろ世話をかけるわね。シェンス。」


シェンス「いや、今回は私もあんたに頼りすぎたわ。ごめんね汗。なんでもかんでも頼んじゃって。」


ビランチ「・・・そういってもらえるだけ助かるわ。じゃ、行ってくるわね。」


シェンス「頼むわ。・・・知恵と生命はプロイビーとビランチに任せるとして、こっちはこっちの問題を解決しましょっか。」


イプノ「・・・責任の所在。つまり、僕たち天使の責任の問題だね。」


グラント「あんた、まだそんなこと言って・・・‼」


ドラーク「でも、避けては通れないわ。そもそも、話が通っていればこんなことにはならなかったわけだし。」


セイ「・・・ドラークのおっしゃる通りですね。人々に私たちの罪の一部を背負わせる結果となってしまったのですから。」


ヌーラ「私のせいですね・・・。私が確認していれば、人々に呪いを背負わせることもなかった・・・。」


オッソ「あなたのせいではないわよ。だってビランチから知らされていなかったわけだし。」


イプノ「そう。君は悪くないだろう。ヌーラ。悪いのは、僕たちに知らせなかったビランチだ。なぜ、知らせなかったのかはわからないが。」


フォルテ「・・・なぜだろうね。」


ノーヴェ「・・・忘れてたんじゃねーか?忙しさのあまり。」


ドラーク「なるほど。確かに、それはあり得るかも。」


セイ「・・・しかし、忘れていたで済まされる問題の大きさではありませんがね。」


イプノ「セイの言う通りだね。」


シェンス「ここで、あーだこーだ言っててもしょうがないし、ビランチに直接聞きましょ。ちょうどこっちに戻ってきたみたいだから。」


ビランチ「ごめんね。みんな。不完全の件。ちゃんと話してなくて。」


フォルテ「それで、なんで僕たちに話さなかったんだい?」


ビランチ「色々とバタバタしちゃって、忘れかけていたの。本当、ごめんなさい。だからヌーラ。あなたの責任じゃないわ。」


ヌーラ「しかし・・・取り返しがつかないことをしてしまいました。相応の罰がなければ、私も気持ちの整理がつきません。」


オルゴ「・・・どうするんだ?ビランチ。」


ビランチ「・・・そしたら、私と一緒に人間の盛衰を最後まで見届けてくれる?今回みたいに、私だけじゃ不十分だから、足りないこととかあったら助けてほしいの。」


ヌーラ「・・・分かりました。」


ノーヴェ「・・・シェンスはいいのか?」


シェンス「何が?」


ノーヴェ「ほら、不完全の件。今回の問題の鍵はシェンスの意志だと思うんだが。」


イプノ「確かにね。元々シェンスの提案で生み出したのが人間なんだし。そこのところを聞きたいな。」

シェンス「ん~~。あたし的には全然OKかな。だって、いくら知恵の木を食べちゃったとしても、まだ生命の方は食べられてないから、不完全であることに変わりわないし・・・それに、知恵の木を食べちゃったってことは、いつか話ができる日が来るかもよ?」


グラント「・・・それは人間と、ってこと?」


シェンス「そ。それって、なんかわくわくしない⁉」


ドラーク「わくわくはしないけど・・・新鮮ではあるわね。」

シェンス「だから、私としてはOKよ♪」


ヌーラ「・・・そう言って頂けて、感謝しかないです。」


ドラーク「シェンスちゃんもOKみたいだし、不完全問題は解決ね。で、次はどうするの?」


ビランチ「次は、私たちが下界に降り立つ為の社の創造と、人間に対して新たな呪いをかけます。」


イプノ「呪い?この上さらに、人間に宿命を背負わせるのか?」


ビランチ「そうよ。私の不手際でこうなったとはいえ、人々は知恵を得たことで、バランスが崩れてしまったわ。だからそのバランスを保つため、新たに呪いをかけ、整えます。」


プロイビー「でも、どうやって?」


ビランチ「チュル‼近くまで来てくれる?」


チュル「はい。何でしょう?」


ビランチ「人間の知恵を有限にして頂戴。」


チュル「・・・どのように指定しましょう?」


ビランチ「そうねぇ・・・人間の命が尽きたときに、知恵も尽きるように指定して頂戴。」


チュル「了解しました。」


ビランチ「これで、人間の魂が地上に溜まることは回避できたわ。」


イプノ「なるほどね。生命の制限に合わせて知恵の制限をかけることで、知恵を得る前の状態と無理矢理同じにしたわけか。」


ビランチ「そう。あとは、ヴェン‼」


ヴェン「お呼びでしょうか。」


ビランチ「あなたには地上に私たちが一時的に降り立つ社を創ることを人間たちに働きかけてほしいの。今は混乱してるから、落ち着いてからね。」


ヴェン「・・・かまいませんが、なぜそのような社が地上に必要なのですか?」


ビランチ「それは、人間のためよ。今人間は知恵を得たことでとても混乱しています。また、地上で知恵を持つ存在は人間以外居ません。つまり、知恵の使い方を知らないのです。なので、私たち天使が人々に知恵の使い方を教える必要があります。そのために、一時的にでも地上に降り立つ場所が必要になるの。」


ヴェン「・・・なるほど。そういうことであれば、承知しました。」


ビランチ「社ができたら、プーロに道を繋いでもらいます。」


プーロ「え?俺がっすか?」


ビランチ「そうよ。」


プーロ「え、そもそもなんで道を繋ぐ必要があるんですか?人間に助けが必要なら、いつでも力を与えられるじゃないっすか。天界と下界は繋がっているんだし・・・。」


ビランチ「そのつながりを最終的に断つからよ。人間たちには当初、私たち天使の判断で、定期的に力を与えて様子を見るつもりだったけど、知恵を得たから、出来るだけ人間たち自身でその存在を保ってもらうことにしたの。知恵を持つということは曲がりなりにも、私たちと同じ考え方を持つ可能性があるということになるわ。ならば、私たちが上から力を与えるというシンプルな形ではだめだと思うの。知恵を持つなら、出来るところまではその知恵を使って頑張ってもらって、本当に必要な時だけ私たちの力を与える形にしたくてね。だから、天界と下界のつながりをある程度地上に社ができたら完全に隔てて、そこから、その社と天界の道のみを中継点にしようと思ってるの。それなら、私たちは不用意に人間に力を与えることはできないし、人間も容易には天使に頼ることをしないと思ってね。」


プーロ「なるほど・・・。なら、分かりました。」


ビランチ「頼むわね。」


イプノ「・・・やっぱり、流石だね。ビランチ。」


ビランチ「それって・・・褒めてる?」


イプノ「・・・もちろん。」


ビランチ「そう、ならいいけど。・・・とりあえず、今できることはこれくらいかしらね。」


セイ「そうですね。あとは、経過を見てみないことにはわかりません。」


フォルテ「セイの言う通りだ。とりあえず、いったん解散しよう。ここまで、僕たち熾天使は休んでない。」


ドラーク「そういえばそうね。じゃ、わたし休ませてもらうわ。」


イプノ「お好きにどうぞ。ま、僕も休むんだけどね。」


ビランチ「イプノもご苦労様。私も、指揮をフェアに託したら、休みます。」


オルゴ「了解だ。フォルテ。お前の代わりは俺が引き継ぐ。」


フォルテ「・・・いいのかい?君だって疲れているだろう。」


オルゴ「本当にまずくなったらフォールかブッピラに任せるから安心しろ。」


フォルテ「なら、お言葉に甘えさせてもらうよ。」


ビランチ「そしたら何かあれば、フェアに意識を飛ばしてください。これで一旦解散です。」



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