11の倍数の見つけ方 灘中学2024に絡めて
開成中学2024算数問題にハマりましたが、2023の問題に萎えたので、西の覇王(?)である灘中学の問題を見にいきました。結果としては一層萎えた感じです。受験産業を盛り立てたいのでしょうか?1日目の算数の大問1,2,3は方程式や不等式の問題として解決すればよく、何でわざわざ「算数」で解くかな?という思いになります。大問4は、中学数学の文章題として扱えばいいのではないかと思いました。大問5にはもはや笑うしかないですね。
11の倍数についての議論です。これを試験時間内に解こうと思うなら「11の倍数の見つけ方」の知識が必要です。算数の範囲内でこれらをまっとうに論じることができるのでしょうか。
これを論じる場合には、『合同式』を用いるのが強力です。
『合同式』とは、整数A, Bをそれぞれ、正の整数pで割った時の余りが等しい時、「AとBはpを法として合同である」といい、
A ≡ B (mod. p)
と表したものです。
面白いのは、この≡記号には統合=と同じようなことが言えて、
A ≡ B (mod. p、以下同じなので省略)であるとき、
同じ整数Nについて、
A+N ≡ B + N
A - N ≡ B - N
A × N ≡ B × N
が成り立つ。除法についての話もあるのですが、これはややこしいので割
愛します。
証明については、気が向いたら後日書きます。
これを使います。
10 ≡ -1 (mod. 11、以下略)が基本になります。
10を11で割った余りは10とも-1とも考えられるのです。
10 × 10 ≡ -1 × 10(= 10 × (-1))
ここで、10 ≡ -1 ですから、両辺に -1をかけると、
10 × (-1) ≡ -1 × (-1) (= 1)
つまり、10 × 10 ≡ 1 となります。10^2 ≡ 1 ということです。
今度は、10^3を考えてみます。
10 × 10^2 ≡ -1 × 10^2 = 10^2 × (-1) ≡ 1 × (-1) = -1
よって、10^3 ≡ -1 が得られます。
あとはこの繰り返しなので、10の奇数乗のとき-1、偶数乗のとき1、とそ
れぞれ合同になると考えられます。これは数学的帰納法を用いれば証明で
きるでしょう。
話を分かりやすくしますと、A, B, C, Dをそれぞれ千の位、百の位、十の位、一の位にもつ整数は、1000A + 100B + 10C + D と表すことができます。ここに「合同式」の登場です。
1000A + 100B + 10C + D ≡ -1・A +1・B +(-1)・C + D
= B + D - ( A + C) ←ここは「=」です
ということなので、4桁の整数であれば、それを11で割った時の余りは、百の位と一の位の数の和から、千の位と十の位の和を引いた整数を11で割った時の余りに等しい。11の倍数であれば余りは0なので、百の位と一の位の数の和から、千の位と十の位の和を引いた値が0であればもとの4桁の整数は11の倍数であるということがいえる。
ちゃんとした説明なく「そういうもの」として教え込むこともできるでしょう。
そういうブラックボックスを内包する知識を詰め込むようなことを、これからを生きる小学生に課すのはちょっと違うのではないかと思います。
合同式を論じる端緒にはなりましたが、初等教育の仕上げ方についての問題を感じずにはいられませんでした。