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『解体屋ゲン』 #74 聖者の行進

昔のことを思い出すってのは中々に辛い作業で……今回は当時の記憶がフラッシュバックして参りました。この頃、妻の双子妊娠が判明してめちゃめちゃ大変な時期に突入したのです。

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この話の主人公にはモデルが居て、それが小中の同級生だった井桁君です(作中では井口)。彼がジャズミュージシャンになっていると聞いてインタビューし、そこから話を作ったんですが、なんかあまり近い人をそのまま描くのは却って難しく、思い切り歳を取らせることでなんとかできました。当時、たしか新聞で不発弾が見つかったという記事を読み、それを題材にした記憶があります。こちらは取材はしてません。

ただ、前述の通り妻の妊娠が判明し、普通なら喜ぶところでしょうが、以前書いたかも知れませんが、前年にはじめての子どもを早期切迫流産で亡くしており、それがかなりショックで、しかも次が双子ということで、とにかく無事に産まれてくれ、と常に祈るような気持ちでした。

それでも〆切はやってくる。困ったことに、この頃別名義でもう1本原作を書いていて、1週間の〆切が2本、今なら断った……かな、どうだろう…とにかく当時は、来る仕事は拒まない、でないと次はない、みたいな風潮がありました。

毎朝悪夢で目が覚め、〆切に追いまくられ、回らない頭でストーリー展開を考え…ここからの数年間は、記憶が飛ぶくらい忙しい時期に突入してゆきます。妻は妊娠7ヶ月から安静を取って入院、家事の一切を引き受けて病院との往復…戻って仕事してぶっ倒れるようにして眠りに落ち、また悪夢で目覚め…。

我ながらよく壊れなかったもんだと思います。ただ、この時期を思い返すとそんなに嫌な思い出でもないんです。悪夢にうなされながらも子どもが生まれてくるという前向きな理由だったのと、書くことでお金を稼ぐ意味を、子どもができることで実感したというか…。

それまで車を買ったり海外旅行をしたり、それはそれで充実していたんですが、どこか嘘っぽいというか、こんな生活いつまでも続かないよなー、みたいな浮ついた感じがあったのが、この先子ども二人の人生が自分に掛かってるのだと思うと、嘘っぽいどころかリアルに押し潰されるくらい実感が湧くというか(笑)。

この回のストーリーが、生き残った主人公が死んでしまった同級生たちを想う、という話になっているのは、そんなこんなを考えていたから……なのかどうか、今となっては思い出せません。<続く>




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