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「透明な雪景色」-忘れても憶えているものだ-

「あれ、この本、自分、読んだことがあるな。」

――すっかり、その本を読んだことを、忘れていた自分。
(たまにこういうことがある。笑)

しかし、「忘れていた」けど、「憶えてもいた」のか、と、ちょっと驚いた。

よくよく調べてみたら、――その本を読んだのは、なんと30年くらい前だったからだ。
(発売されてすぐ読んだ記憶があるのだ。)

「忘れている記憶」。
――その蓄積、その層の厚みに、ちょいと、しみじみしてしまった。

「朝起きたら、びっくりするくらい、一夜のうちに雪が積もっていた。」
みたいな感じにも、ちょうど、その「しみじみ」は似ていたけれど。

――いや、でも違うかな?
記憶は、そんなふうには可視化できない「透明な雪」なのだ。


「一面に広がる、そして音もなく降り続く、透明な雪景色」。
言うなればそれは、そんな感慨であった。