ケア実践講座①/ガイダンス
ケア実践講座 第1回|ガイダンス
日時|2024年7月27日(土)10:00〜12:00
会場|川崎市役所本庁舎304、305会議室
講師|稲庭彩和子(国立アートリサーチセンター 主任研究員)
内容|
・ケア実践講座ガイダンス
・アートと健康、ウェルビーイング
まちと人、鑑賞に続いて3つ目のケア実践講座がスタートしました!
まずはケア実践講座の目標を共有しました。
「年齢や障害の有無にかかわらず、社会のあらゆる人が心地よく安心してコミュニケーションできる場作りを目指し、ケアの視点を深め考える力を身につける」
そのために具体的な社会課題に関わる状況・活動・作法などを知り、ことラー同士で考え、実践していこうという内容です。
初回は国立アートリサーチセンター主任研究員の稲庭彩和子さんに講師としてお越しいただきました。
稲庭さんは東京藝術大学の「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」研究開発課題リーダーでもあります。
そんな稲庭さんには、このこと!こと?かわさきの活動で「ケア」の視点を取り入れる必要性やケア実践講座で扱われる「ユマニチュード」や「合理的配慮」についてお話しいただきました。
なんとなく聞いたことがある言葉、全然知らない言葉、様々なこれから重要となる言葉を稲庭さんに解きほぐしてもらい、ことラーと改めてアートとケアがどう繋がるのかを共有する時間となります。
はじめに「ウェルビーイング」ってなんでしょう、という話からスタートです。
ウェルビーイングという言葉が最近よく聞かれるようになりましたが、ふわっと認識している気もする…。
稲庭さんから改めてウェルビーイングの定義が共有されます。
ウェルビーイングは「精神的にも社会的にも健康で幸福なよい状態」。また人間は社会的な動物であり、その状態はひとりでは作れない、社会の中での関わり合いの中でつくられるという話がありました。
ではそれを踏まえ、ことラーにとって「ウェルビーイング」な状態はどんな時か考えてもらいます。
日々の暮らしの中で「いい状態」というのは案外意識しないものです。しかもその状態は人それぞれ違うし、なかなか言葉にする機会はないかもしれません。
そこであえて稲庭さんが何人かのことラーに聞いてみます。
出てきた答えは
「おいしいものを食べたとき」
「朝起きて、母が元気で、おはようって言えたとき」
「新しい何かを見つけられたとき」
「記憶がなくなるくらい飲んだ瞬間」
「朝起きてやるべきことが出来たとき」
「その場の空気を共有できる人の存在を感じるとき」
あーわかる…どれも納得な内容でした。
特にそうだなと感じたのは「人の話を素直に聞けるとき」。
この意見を言ったことラーは「自分が気分的に卑屈になっている時には言葉の裏をかいてしまう。そうじゃなくて、言葉通り素直に受け止められたら、あ、今日の私、いいな!と感じる」と言っていました。
それを聞いた時にそのこと自体がウェルビーイングに繋がっているというよりも自分のウェルビーイングな状態を図るバロメーター的な話で共感が出来ました。
レクチャーが進み、話題はウィルビーイングから鑑賞、バウンダリーオブジェクト、次回のケア実践講座でテーマとなる「ユマニチュード」へ繋がっていきます。
多岐にわたる内容でことラーも受け取ろうと真剣です。
その後、ケアに関連した台東区で行われたワークショップ「ずっとび鑑賞会」の動画を見ます。
この鑑賞会は地域の福祉セクターと文化セクターが連携して行われましたが、こと!こと?かわさきの活動においても重要な実例になります。
これからは福祉と文化の連携が求められる時代になる、こうした活動をことラーと一緒に作っていきたいと稲庭さんは言います。
ことラーもゆくゆくはこういった実践を行っていくイメージを持てる内容の動画で、ダイレクトに響いていたのではないでしょうか。
レクチャーの後は恒例の近くの人たちとの共有タイムです。
話し始めると各グループから様々な話題が飛び交います。
白熱した対話の後、各グループでなにが話されたか発表してもらいました。
最後に、人生100年の時代の、後半の50歳から100歳をどう生きるか、考えたり学ぶ機会を持つことの重要性について話されました。私たちが受けてきた教育は50歳からあとの長い人生をどう生きるかについてはほぼ想定されていません。しかし今、定年後の時間は働いてきたのと同じ長さとなり、その時間を健やかに充実して過ごせる社会を作っていくことが、私たちの社会の最重要課題になっている、という話に。
老後、健やかに充実した時間を過ごすためには医療だけに解決策を求めるのではなく、それ以外の何かを探る必要が出てきています。
これから、アートとケアに関する活動や考え方はさらに求められる時代になるでしょう。
そんな少し先を見据え、活動を考えていく内容でガイダンスは終了しました。
講座後、受講したことラーみんなで川崎市役所本庁舎にあるカームダウン・クールダウンスペースを見学しました。
カームダウン・クールダウンスペースとは感覚過敏などの光や音の刺激が苦手な人が疲れたり、パニック状態になりそうな時に体調を落ちつかせたり、休むことができる場所や空間です。
こちらもケアのひとつの形です。
入ってみると音や光の大部分が遮断されていることを実感できたようです。
講座後の気持ちがあったまっていることラーからはこの設備について色々な意見が飛び交います。
閉所恐怖症だと入れないね、もう少しわかりやすい位置にないとね、などの具体的な意見も出ていました。
こういったものを実際に体験することで意識し、他の施設でも気にかけることが出来そうです。
こういった積み重ねもことラーの活動の糧になるんだなと感じたひと時でした。
(こと!こと?かわさきプロジェクトマネージャー 財田翔悟)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?