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基礎講座⑤/「みる」とは?

6/9(日)に基礎講座5回目が行われました。
今回は生田緑地内にある川崎市岡本太郎美術館を会場に「みる」ことにフォーカスした講座を開催しました。

講師はこと!こと?かわさきプロジェクトマネージャーの近藤乃梨子さんです。
近藤さんはこれまでに多くの鑑賞プログラム企画運営、対話型鑑賞のファシリテータなどを行ってきました。

まずは川崎市岡本太郎美術館の片岡さんから美術館の概要や岡本太郎についてお話しいただきました。

次に「あなたにとって、印象に残っている「鑑賞体験」はどんな体験ですか?」というお題でことラー同士、共有タイムです。
それぞれに印象に残っている体験をした作品やどのような感覚を刺激されたかなど、自分のストーリーを他のことラーに話し、聞いて、どんどん話が広がっていきます。

何人かに自分のグループで出た話を全体に共有してもらいました。
やはり、ことラーのみんなには印象的な鑑賞体験があるようですが、その観点は人それぞれです。

続いて、「マカパンスガットの小石」と呼ばれている小石の画像を見ながら、自分にはそれがどんなふうに見えるかを3人組で話し合いました。
「石や粘土」「ボーリングの玉みたい」「梅干し」「猫の糞」などなど…
顔に見えるという意見が多かったですが、どの部分が目か鼻かといった細部の見え方はそれぞれで同じモノを見ても感じ方は十人十色です。さまざまな捉え方があることを、体験を通して理解していきます。

午前の最後はメトロポリタン美術館の元館長トーマス・キャンベルのTEDでのプレゼン映像:「美術館の展示室で物語をつむぐ」を見ました。
美術館という場所で作品を鑑賞する体験について語られています。
映像を見終わった後は、それぞれ気になったワードや内容、見たときに感じた自分の考えなどを話し合っていきます。

その後、各グループの代表者それぞれからグループ内で話された内容を全体に共有してもらいました。

トーマス・キャンベルから語られる印象的なワードや考え方にことラーも大いに反応していました。


お昼休みは各々美術館回りを散策したり、芝生でご飯を食べたりと遠足のようでした。
当日はなんとか天候に恵まれて、生田緑地でのひと時を楽しめる時間でした。

ちょっと蒸し暑かったので、みんなアイス食べてました。
すごい楽しそう。
どうやら、誰か1人が食べ始めたら、それを見た人が食べたくなってみんな買い出したよう…「1人だったら絶対買わないけど、ことラーみんなでいたらたべたくなっちゃった」とのこと。
年齢もバックグラウンドも違うことラーですが、楽しみを共有できる仲間になってきているようです。
さながら大人の遠足、といったひと時です。


午後は午前中の話を踏まえて作品を「みる」時間となります。

まず、ことラーにはバウンダリーオブジェクトの概念を共有します。
直接のやり取りが難しい場合でもモノと介してやり取りをすることで「なにか」がしやすくなるというものです。
アートにはその力を発揮する可能性を多分に持っています。
文化芸術をコミュニティ活動の軸のひとつとすることでそれぞれの価値観などを表明しやすくなるからです。

こと!こと?かわさきではそのアプローチの方法のひとつとして「対話型鑑賞」へとつなげていきます。

対話型鑑賞の一例として小学生の美術館授業の映像を視聴しました。映像の中では子どもたちが作品の前で自分が作品を見て感じたことをそれぞれの言葉で表現していました。「日本人はなかなか思ったことが言えないので、対話型鑑賞は成り立たないのでは?」と言われることもあるそうですが、発言しやすい環境と自分の意見を聞いてもらえるという安心感があれば、誰でも意見を共有しあえる、という場面がそこにはありました。

それをことラー同士でも体感してもらいます。
まずは、岡本太郎の作品をカードにしたもので鑑賞を行いました。
作品の中でどんなことが起きているのか、自分はどんなふうに考えているのかを言葉にしながら、お互いの話を聞き合います。

見て感じたことを素直に言葉にすることで、どのグループも活発に意見が飛び交う状況。どんどん白熱していきました。
そして、いよいよ岡本太郎作品を実際に鑑賞します。
この日の展示は常設展「前衛たちの足跡岡本太郎とその時代」、企画展「川崎市市制100周年記念展「生命の交歓 岡本太郎の食」」が行われていました。
先ほどグループで話し合った作品の実物を今度はひとりでじっくり鑑賞します。自分自身と対話しながら、改めて作品をどう見て、どう感じるかということを作品への眼差しを深めていきます。

作品に向けるまなざしも真剣そのもの。

それぞれ作品をみて湧き出てきたものや気になった点などをつぶやきシートに書き込んでいきます。

鑑賞の時間を終え、グループで再集結。
みんなで画像を見たときに感じたことや話し合った時と直接作品と対峙し、自分自身と語り合った時の変化や気になった点を共有しあいます。


岡本太郎の作品と生田緑地の空気にパワーをもらったことラー。
今後の活動にどんどん弾みがついている空気があふれています。

(こと!こと?かわさき プロジェクトマネージャー 財田翔悟)


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