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窓を開けて

窓を開ける時の理由は幾つがあって、素直に部屋の温度を調節することもあれば、外の世界の冷気性や温もりを、精神的な問題で取り込みたくなることもあり、又は、野外の生のにおいを欲したりもする。
今朝は、世界の音を求めていた。しばらくすれば雨が降りそうな曇天はひんやりした空気を同時に部屋に満たす。この天気では鳥たちの活動も控え気味らしく、そよぐ草木は穏やかな様子。丁寧に拾える小鳥の鳴き声の区別がつかないことが惜しい。
もう少しすれば、今日を暮らす人々の車と土木作業に駆り出されたあのオレンジ色の立派な車体の音も聞こえてくるだろう。

気づけば今や昼時前で、窓はとうに閉めてしまった。雨はいつ降ったのだろう、物干し竿は雨粒を垂らしている。ガラス越しには小鳥のさえずりしか届かず、一方で背後からは洗濯機の働きっぷりが聞こえてくる。いつの間にやら、今日も暮らしに足をつけていたらしい。
この休日、わたしは世界を何度が行き来するだろう。

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