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『光る君へ』第二話 執筆に心を委ねる

はじめに~あらすじ~

裳着の式を迎え無事に大人の仲間入りを果たしたまひろは、六年経った今でも母の死を引きずっている。理不尽に命を奪われた母への想いと悲しみ、それを隠し通そうとした父親への不信感はまひろに今も鮮明に傷を残し続けている。そんな中、まひろは父の目を盗んで代筆の仕事をしていた。恋をする人たちの代わりに相手に詠んだ歌を授ける。まひろはひと時別の誰かになって歌を詠むことに束の間の幸せを感じていた。ある日、久しぶりに三郎と再会するまひろ。三郎は元服し道長となっていたが、二人の間に流れる時間は変わっていない。代筆の仕事をしているというまひろのもとへ巡り合えるまで何度も通い、必ずもう一度会う約束をする道長だった。

話は第二話に入り、主人公たちも大人になったことで、平安の政の事情が垣間見えるようになってきた。その中に描かれる愛情や憎しみ、恨み。自分の一族がのし上がるためなら、手段を選ばない闇も見えてきた。帝と妃、親と子、男と女――。これから、主人公まひろやその相手役となる藤原道長が巻き込まれていく世界の不穏さを感じられる描写が数多くあった。

まひろと道長

その中でもまひろと三郎の時間は穏やかに流れていく。子どものときの穢れを知らない二人のように穏やかで優しく、温かな時間が溢れている。その時間だけは、二人の純粋な恋の行方を見守ることができる。だからこそ、この二人が今後平安の政の中に巻き込まれることへの不安もよぎる。純粋でまっすぐで穏やかで。だからこそ、このままゆっくりと幸せになってほしいと願うのに、それはかなわないであろう時代。これからの展開が益々楽しみになる第二話だった。

少しずつ見える『源氏物語』の気配

第二話において代筆の仕事をするまひろの場面には源氏物語の世界観を感じられる描写がいくつかあった。今後、千年読み継がれる大作を作り上げることを思わせ、まだ幼く若いまひろと紫式部を重ね合わせてしまうそんな瞬間となった。これからまひろが何を見て、何を考え、何を思い、やがて紫式部として執筆に至ったのか。そのすべてを予期させる。非常に興味深い場面だった。

書くということで忘れる自分自身

代筆の仕事をするまひろを激しく叱責し、咎めた父藤原為時。しかし、まひろは母を失った傷やそこに芽生えたすべての想いに耐え切れなくなるとき、他の誰かになって歌を詠む。そうすることによって、自分自身から離れ、そして自分を生きていく。執筆とは、そういうものかもしれない、と思う印象的な場面だった。人はずっと自分の心を抱えたままでは生きていけない。それでも自分を生きていかなければいけない。そういうとき、ほんの少し自分を逃がす場所に物語はあるのかもしれない。書くも読むもすべて、自分ではない誰かにひと時なって、自分の心を癒す。そんな経験を少しずつしているまひろが源氏物語を書くとき、その本来の心はどのようなものであったのか。不安定な平安の世でまひろが体験することを感じとりながら、進んでいくであろう物語の先が気になる重要な場面となった。

最後に

一話から二話にかけて時が流れた。それでもまひろが一人の女性として生きていることは変わりない。子どものころの経験や若い時の経験。視聴者が見守るそれらは、紫式部としてのまひろにどのように関わってくるのか。どんどん興味深くなってくる物語の展開が楽しみだ。

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