「エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン-WAR PAINT-」何かを目指して、闘う人たち

同時代に生きた女性実業家の二人に焦点を当て、「美」をテーマにした舞台。化粧品を扱い女性たちの美を追求する二人は互いをライバル視しながら、自身の商品の開発に努める。

背景やセットの色鮮やかさに加え、少しコミカルな要素もあるこの舞台は話もポップに展開していく。しかし、中央に立つ二人、明日海りおさん演じるエリザベス・アーデンと戸田恵子さん演じるヘレナ・ルビンスタインは、どこか孤独や葛藤を抱えている。

女性の美のために妥協することなく商品を作る二人が、直面する障壁はさまざまだ。世間が持つ女性のイメージ、自分の身分、上司や妻といった自分の役割、さらに戦争という時代背景にも翻弄される。解決されることもなく次から次へと目の前に出現する「闘うべき相手」を前に、二人は孤独や虚しさを感じ、それは二人が成功した後も続く。

タイトル通り物語の中心で描かれるのは、エリザベス・アーデンとヘレナ・ルビンスタインの争いである。しかし、二人がさまざまな障壁を前にいつでも自分を奮い立たせることができたのは、目に見えてはっきりとしたライバルがいたからかもしれない。だからこそ、最後の場面で二人が対峙したときには、いがみ合いもするが、身を寄せて心通わせるような二人だけの時間を感じることができた。それでも最後までライバルという立場を貫く姿は、まだ闘い続ける二人を思わせる。

舞台が壮大過ぎないからこそ、真ん中に立つ二人の繊細な心情を感じられる。コミカルな中にある寂しさや孤独。何かを成し遂げるためには個人の幸せを犠牲にするほかなかった二人の後悔。明るい舞台とは裏腹に、物語の中にはネガティブな要素が散りばめられていて、何かを成し遂げようとする人はみんな闘っているのかもしれないと思わせてくれる作品だった。

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