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短編小説

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記事一覧

短編小説 「韻-aholic」

俺はかつてラッパーだった。 毎週末ステージに上がって、マイクを握り、クラウドを沸かせてい…

ことぶき寿
1か月前
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短編小説 「たまたまつんだくどく」

死んだ。 そして地獄に堕ちた。 先月のことだ。 ここへ来てからというもの、俺は毎日毎日虎柄…

ことぶき寿
5か月前
12

短編小説 「疑念の根拠」

ABCリサーチ社は、テレビ番組の視聴率調査をはじめとするメディアリサーチや、マーケティング…

ことぶき寿
7か月前
13

短編小説 「ふー・のうず」

先日、芥川賞を受賞した作家が受賞会見で「全体の5%ぐらいは生成AIの文章をそのまま使ってい…

ことぶき寿
8か月前
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短編小説 「幾多の偶然」

頓珍館大学軽音楽部の部員4名がバンドを結成した。 彼らはこれからバンド名を決めるためにミ…

ことぶき寿
11か月前
12

短編小説 「目標はオール3」

こまった。 ほんまにこまった。 今日しゅうぎょう式やってん。 ほんでつうち表もろてんけどな…

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短編小説 「ジパングの或る村で」

鈴木村長が告訴されたのは、ちょうど半年前のことだった。 原告は50歳の女性村議。 彼女は村長から強引に性的関係を持たされたと主張していた。 万年野党たるみんみん党の党首や決して一流とは言えない某大学の教授を始めとする複数の著名人が彼女への支援を表明したこともあり、メディアは大々的にこの騒動を報じた。 また早々に結成された後援会がSNSを使って英語で情報を発信した為、国外のメディアや活動団体からも注目を集め、女性村議は一躍時の人となった。 しかし彼女の話は終始不得要領であった

短編小説 「蝶たち。空気のような...」

「むかし乗ってたんだよ、セルシオ。初代の」 おっさんは唐突にそう言った。 きっと目の前を…

11

短編小説 「刹那の太陽」

夜8時、バーでグラスを傾けていた。 客は俺とスーツ姿の男だけで、カウンター席の両端に分か…

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短編小説 「僕の愛した街」

心から街を愛していた。 きっと、誰よりも深く、誰よりもまっすぐに。 街はいまどうなっている…

16

短編小説 「てまえどり」

時計の針が12時を差した。 克哉は待ってましたとばかりにノートパソコンのディスプレイを手…

9

短編小説 「案件仕事」

半年前にブログにUPした短編小説が、先月地方の文芸誌に転載された。 そしてそれをきっかけに…

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短編小説 「噂」

この街に引っ越して来て半年が経った。 生まれてこのかたずっと東京で暮らして来たので、地方…

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短編小説 「当たるも八卦」

午後7時、私は整体院の待合室でソファに身を沈めていた。 ソファは張地が本革で座面の幅が広く、触り心地も座り心地も抜群だ。 きっと高級なものなんだろう。 室内にはラベンダーの香りが満ちていて、天井に埋め込まれたスピーカーから穏やかな環境音楽が流れている。 私は職場から一旦帰宅して緩めのスウェットに着替えており、この上なく快適な状況だった。 にもかかわらず、ひどく落ち込んでいた。 なぜなら散々な一日を過ごしたからだ。 まず朝寝坊をして会社に遅刻した。 30にもなって他人のせいに