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遠い目をした利用者さん

ある利用者さん、病院に寄ってからデイサービスに来るって連絡があって。

そういえば最近ね、心なしか元気がないように見えたのよ。
夏場になってさ、急に気温が上がったじゃない。37度はちょっと危険な暑さよね。熱中症や脱水症状が怖いよね。

できればね、外へ散歩に出かけたいのよ。デイサービスに来てない時は家の中で横になってるだけらしいからさ。週三日のデイサービスでしっかり足腰動かして日中の活動を増やして、生活習慣を整えていきたいんだよね。
心肺機能も最近弱くなってきてるような気がするんだよ。十数メートル歩いただけで息切れしてるから。
いやいや、数十(すうじゅう)メートルじゃなくて、十数(じゅうすう)メートルね。全然ちがうから。

昼にご家族の送迎でデイサービスに到着したんだけど、

まだ昼食の時間帯だったからちょうどよかったのよ。まだお昼ご飯食べてないってうからさ、ご飯とお味噌汁、お魚を温めて。食べてもらったんだけど。
半分以上残してるのね。お魚の煮付けは味見した程度で、ご飯もちょろっと箸つけて。味噌汁も一飲み。

もうさ、心配だよ。
夏場だから食欲がわかないってのも多少理解はできるけど、食事量が減るとね、体重が減ってね。
かといって、食べたくないって言ってるのに無理に食べさせるわけにもいかないし。エンシュアに逆戻りだけは避けたいじゃん。まぁ、今日は様子見かな。

下善するときにさ、表情を観察したんだけどね。

なんかね、眼差しが遠いわけよ。顔はぼくの方を向いているんだけど、ぼくの後方、数メートル先を見ているような。目線が全く合わないわけ。
そんでね、瞳が優しいというか悟ってるというか。妙にキリッとしてて。シャープなのよ。研ぎ澄まされてるのよ。

なんかさ、逆にそれが怖くて。

もしかしたら今日の受診で、落ち込むような宣告があったのかな。
おそるおそるね、聞いてみたのね。

「受診、どうだったんですか?」

「・・・」

「ご家族と一緒に病院行かれたって話でしたけど、どうでしたか?」


「ふゃいふあきっれきれ、ひあはぁきゃさい」

「???」

「ひえふぁつふりなふぉしふぉる」

「あれ?どうしたんですか?今日?話し方?」

「ひーれーばーふぉー、つーくーひーはーおしてんの」

「ひーれーばー?」

「フォウ、ひーれーばー!」

「入れ歯?!」

「フォウ、ひーれーばー!」

入れ歯が合わなくなったから、作り直すみたい。

わからんんんかったぁー!

入れ歯してない顔をあんまり見たことないからさぁ。

そうか!
歯がないから食べたくなかったのか。
顔をみられるのが恥ずかしいから目線を合わそうとしなかったのか。

思い込みって、
判断を間違えるよね。

入れ歯ってね、
してないと顔マジで変わるから。

先に言っておいてくれ。
焦るから。

とはいえ、よかったよかった。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。