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そう見ればそう見える

1日10時間以上パソコンの前に座り、ひたすらソースコードを打ち込んでいく。

すぐ隣に仲間は座っているが、1日を通して喋るのはひと言ふた言。「おはようございます」「おつかれさま」くらいなもの。
そいつもぼくと同じようにパソコンに繋がった大型ディスプレイを眺めては、ノートパソコンに備え付けてあるディズプレイに視線を行ったり来たりさせている。早送りで見たらヘッドバンキングに見えるのだろうか。

仕事が終わったあとは首の後ろに漬物石でも置かれたのか、ズンと重い。椅子に座りっぱなしの作業。お尻と太ももの裏は、日陰にある苔の生えた大きな石を退けたような湿り気。下半身に血が通っていないのがわかる。ふくらはぎが膨張している。

納期が近くなれば、日付が変わる頃まで会社に残ることも珍しくない。バグあれば夜中だって休日だって対応する。終電があろうがノートパソコンは持ち帰れるから。インターネットは便利だ。いつでも鎖で人間を繋いでおけるから。

「今日からぼくもWebクリエイターだ」なんて、横文字の仕事に悦に浸っていた時期が懐かしい。
今ではディレクターがクラアントから送られてきた修正リストを転送してくるたびに、眉間に皺が寄りため息もでる。
無意味な修正を止めてくるのがディレクターの仕事だろう。たとえ追加で工数を計上できたとしても、この数ピクセルのズレとか余白だどうだとか。今更絞り込み検索をつけたいだの、もう、そんなことを話している段階ではないのだ。コーディングはホームページ公開のひとつ前の段階で、要件定義から見直すような修正はできないのだ。
加えてデザイナーからの指摘。余白が違うだのアニメーションが違うだの。だからコーディングできないデザイナーは勘弁して欲しい。仕事を増やすのはいつもデザイナーだ。コーダーに押し付けてあとは知らんふりを決め込むからデザイナーとコーダーは仲良くなれない。

修正リストを閉じた。おかげでエクセルが嫌いになった。

金曜日だけが救いだ。金曜日の夜だけが楽しみだ。カバンは無駄に重いmacbook。土日は自宅で作業だ。追いつかなかった仕事をする。
けれど、金曜の夜だけはネットサーフィンするためのタイピングができなくなるくらいまで飲む。月曜が始まった時から決めていることだ。

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