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介護劇場

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高齢者が主人公。振り回されるぼく。介護・介護現場ので起こる出来事をおかしく描写して感じたことを綴っています。
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2023年7月の記事一覧

笑顔と笑い声を届けよう

認知症高齢者の方とのコミュニケーションは、なかなか一筋縄ではいかない。 言葉による意思の…

転んでも、缶ビールを買いに行く

自分が勤めているデイサービス利用者さんを近所でよく見かける。 その人はトボトボとした歩き…

連続公演 「トイレのボタン」

「お手洗い終わったら、そこのオレンジのボタンを押して教えてくださいね」と言って、僕は個室…

むくみとの対決

「だいこん足」とはよく言ったもので、まぁ、よく育った大根なのだ。 高齢者の足、とくにふく…

もぬけの殻のベット

え?!Kさん!どこにいった! いつもの部屋にKさんがいない。そこにベットはあるものの、シー…

腹に5つの傷を持つ男

「おなか見てみろ。へそが5つあるだろ」 背中を流していると、その人は得意げに話しかけてきた…

床にへたり込みーの

床にあぐらをかき、へたり込んだ。 「しんどい。疲れた。」 その人に話を聞くと、かすれ声でそう答えた。歌い込んだ歌手のようだ。 へたり込んだ横には、自前の杖が横たわっている。足腰を支えるための杖も一緒に休憩している。 そこに長時間居座ってもらうと困る。そこは他の利用者さんの通り道なのだ。勝手に関所を作らないでくれ。 今に始まったことじゃない。その人は手持ちぶたさになると、施設内をあてもなくさすらい、疲れたところでへたり込む。 そして、へたり込んだあとは、床に寝転がって

「どけクソババァ」というアイデンティティー

「うるせぇコノヤロー!バカヤロー!」 玄関の前に到着した車の助手席から窓越しに聞こえてく…

体重計に乗らない足

足を上げる。 足を下ろす。 下ろした足を、体重計に乗せてほしい。 もう一度「足を上げて、そ…

朝イチのテンション

介護現場では、朝イチのテンションがとても大事なのである。 介護職員のテンションではなく、…

僕は、股間が便まみれの男の前に座る男だ。

個室に男三人。 便座に座っている男は、股間が自分の便でまみれている。 その男の目の前に座…

ソファーをぶん投げようとする、Mさん。

ソファーをぶん投げようとする。 入口から出て行こうとするので、一緒に部屋に戻るために手を…

気持ちが体を動かしている。

「わたし今日は何もできないからね」 「ベット空いてないの?横になりたいんだけど。しんどい…

カタギじゃないのよアナタは〜

お風呂場では、普段聞けない話が聞けることがある。 その人は僕にとって父親にあたる世代の方。 謹んでお背中を流させてもらう。 風呂場では本人と介助者だけ。ふたりっきりの空間は否が応でも人間同士の距離を近づける。まわりに人がいない場所では人は饒舌になるのだ。 「おりゃ昔、極道やっとった。〇〇と言えば、誰もが知ってる。俺に喧嘩売ってくる奴なんて誰もおらんかった」 「ボクシングでプロになる直前まで行った。でも、素行の悪さが目立ってプロになれんかった」 「ハタチの時、20上の女と