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映画“PERFECT DAYS”鑑賞で改めて感じた、日々を丁寧に生きる大切さ。

役所広司さんがカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞され、気になっていた映画“PERFECT DAYS”を鑑賞しました。

淡々とトイレ掃除をする日々を描いた作品と知ってから、とても観たいと思っていました。

紆余曲折のドラマや感動的な演出なしに、当人の心の動きをどう表現するのかなぁ、と気になっていたからです。

どうだろうか、と思っていたら、まさに期待通りで、自分の約10年間のマンションコンシェルジュ時代の日々とシンクロし、途中で涙が出ました。

主人公が掃除中に、慌てて入ってくる利用者を気遣って、黙ってささっとトイレを出て、トイレが空くのを待ちながら、陽の影に優しいまなざしを向けたり、ホームレスと思しき老人が、奇妙なダンスを踊るのを、少し微笑みながら見つめたり、トイレで泣く子を保護したのに、探していた母親から怪訝な顔をされ疎まれても、穏やかさを絶やさない姿を見て、一瞬一瞬を味わいながら毎日を過ごすって、こういうことなんだよね、と自分の日々を懐かしく思いました。

電球交換を終え、脚立と長い電球を持って事務所に戻る時、ガラス窓から見える景色を見て、ここからの眺め、好きなんだよなぁ、と思った瞬間。

出勤ラッシュ時にマンション玄関外まで出て、必死にタクシーを掴まえて、入居者さんを送った後のホッとした気持ち。

慣れない絵描き歌を披露した時に、入居者さんのお子さんが見せたキラキラの瞳と興味・興奮スイッチ。

高齢の入居者さんが「今日は遺影を撮ってきたのよ」と仰った時に、生老病死を含めて人の一生を真っすぐ受け止めよう、と決めた思い出。

落ち葉のシーズンには、掃きながら今年もこの物件でいろいろ学ばせていただいたなぁ、としみじみ思った毎年の秋。

全てが貴重で愛しい日々だったなぁと。

自分の強みが生きて達成感があり、人の喜ぶ姿が自分の喜びとなる仕事、かつ相性の良い環境で、生まれて初めて自分の着実な成長を実感できた職場でした。

もっと良くしたい、もっと成長したい、と純粋に心から思えたおかげで、自分の心の動きや感情に敏感になり、自分自身を良く理解するようになりました。

良い仕事をするには同僚との関係が大きいことに気づき、人に対してもじっくり観察を行うようになり、協力して目標達成する方法を探るようにもなりました。

やらなければいけないことがたくさんあり、そのやらなければならないことのために覚えることがまたたくさんあって、とにかく忙しい現代。

そしてそのストレスからの逃避や認められたいという気持ち、人と繋がっていたい、という本来の欲求も相まってSNS漬けになったりして、さらに忙しくなる。

生活密着の仕事を通して、何が大切なのか考える暇もないほど追い立てられるように日々を生きていては、本質を見失うな、とより強く実感するようになりました。

“丁寧に生きること”を改めて考えさせられた、深い映画でした。

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