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白を選べなかった

2年半前に引っ越しをした今の住まいには、白いカーペットを敷いている。小さな子どもがいる家で白いカーペットは、と躊躇している私に、心配の種の張本人からは

『汚れたら洗ったらいいやん』


幼少のころ、いや、社会人になっても私は白い服を買うことができなかった。

『白は汚れるから』『白は染みがつきやすい』『白は透けて見えるから』

教え込まれた、叩き込まれた、というよりは、念仏のように耳に沁みついていたからだろうか、やっぱり汚れた服は着たくなかったのか、何だろう。

確かに、このブティックにも真っ白な服は殆ど置いていない気がする。お客様からも敬遠されるから、という事らしいが。

人通りも少なく、新規のお客様なんて殆ど入ってこないブティックが今もまだ営業できているのは、お得意様に可愛がっていただいているからとしか言いようがない。そして、母も、そんなお得様お一人一人の顔を思い浮かべながら仕入れをする。

小さい商店街だと、ご近所様と同じお洋服がバッティングしてはいけないらしく、仕入れも1点ものばかり。ちょっとした『なかなか欲しい物が手に入りにくいセレクトショップ』ばりだ。

数年前に白いパンツを試着してみた時、長い人生で白をまとった事が無かった私は、鏡に映る姿が何とも滑稽で・・博多どんたくに真っ白な制服で出演している【自衛隊の吹奏楽部】にしか見えなかった。でも、白を着る自分を演出してみたくなって、色違いの濃紺のパンツをバックアップ用に二点買いした。


白を選べなかったのか、白を選ばなかったのか、私は今では知っている。私は白を選ばなかったんだと。

異世代のちょっとした一言や後押しで、今まで気づかなかった世界が広がることがあったりする。今まで踏み出せなかった、踏み出さなかった1歩を踏み出せることも。

そんな母、そういえば、先日一緒に行った居酒屋で、白いTシャツを着ていたっけな。

誰もが気軽に足を運べる店にしていきます、応援ありがとうございます♪Big hug and smile to you♪