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僕の理想郷

不思議な話を聞いた。
息を吸うのも、好きな時間に食事をするのも、歩くのだって自由な国があるらしい。
一度は耳を疑った。
ここでやれば一発で監獄行きだ。
そんな国があるはずもない。
我々の国は割と裕福な方だ。
監視こそあるもののほとんどの人間は180歳まで生きていられる。
一切の無駄を省き、効率化を理想としたわが国では他国と比べ寿命を著しく延ばすことに成功した。
このことが我が国の世界的地位を担保していることは言うまでもない。
けれど、ふと疑問に思うことがある。
私は一体なんのために長生きをしているのか。
この国の常識は本当に正しいのか。
長生きをしていればそれなりに楽しいことはある。
時間は人類が生み出した画期的な道具だ。
この国ではその概念自体が崇拝されることも少なくない。
しかし、私には人生で一度でいいからその時間を贅沢に使ってみたいという欲望がある。
誰にも理解されたことがない。
口にするといつも冷ややかな視線を向けられる。
何も予定がない一日を過ごしてみたい。
それを可能にする国があるというのだ。
何とうらやましいことだろう。
まあ、結局は誰かの作り話なのだろうが。
そんな国が存在するわけがない。
他国との競争に勝てるわけがない。
そう結論付けて暗闇に目をつぶった。

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