難聴者のシゴトのロールモデルNo.1「看護師」
いろいろな仕事をしている難聴者にインタビューをさせてもらい、どんなフォローと工夫があればその仕事ができるのかということを知ってもらう企画
「難聴者のシゴトのロールモデル」
今回は、「看護師」です!
1.自己紹介
特定医療法人南山会 峡西病院 精神科 病棟看護師
高野 恵利那さん
聴力:両耳50dB程度
補聴時のデシベルはわからないけど、図書館などの小さな声で話さないといけない場所でのひそひそ話は、裸耳(補聴器をつけない状態)では全くわからないけど、補聴器をつけたらわかる。
仕事や勉強の時は補聴器をつけているけど、カフェなど周りがうるさい場所ではかえって聞こえにくくなるため、補聴器はつけていない。
高校は普通科
大学は、看護大学
看護師5年目
3年間GCU(治療を受けて状態が回復した赤ちゃんが、ケアを受ける新生児回復室)で勤務後、現在は精神科で2年目。
2.どんな仕事をしてる?
急性期病棟(症状が急に現れる時期、病気になり始めの時期に24時間体制で対応する病院・病棟)で勤務。
病棟看護師で、日勤と夜勤、早番、遅番勤務あり。
・健康管理(血圧や体温などの日々のバイタルチェック)
・コミュニケーションによるメンタルケア
・メンタル面の評価
・セルフケアのサポート
・内服薬の管理と与薬
・退院支援
など
コミュニケーションのメンタルケアでは、例えば、うつ病になった人であれば、その状態を薬でコントロールしつつ、ちゃんとその人の気持ちを傾聴して、どうやったら前に進めるか、退院に向かっていけるか、看護計画を立てて、定期的にメンタル面の計画評価をする。
順調に退院に向かって進んでるねとか、ちょっとここが足りないねとか、この時期になったら自分で薬を管理できるように退院支援をしていこうとか、そういう感じでやっている。
錯乱状態になった患者さんは、自分でお風呂に入ったりとか、清潔ケアというところができないので、セルフケアのサポートとして、お風呂に入るサポートをしたりしている。
看護師は、患者さんにとって一番身近な存在なので、話を聴くのがメイン。
患者さんの、「こういうところが不安」「ここがわからないから教えてほしい」「自分が、何をしたいのか、どういう状態なのかよくわからない。どうすればいいの?」というところを、話を聴いたり、必要なアドバイスをしたりしている。
3.会社への応募、面接の話
普通に、全部さらけ出して伝えました。
普段の日常生活で、どういう場面が聞こえにくいのかというところから推測して、仕事の時にこういう場面で聞こえにくいんじゃないかということを予測して、普段から自分がとっている対策方法を伝えたり、ここはどう頑張ってもできないので協力をお願いしたいなど、結構細かく説明した。
でも、それだけだと、難聴者を採用するのは面倒くさいと思われてしまったら働けなくなってしまうので、
聞こえにくさというのは、今伝えたようにあるけど、聞こえない経験によって、共感力がついたり、看護師として人に寄り添うという部分で、他の人よりも、視点を多角的に考えられる力はついているなど、メリットも伝えた。
最初、困る場面を伝えたときは、「ああ…そうなんですね…」と、大丈夫かな?この子?という雰囲気だったけど、それに対して自分がどんなふうに対策しているかを伝えると、「なるほど、それだったら大丈夫そうですね」というふうに変わって、その上に、自分の難聴によって身に付いた能力を伝えると、「それはすごいですね!」と好感触に変わっていったように感じました。
もちろん、書いた。
志望動機に、「難聴によるこういう経験から、人の支援ができるようになりたいと思って看護師を目指し、志望しました。これまでの経験で培った、人に寄り添うことができる力を活かして御社に貢献したい」といった感じで、採用したくなる人物像をイメージして書いた。
4.職場での聞こえのフォローについて
・聞き返した時に、繰り返してくれる。
・何回も聞き返してしまうときもあるけど、嫌な顔せずに繰り返し教えてくれる。
・電話で、どうしても聞き取れない時は、「すいません、どうしても聞き取れないんで代わってください」とお願いすれば代わってくれる。
・人によっては、自分と話すときは、少し声を大きめに話してくれる人もいる。
・ゆっくり話してくれたり、マスクを取って話してくれる人もいる。
・聞きなれない言葉は何度聞き返してもわからないが、そういう時は、単語を紙に書いてくれたりする。
・遠くから呼ばれたときは気づかないので、近くにいる人が「呼ばれてるよ」と教えてくれる。
聞こえる人は、聞こえにくい人のことは、こちらが言わない限りは、どう頑張ってもわからないと思うので、伝えなければ、絶対配慮はしてもらえないと思っている。
だから、具体的にわかるように、こういう場面が聞き取りにくいですとか、その場面に遭遇した時に、「今、私聞こえてません」とかをしっかり伝えている。
1回伝えたら伝わるっていうものでもないと思うので、もう何回も何回も、その場面に遭遇するたびに、「すいません、ちょっと聞こえなくて…もう1回繰り返してください」とか、毎回毎回、辛抱強く、ずーっと言い続けている。
普段から、そういうことをペラペラ話していれば、相手も、当たり前だっていう感じで受け止めてくれる。
普段から、自分の聞こえにくさを、深刻に話すんじゃなくて、雑談のついでなどで、「今日ちょっとこれが聞こえなくて…」など、さりげなく、サーって伝えてます。
私が、「聞こえにくいんで電話本当は取りたくない」と言ったところで、リーダー業務をするには電話は必須で、どうしょうもない。
だから、もう取るしかない。
そこは腹くくって、音量MAXにして、必ず毎回、電話で最初に、「すいません、難聴なのでゆっくりはっきりお願いします」って言うんですよね。
同じ人であっても、毎回、絶対言うんですよね。
「難聴なんでもう1回繰り返してください」
「難聴なんで聞こえにくいんですよ。すいませんもう少しゆっくり…」
みたいなことを、電話のたびに毎回言ってます。
それでも聞き取れない時はあるんで、その時は、「聞こえなかったんで、代わってもらいます」って言って代わってもらっています。
聞き取れない人に電話を任せても仕事にならないので、できるかできないかではなくて、無理なものは無理なので、その時は、やれと言われても、絶対やりませんって言い切った方がいいと思います。
私は、これ以上聞こえなくなったら絶対無理なんで、もしそうなったら、リーダー業務はまず無理なので、その代わり、自分のできることをやります。
周りの、自分でもできる業務を進んでやるしかないかなって思います。
もし、信じてもらえなかったら、実際に職場の人と電話越しに会話して、会話が成り立つのかっていうところをアピールすればいいかなと思います。
こんなに通じないのに、電話がとれるわけがないだろっていうアピールですね。
最初は、私が聞こえにくいっていうのがどういう状態なのかっていうのが、多分周りの人もよくわかっていなかったと思います。
だけど、私が言い続けたことで、呼びかけとか、聞こえてなかったときに、あれ?もしかして聞こえてないかも?って思ってくれるようになりました。
だから、言い続けるって、きついかもしれないんですけど、
自分と向き合わなきゃいけないので、大変かもしれないですけど、
でも、言い続けることで結局、自分が将来的に、そこの職場環境で働きやすくなるので、長い目で見て、自分にとってプラスになる方法は何かって考えたときに、やっぱり伝えるってことが一番大事かなって、私は思います。
聞こえにくい声質の人の話を聞く時は、毎回必ず移動しています。
カンファレンス(会議)の時間の中で、一番聞こえにくい人のところに、最初陣取っといて、距離が遠い人が発言した時、「ヤバ!聞こえない」と思ったらそのままスッて行って、その人の横に行って、と、やっています。
だからみんなよけてくれます。あ、来たって(笑)
ああ、どうぞって(笑)
聞き取りにくい状況とか、環境とか、苦手な声質の人とかは、最初から、自分から積極的に発信して伝えます。
「すいません、どうしても何々さんの言葉がいつもうまく聞き取れないんですよね。ごめんなさい。聞き返すこと多分多いと思います」
って、伝えちゃってますね。
そのまま、回りくどく言うよりも、ストレートに言った方が伝わるので、そのまま普通に、伝えていたりとかしています。
それと、指示された内容が、合っているのかっていう確認作業は、必ずしますね。
自分が、「あれ?これ理解できてないかも」とか、「あれ?何かこう、相手と自分ですれ違ってる気がする」とかそういう時は、絶対「こういうことですよね?」って確認して、違ったら、ああ違ったんだっていう感じでやっています。
また、一緒に働く人だけじゃなく、患者さんやご家族にも、誤解がないように毎回、最初の自己紹介で、「私、両耳聞こえが悪くて補聴器をつけてるんですけど、どうしてもやっぱり聞き取りにくくて聞き返してしまったり、気づかないで呼ばれたのにスルーしてしまうことがありますが、悪意はないので、ご了承お願いします」っていう感じで、必ず伝えています。
あとは、聞こえなかったときは、本人が深刻になるほど周りも突っ込みにくくなったり、いじったりもできなくなるので、雰囲気を壊さないように明るく「ちょっと聞き逃しちゃって^^」みたいな「もう1回お願いしてもいいですか^^」って感じで、軽く言いやすいように、意識してお願いしたりしてます。
それと、普段から、聞こえないということはどういう状態なのかっていうのを、周りに理解して想像してもらうきっかけになるように、業務に余裕があるときに、雑談に混ぜて自分の聞こえにくさっていうところと、そこに対する自分の苦手なこととか、こういう環境でやってきたから、自分にはこういう思考の傾向があるとか、過去、こういうところがあってきつかったとか、いろいろ伝えてますね。
集団での雑談は、もちろん聞き取れないんで、例えば、2人で夜勤しているときに、時間に余裕がある瞬間があるんですよ。
その時に、「私、最近ここがちょっと大変で」とか、そこで、話し込んでいます。
昔の私だったら、そういうのを言うだけでも、泣きそうになってしまったりとかもちろんあったんですよね。そういう時期が。
相手の本音とか、聞くのって怖いじゃないですか?
怖いけど、意外と聞いてみたら、普通にサクッと返ってくるんですよね。
答えが。
で、自分が、想像している以上に、相手、そんなに自分のこと深く考えてないなと思って。
自分が、「難聴難聴難聴…」ってなってしまえばしまうほど、聞くのは怖くなるけど、でも、意外と1回勇気出して聞いてみたら、「あれ、なんだ、そんな捉え方だったんだ」みたいな、そういう感じで。
そこは別にどんどん聞いちゃった方が楽だなって思ってそういう行動になりましたね。
えー?!…
自分の中で、グルグルグルグル考えてて、何かもう面倒くさくなっちゃったときですね。
もう、聞いた方が早いじゃん!と思って(笑)
いくら自分が考えたって、別に相手の答えは相手にしかないじゃないですか?
だから、自分が考えたところで、答えは出ないのは当たり前で、だったら、相手の答えを直接聞く方が、何倍も簡単かなっていうふうに思いました。
やっぱり…電話! 電話ですね、電話がもう…
特に病棟のピッチ(PHS)って、スマホみたいに高性能なやつじゃないんですよね。安いやつなので。
スマホの方が音が大きいです。それに音がクリアに聞こえます。
聞き取れないとまずい瞬間の患者さんの言葉って、あったりするんですよ。でも、聞き逃したことに気づいてなかったりすることもあって、「それ言われたっけ?自分?」みたいな。
特に、精神疾患の患者さんと関わるときは、妄想とかも入ってたりして、言った、言わないが、結構あったりするんですよね。そこが難しかったり。
あとご家族からの電話とか、聞くことに意識が行きすぎてしまって、質問ができなかったりするんですよ。
一生懸命、聞く聞くって、脳の感じになってしまって。
文字で見たときは、例えば、何かの質問をしたときに、答えが返ってきて、「え?これどういうこと?」ってなったら聞き返すっていう発想になるんですけど、電話だと、聞き返すより、「良かった!聞き取れた」で終わっちゃうんですよ。
いつも、電話切ってから、「あ!あれ聞けばよかった」「あれ、よくわかんないのに何で確認しなかったんだろう…」ってなりますね。
それが難しいですね。どうしても。「聞こえた」で満足しちゃって。
字で出たら、すごく嬉しいです。それ、一度聞いてみました。
こういうYYProbeっていうものがあって、ログは残ってしまうんですけど、こういうの使えたらすごく有難いんですけどって言ったら、
「それを使うことのメリットって何?それをまとめてきてくれたらいいよ」
って言われたんですよ。
でも、私まとめる時間もなかったんでもういいやと思ってそのままになっちゃいました(笑)
ストレートに言うと、相手の性格によりますね。
あと、余裕があるかどうかですね。その人自身に。
前の病院の時は、一部の人の対応はひどかったんですけど、今の病院の今の病棟は、みんな、菩薩のようにやさしい人ばかりで、そのおかげで、聞き返すときの圧を感じずに聞き返せることができて、すごく有難いですね。
多分、慣れてきた っていうところで言うと、私が、聞こえにくくても何だかんだ電話をとって、何だかんだやっているから、最初は「代わろうか」って言ってくれてたんですけど、あまり言われなくなっています。
私の場合だと、ダメだったら言うからだと思うんですけど、声かけなくても大丈夫かなっていうふうな感じになってたりはしますね。
やっぱり、当事者が、勇気をもって、声を上げていく っていうことをしないと、いつまでも伝わらないままなので、想像するきっかけにならないと、だめだなって いうふうに、私は思いますね。
5.仕事について
やっぱり、自分の難聴による経験というところがいちばん大きいですね。
私が難聴になったのが、幼稚園の年長の時なので、そこから小学校に上がってから、コミュニケーションとは何か?っていう、人生の課題みたいなものが自分の中でできました。
小学校時代、私一人も友達がいなかったんですけど、何でかっていうと、相手が何に興味を持っていて、どういう話し方をすると興味を惹くことができるのかっていうのがわからなかったんです。会話に混ざれないので。
友達がいなくて、小学校4年生の時に、お葬式の参列者を見て、自分、将来、このままだと、誰もお葬式に並んでくれなくなる寂しい大人になるなって思ったんですよね。それだけは嫌で、じゃあ頑張ろうと、中学の時に積極的に話しかけに行ったんですけど、いきなり成功するはずもなく、普通に失敗して、いじめに遭い。
中学校3年生の時以降に、やっと友達ができたと思っても、今度は集団でのコミュニケーションっていう壁にぶつかって、話が半分以上わからないので愛想笑いが多くて。
そうすると、自分は話もわからないまま、ここにいる意味ってあるのかな… 存在があるようでないような感覚?
だから、孤独感とか虚無感っていうところで一杯になってましたね。
生きている、存在していることが、ちょっと辛かった時期もあります。
そういう経験、諸々含め、中学の時に、自分みたいに困ってる人の支援ができるような立場になりたいと思って、一番身近だった看護師というものを目指して、今、夢を叶えて働いています。
どんな意味??
そうですね… 急性期って、たった3ヶ月しか入院できないんですけど、3ヶ月では完璧にできない事も多くて、でも、うまくいった場合は、ちゃんと、今後の生活において、一緒にリスクアセスメントを患者さんとすることができて、笑顔で退院してくれた時は、「ああ、なんか、良かったなあ」って思いますね。やってて良かったなあって。そこでやりがいを感じたり。
あと、患者さんと信頼関係築けると、やっぱり自分にしか話さない本音があったりとかする瞬間があるんですよね。
その時に、「ちゃんと、関係築けてたんだな」って思うと、自分の看護って、話し方って、良かったんだなっていう自信につながったり、そういうところが、自分にとって良い部分かなって思います。
結構、人の話を聞く、引き出すっていうところが、多分、上手な方だと思うんですよね。
割と本音を話してもらいやすいので、雰囲気もあるかもしれないんですけど、「うん うん」っていう感じで聞いて、「こう言ってたなあ、ああ言ってたなあ」とか、「そういえば記録のあそこにあれが書いてあったなあ」っていうところから、この情報知りたいと思ったら、さりげなく質問して情報収集して。それが、聞くと収集するっていうところですね。
人前で話すっていうところは、いろんな人と関わって話すので、慣れたっていう感じですかね。
だから、別に緊張せずに話すことができるかなって思います。
難聴によってきつかった経験とか、その時に感じてた自分の感情っていうのを、患者さんに話してしまうんですよね。全部。
患者さんが、立ち止まっていそうな部分で、求めていそうなところの、自分の過去の辛かった経験をちょっと思い出して、「自分は、こういう時、聞こえにくくて、こうで、ああで、それで、これやったらちょっと良くなって。でも、これ、そこに至るまで結構大変で、こういう感情だったんだよね」って言うと、「ああ、そうそう!」みたいな感じで、患者さんも、話してもらいやすくなって。
やっぱり、自分の情報も、ある程度自己開示しなければ、相手も自己開示してくれないので、自分の話が多すぎてもだめなんですけど、ある程度、ちゃんと一人の人間として、相手も、一人の人間として関わると、本音を引き出しやすくなるかなあって思いますね。
観察力とか…ですかね…やっぱり。
夜勤で出勤したときに、挨拶まわりをするんですよ。
その時に、ふと、「あれ?この人…何かすごい顔色むっちゃ悪くない? 何か体調悪そうだな」と思って、他の人に「今日、あの人様子変じゃないですか?」って言っても、みんな「え?そんなことないよ」みたいな感じだったんですけど、2,3時間後にむっちゃ熱が上がって。
あ、やっぱり何か悪かったんだと思って、その時に、やっぱり、聞こえにくい分、目からの情報っていうのは、多いのかもしれないって思いましたね。
あと、マスクをずっとしてるんですけど、マスクしてても、においでわかったりします。
患者さんの中には、ご高齢の方もいらっしゃって、尿失禁とかあるんですけど、ある時に「うん?」て思って、「何かちょっとにおいますよね」って言って、他の人は気づかなかったけど、「いや絶対においますよ」って調べたら、やっぱりそうだったり、そういうことがありました。
あとはまあ、愛想笑い結構得意ですね(笑)
でも、意外とこれ結構役に立ってて、笑顔って、結構、相手も心がほぐれやすいというか、話しやすい雰囲気になるんですよね。
笑ってなくてムスッとしたままの看護師よりも、ちょっと愛想いい方が、話しかけやすかったりするから、愛想笑い、ある意味身に付いて良かったのかもって思います。
【仕事で使う能力の考察】(岩尾より)
看護師の仕事で使う能力は、
・援助する
・人前で話す
・聞く
・社交的に関わる
・記録する
・分析する
・予測する
・調査する
・収集する
・計画する
・問題解決する
・提案する
中でも特に重要なスキルは、
・援助する
・聞く
・分析する
・提案する
これは、高野さんが思う、高野さんがやっている精神科の病棟看護師の業務についてです。
この4つの重要なスキルは、全て高野さんの持ち味とかぶっています。
そして、「聞く」に関しては、高野さんも、特に強い持ち味です。
患者さんの話を聞くのがメインの仕事と言われていたので、非常に、自分の力を活かしやすい仕事だなと思います。
あと、看護師の仕事で使う能力の「計画する」は、高野さんは苦手なようで、ここは、詳しく聞いていませんが、お話を聞くと、やりがいを持ってうまく仕事を進めているようなので、カバーするための動きもしているのではないかと思います。
非常に、自分の持つ能力をうまく使っているんだろうなと感じました。
難聴による経験というものを武器にして、患者さんと関わることで逆に信頼関係を築きやすくなって、そこって、結構、難聴の自分っていうのを受け入れられないと、難しかったりすると思うんですよね。
だけど、それが、普通にさりげなくできるようになったっていうことは、昔の自分に比べて、今の自分っていうのはすごく前に進んでるんじゃないかっていうふうに思って、褒めてあげたいかなっていうのも成果の一つですね。
あとは、聞き取れなくて、きつくて、嫌になることも一杯あるんですけど、でもやっぱり生きていくにはお金も必要なので、めげずに頑張り続けるっていうところは、まあ、えらいのかなって、思ったりします。
あと、聞こえにくいと、マルチタスクが、どうしても現実的に難しかったりする部分もあります。
例えば、看護師の業務だと、今、記録をしているけど、患者さんから呼ばれて、何々しに行かなきゃいけない。でも、違うところでまた新しい業務が発生してて、優先順位がどんどんコロコロ変わって、その中で、どうタスクをこなすかっていうところなんですけど、そこがやっぱりすごい苦手で。
学生時代は、自分の聞こえる範囲でマイペースに、聞き取れなかったら後で聞き直しに行ったりとかマイペースにやってきたわけなんですよね。
聞こえる範囲も狭いから、周りの音も入ってきにくいので、余計に視野が狭まってしまいやすくなるなと、性格もあるかもしれないですけど、私は思っていて。
仕事をするときも、聞こえる人は、自分の知らない情報を、遠くのところで話しているのが聞こえて、「ああ、そうなんだ!」っていうふうに学びになって。
しかも、そういう情報って、こういう時に、こういうふうにやって、その次にあれをやって、仕事がスムーズにいきやすくなるんだっていうふうな学びもあると思うんですけど、私がそれを学ぼうと思ったら、教えてもらうか、聞きに行くか、質問するか、しかないわけなんですね。
そうすると、やっぱりどうしても、広い視野で、業務の流れを考えるっていうのが、下手くそになってしまって、人よりも時間がかかってしまう。
だから、成長は遅いんですけど、でも、苦手なりに、看護師1年目に比べたら、できるようになってはいるのかなって思うと、他の人よりは劣ってるけど、自分にとっては褒めてあげるべき部分かなって思ってます。
こうやったらもうちょっとうまくできるっていうところも、経験値がないと想像できない部分ってたくさんあります。
私は、前の病院では、3年目の時に、大体、他の方はリーダー業務が始まるんですけど、私だけ始まらなかったので、これは、確かに自分の実力不足だと思って、このままだとまずいかなと思って、毎日、その日のリーダーさんに良い面も悪い面も、全部フィードバックしてもらうっていうのを、毎日続けました。
それを4月から10月くらいまでずーっと続けて。毎日。
たまに嫌になってくるんですけど(笑)
だけど、絶対聞いて、それで、「ああ、なるほどな」って思って、やっていったら、ちょっとずつ成長できるなって思いました。
そうやって興味を持って、自分から情報を取りにいかないと入らないので、そこが大事かなって思いますね。
5年間を通して考えると、本当に最初は、赤ちゃんの病棟で、ご家族は健康だけど赤ちゃんが…っていうところなんですけど、そういうときの、そのご家族の背景だったりとか。
逆に今は精神科の病棟にいて、患者さん自身の育つ環境の背景とか、そういう行動の背景っていうところがそれぞれで、そうするとやっぱり、考え方とか価値観とかも本当に人ぞれぞれで、いろんな人がいるんだなっていうのが、ちょっと面白いなって思いましたね。
自分の常識って、常識じゃないし、通用するとは限らないですし、自分の中の”普通”っていう概念は、本当に普通なのかって言うと、そうじゃないし、そこがちょっと勉強になるというか、視野が広がるというか、面白いなって思いますね。
あとは、自分の持つ価値観とか考え方だけで考えないように意識してるつもりなのに、でもやっぱりいつの間にかとらわれてしまっていることもあって、その時に、「ああ、今の考え方だめだな」って思うと、人と関わる仕事だからこそ、そういう瞬間も多いのも、自分の成長のきっかけじゃないですけど、一歩進んだなみたいな、そういう面白さもありますね。
やっぱり、聞き取れなくて困る場面っていうのは、私も、そうなんですけど、学生時代に、何となく、漠然と不安として抱えていたんですけど、でもその不安って、絶対、必ずやってくるものだなっていうのが、やっぱり思いました。
それを踏まえて、自分が生きやすく、健聴者がたくさんいる社会でやっていくためには、難聴について、自分の聞こえ方の特徴とか特性っていうところを、どう周囲に発信していくかっていうのが、大事だなと、私は感じました。
発信するのも、やっぱり1回2回で伝わると思ってはいけなくて、多分、私は聴覚障害だから、聴覚障害のことを想像することはできるんですけど、でも他の障害の方の気持ちとか背景を想像できないように、やっぱり体験しないと想像するっていうことができないので、丁寧に伝え続ける、繰り返しやっていくっていうことが、自分のためになるなと思います。
そうは言っても、伝えるのってすごい勇気がいることですし、話すだけでも涙が出てしまうっていう時もあると思うんで、そういう場面でも、話せる自分を保つためにも、やっぱり、場数を踏む、練習していくってことは必要だなって思ってます。
でも、それで苦しいとか、そういう気持ちが生じたときは、ため込み過ぎると、結局、自己肯定感を下げるとか、自分を責めるっていうことでしか解消できなくなっていくことも私は体験したので、吐き出せる場を作ったり、吐き出せる人を作ったり、自分のプライベートで、好きなことや趣味とかで気分転換でもるものを作るのが必要だなと思います。
それから、いちばん大事なのかなって思うのは、やっぱり自分の聞こえの問題を解決するのは、最後に動くのは、自分しかいないので、行動を起こすかどうかって決めるのは、やっぱ自分次第で。
でも、そこに仲間がいてくれると、すごい一歩踏み出しやすくなるというか、心強いっていうところもあるので、そういう時に、ぜひみみトモ。ランドで一緒に交流して、お話しできたら嬉しいなって思います。
みみトモ。ランドは、メタバースコミュニティで、聴覚障害者のコミュニティなんですけど、そこに健聴者の方も入ってきていただいて。
理念としては、メタバースからリアルを快適にっていうところで、最後は、手帳がない障害者が安定した収入を得られる仕組みを作るというところを目指して、障害者雇用の概念を変えていけたらいいなあと思っていろいろ取り組んでいます。
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