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「なんちょうなんなん」作成の舞台裏(情熱おじさん編)|Ⅵ「動画制作編」~後編~ 完結

⑧これは盲点!大問題じゃない?!


「“聴”くのが難しいなら、それは絶望だ!」

 さあ、レコーディングも終え、後はアニメーションの作業とのことで、
「これからが僕たちは勝負です」と白川さん。

そんな完成間近のあるとき、とんでもないことに気づいてしまいました・・・

 難聴は、
「聞く」のが難しいわけです。

でも、耳と目と心があれば、「聴く」ことはできる。
「聴く」という字は、実に素晴らしいですね。
日本語の漢字はこういう素晴らしい感性が入ってて僕は好きです。

しかし・・・

あ!!

 動画の字幕、
「聴く」のが難しい
になってる!

 聞くのはできなくてしょうがないけど、「聴く」のが、もしくは「聴いても」難しいなら、それは絶望しか残らないじゃないか!

これはまずい!
これは致命的だ!

どうなんだろう?
これを直すとしたら、かなり時間がかかるのかな?
全くわからない。
でも、結構な箇所あるよ・・・
できるのかな・・・??

それか、何か意図をもって「聴く」にしたのかな?
だとしたら、その意図をまずは聞かなきゃね。
もし、変更できなかったとしても、完成後に突っ込まれたとき、全てに答えられるようにはしなきゃいけない。

一刻の猶予もない!!

すぐに白川さんに確認のメールを出しました。

河原は、「私はどっちでもいいと思いますけど・・・」と言ってましたが、平島先生から指摘のあった「全部」の時のように、蟻の一穴は出さないようにしたい。

妥協はしたくない!
嫌われてもいい!
これは何としてでもクリアしなきゃいけない!

でもできるか??
どうなんだろう?

 白川さんからの返事はない。

そんなことを考えながら、なんちょうなんなんの動画を何度か見ていました。

 そのとき・・・

 「あっ!!」

 「そうか・・・・(笑)」

 「はは(笑) そうやわな(笑)」

 「ははは(笑) そういうことやんか!!」

 

「難聴」
だから、
“聴”くのが“難”しい
ってだけやん(笑)

 じゃあ、大丈夫だ。
これを変えようと思ったら、「難聴」の言葉を「難聞」とかに変えなきゃいけない(笑)

 慌てて白川さんに再メール。
「『難聴』だから、“聴”くのが“難”しいですよね(笑)
問題ありません。お騒がせしました!」

かくして、1人ででっち上げた「難聴の変」は、それ以降触れられることはなく静かに終わりを告げました・・・(笑)

 

⑨最後の最後まで!


「おお~!それはいいですね!!」

 白川さんから、
「子どものコーラスを入れたらもっと良くなるんじゃないかと思うんですけどどうですか?」
と提案されました。

いや本当に実にいいです!!
ぜひお願いします!と二つ返事でお願いしました。

これを言ってくれたのは、いつだったか、正確には覚えてないんですけど、かなり後半の方であることは間違いありません。

いやしかし、最後の最後まで高みを目指してくれますね!!
白川さんたちと仕事をさせてもらって本当に有難いです!

納期は7月1日。

6月後半の定例会でお披露目したいので、途中のものでいいのでデータでもらえませんかと我儘を言わせてもらい、定例会で9割程度の出来のものを披露しました。

この日は、感染症で参加者が少なくなっていた中、少し参加者が増えて嬉しかったです。

子どもたちは、未就学児が中心なので、コメントはもらいづらいですが、じっと動画を見入っているところが印象的でした。

親たちはというと・・・・

アンコールをしてくれてですね!
いや、アンコールは嬉しいですね!
親も、じっと見入っている感じでした。

 親としては、初めはやっぱり見入ってしまいますね。

「優しい気持ちになれた」
といったキーワードがよく出ていたように思いますが、本当にそうですね。
僕も優しい気持ちになれました。

しかし、この日はテレビ局2局に新聞社2社ですよ!
こんな小さな任意団体にこれだけのメディアが集まるなんて、よくよく考えるとめちゃくちゃすごいですよね!

作っただけでじゃなく、それを広める動きまで準備できました。
うちのスゴ腕広報の努力のおかげです。

 

⑩評価の声が続々届く!


「まさに子どもの頃の自分だ」

さあ、もうカウントダウンです。
7/2にHPで公開しようと準備を進めてきました。

動画をあげるならYutubeが一番いいだろうと、チャンネルを事前に作っていました。

実は遡ること12月末の定例会・・・だったと思います。

当時はクラウドファンディングを開始した直後。
読売新聞さんの取材を受けていて、できあがった動画をインターネット上で一般公開する予定だと話したところ、

「じゃあ、そこからさらに情報に触れられるようにしておくといいですよね」

あ~なるほど!!
それは確かにそうだ!

当時は、1分30秒のものを作ろうとしていたわけで、できたとしても、当然必要最小限のもの。
だったら、そこから興味ある人は更に詳しい内容を見てくださいとして観てもらえば、正しい理解が少しずつ拡がるじゃないか!

よし!作ろう!(笑)

どっちにしろYoutubeチャンネルを作るわけなので、そのチャンネル内で、もう少し詳しい知識も伝えられたらいいですよね。

ということで作ったのが、難聴スタンダードというYoutubeチャンネルです。

普通にやってもあまり見てくれないだろうなあと思って、僕が落語を演ってるもので、落語“調”でやってみました。

本当は、しっかりオチまで考えて演りたかったんですけど、なんちょうなんなんを一般公開したときには、ある程度見れるようにしておきたかったので、とにかく急がなきゃ!という感じで、オチなしで、突貫工事でアップしていきました。そこはご容赦を・・・

でも、1本だけオチをつけられたんですよね・・・(笑)
実は、個人的には会心のオチですので(笑)、よかったら探してみてください。

 作ろうと思ったのは12月でしたけど、結局本格的にやりだしたのは、4月ぐらいからだったですかね・・・

筋を書いて、もうNO稽古で撮影です(笑)
落語の師匠には見せられません(汗)

公開までに、13本+自己紹介をあげました。
これは慣れないながらによくやったと思います(笑)

余談ですが、僕は落語で、古今亭志ん朝師匠が本当に大好きで、もちろんあんなふうにはとてもできませんが、出囃子(登場するときの音楽)だけは恐れ多くも志ん朝さんのものを使わせてもらっていました(笑)
ある日、それに気づいてコメントを書いてくれた方がいまして!
知り合いだったんですけど、難聴もわかる、落語もわかるというのは、少し希少になるというのもあるからか、「わかる人がいた!」と、めちゃくちゃ嬉しかったです(笑)

そして、ついに公開!

Youtubeに続々とコメントが入ってきました。
全て好意的なコメントでした。

 特に、当事者の方からのコメントが多く、
「まさに子どもの頃の自分です」
「小学校の時、これがあったら、友達にぜひ見せたかった」
「共感できる」
などなど・・・

よかった・・・と、胸をなでおろしました。

当然、当事者の声を反映させてはいるわけですけど、
難聴は1人1人全く状況が違うので、もしかしたら、何か引っかかる部分があるかもしれないというのはありました。
これは、今もあります。

ただ、それを言っていたら何も作れなくなってしまうので、全ては満たせないだろうけど、なるべく多くの人が共感できるものをと思って作ったので、まずは大成功と、ホッとしたところでした。

 

⑪次の未来へ


「法人を立ち上げよう・・・!」

公開した後は、おかげさまで好意的な応援を多くいただきました!
自分たちで考えた方向性が間違ってなかった、支持されている!と実感でき、力になりました。

 Youtubeでも1件低評価がつきましたけど、また消えて(管理画面には残ってますが)、全てが高評価をいただいています。

もちろん、低評価があってもそれはそれでいいのですが、メールにて1件、明確に反対意見をいただきました。

その反対意見はこうでした。

「難聴の人は、歌でいじめられたり、嫌な思いをした人もいる。その歌を使って難聴の啓発をするのはおかしいと思う。また、歌を作っても、聞こえない人もいる。すると、この歌の話題を出したときに、その人が話題に入れない。歌声を称賛する声もあるが、それも聞けない人がいる。歌さえつけなければすごくいいものだったのに、歌があることで賛同できません」

なるほどですね。
それも一つの考えだと思います。

この意見に対し、僕も思うところはあります。
それはここでは置いておきますが、この動画を作ったスタンスを言うと、
この動画は、聞こえる人に向けて、聞こえない世界のことを知ってもらうために作った動画です。

もちろん、聞こえない人にも共感してもらいたいし、動画を楽しく観てもらいたいという思いもあります。

だから、主人公の動きは、メロディーにそった動きになっていて、リズムが目で見えるようになっています。

これは、何も打合せはしていません。
と言いますか、動画の作り方は全くわかりませんでしたし、そこへの配慮とかは、作っている時には正直思いつきませんでした。

でも、空気さんはそこを考えてくれていました。
感服しますね。

完成後に見ていてこれに気づいて、空気さんに確認したら、「そうですよ」とサラッと言われました(笑)

歌声は確かに聞くことができない人もいるでしょう。
でも、別の部分で楽しめたり共感できるところはあるはずで、最大限、何かしらに共感してもらえるように作ったつもりです。

だから、賛同はできなくても、理解はしてもらえたら有難いですと返事をさせてもらいましたが、「どうしても賛同できません」という答えでした。

賛同できないことはあると思うので、それはいいとして、理解はしてもらいたかったんですけど、そこには触れてなかったのでどうなのかはわかりません。

賛同できなくても、理解できれば、その先があるように思います。
いろんな意見の理論、背景を理解する姿勢を持ちつつ、難聴理解を進めていきたいと思います。

 

さて、応援の言葉とともに、再生回数も順調に伸ばしていきました。
うちみたいな小さな団体が発信している動画が、こんなに見られて有難いなあと思う一方、有名人が発信している動画は、当たり前ですけど、数日で100万回とか普通にいってるんですよね(笑)
もちろん、超有名人ならもっとですよね。

空気さん始め一流のスタッフにつくってもらった動画だけに、うちがもっと有名人だったらなあと、不甲斐なさを感じることはありますが(笑)、うちはうちのペースで進めていければいいかなと思っています。

おかげさまで、2022年1月末現在で、1万1千700回を超えたところです。
1万回って、自分ではすごいな!と思います(笑)

でも、日本にはもっと人がいますからね。
今からもっともっと拡げたいと思います。

この動画が拡がれば、難聴のことを知るきっかけになります。
この知識を得ることは本当に大切なことです。

そして、知識は使えてこそです。

この知識を実際に使えるように。
聞こえない子と聞こえる子とがお互いに楽しくコミュニケーションを取れるように。

これを実現するためのものが、難聴理解講座です。
https://cutt.ly/EOasXQM

多くの小学校や中学、高校、保育園、幼稚園などに行って、知識を使えるようにするための講座をしていきたい。
これができて初めて難聴の理解が進むと考えています。

やるしかないな・・・
法人を立ち上げよう・・・!

これをやるには、どこかに勤めながらはできそうにありません。
だからこそ昨年10月に法人を立上げ、12月に勤め先を辞め、この活動に専念することにしました。(個人事業は若干やってますが)

動画に入れたかったけど入れることができなかったことの一つに、

「聞こえない子と聞こえる子とのコミュニケーションは、お互いに練習が必要です」
というものがあります。

 これは、監修をやっていただいた平島先生が話していた言葉で、まさにそうだなと強く思います。

言われて、聞いて、動画で見て、
これだけで、実際にうまくコミュニケーションが取れるかというと、そんなはずはありません。

ラグビーでもサッカーでもいいです。
このスポーツを全くやったことのない人が、やり方を本で読み、動画を見て、口頭で教えてもらって、さあ!今から試合をしよう!となったとき、完璧なプレーができるかというと・・・

できるはずありませんよね。

必ず失敗します。
失敗して、じゃあもっとこうすればいいかなとか、感覚がわかってくるわけです。

だからお互い練習が必要なんです。

その練習ができるようにしていく講座を、今から多くの小学校、中学校、高校、幼稚園や保育園でやっていきたいと思います。

というわけで、なんちょうなんなんの物語は、まだまだ続きます!
最後までお読みいただき、ありがとうございます!

よかったら、ぜひフォローをお願いします!

【STAFF】
ディレクション&アニメーション:白川東一(KOO-KI
うた:永山マキiima
楽曲:中村優一(株式会社インビジ
デザイン&アニメーション:斎藤悠実、永田健人(有限会社アイメージ
監修:福岡国際医療福祉大学 言語聴覚専攻 平島ユイ子教授
制作コーディネーター:古城戸利香(KOO-KI

制作に関わられたスタッフを始め関係者の方々、今までお話を聞かせていただいた方々、なんちょうなんなんを見ていただいた方々、応援してくれる全ての方に感謝申し上げます。

岩尾至和

 

言葉のかけはしの記事、活動に共感いただきましたら、ぜひ、サポートをお願いします! いただいたサポートは、難聴の啓発活動に使わせていただきます。 難聴の子どもたち、難聴者と企業双方の発展、そして聞こえの共生社会の実現のため、どうぞよろしくお願いします!