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障害者雇用とは、一体何のためにあるのか?

こんにちは。
かけはし岩尾です。

今日、難聴者のための就職支援セミナーを本格始動させました。
このセミナーは、毎回30分フリートークの時間を取っています。
パイロット版含めて2回やっただけですが、この時間、非常にいいですね。
お互いにとっていろんな良さが含まれていると感じました。

前回もそうでしたが、ここでの話では、相手側の問題が強く浮き出ました。

例えば、
「配慮をお願いしても、会社がなかなか聞いてくれない」
「そもそも、求人数がない」

前者は、対処のしようがあると思うでしょうが、実は、ご本人が万策やり尽くしてどうにもならないケースです。
後者は、ご本人の努力ではどうにもできない部分です。

もちろん、「だから、どうするのか?」を考えていかなければいけないですし、可能性は低くても、何らかの手立てをやっていく必要はあるわけです。

ただ、多くの人が、
「何やっても無理だろう」
と、諦めている状況が多いのかなと思います。

今回のセミナー、ご参加者は4人でした。
実は、もう少し来てくれるかなとは思っていましたが思っていた以上に少なかったです。

ただ、SNS上で反応は良かったんです。
でも、お申し込みは少なかった。

おそらく、課題の多くは、
「会社が配慮してくれない」
「求人がない」
だから、セミナー受けてもどうにもならないだろう。
という部分も大きいのかなと思います。

これは、非常によくわかります。
僕も実際に詳しくそのあたりの実情を聞いたことがありますが、もう怒りで気持ち悪くなるほどでした。

ですので、まだ、こういうセミナーに出てみようとまではいかないケースが多いのかもしれないなと感じています。

ですが、少ないですが、参加してくれる人はいました。
少ないって、いるってことなんです。
というのは、silentで川口春奈さんが言っていた名言ですが、本当にこれが有難かったです。

そして、話すだけでも、少し前に進めると思うんです。

怒りで気持ち悪くなるような話を聞いた方も、「話せて良かった」と言われていました。

おそらく友人には言ってるかもしれません。
また、友人にも言えない人もいるでしょう。
「聞こえても就職は厳しいよ」なんて言われることもあるかもしれません。
こんな風に言われたら、さらにきついですよね。

でも、うちは、全て肯定的に聞きます。
できれば、解決のためのスモールステップを出したいですが、これらはなかなか出せないこともあります。
そんなときは、聞くことしかできませんが、聞いてくれる人に言うことができれば、また一歩前進できると思うんです。

試しに、愚痴を言いに行くぐらいの感覚でいいので、ぜひ参加してみてください。きっと一歩進めます。


さあ、そして今日の本題ですが(前置き長すぎですね(笑))、
「求人がない」
という事実。

これは、改めて考えさせられました。

冒頭のグラフは、障害者雇用数のグラフです。

どんどん増えてますね。
多分これを見ると、「いいじゃない!」企業も頑張ってる!
と思うかもしれません。

でも、「求人がない」と、困ってる人もいるんです。

事実を見てみましょう。
ある年齢で(高めですが働き盛りの年齢です)、一つの県で、障害者雇用のフルタイムで、何件求人があるか、ハローワークで調べてみました。

全部は見てないんですけど、おそらく一番少ないであろう求人数の県を見てみますと

何と、16件しかないんです!
全県でですよ。

しかも、この一番上の求人、13万~15万円。
この年齢でこの金額では、一人でも生活は厳しいのに、家族がいればまず無理でしょう。

ちなみに福岡県は、

287件。
それでも、287件しかないんです。
賃金も16万5千円。

一番多い東京でも・・・

1,039件しかありません。
東京でも17万~20万円

じゃあ、一般枠はどうか?
鳥取県の一般枠は、全県で

4,582件
東京の障害者枠求人の4倍あります。

念のため繰り返しますが、ちょっと高めの年齢設定なので、少ないなという部分はあります。

福岡の一般枠求人は、

31,667件
これは、たまたま専門職で高額賃金ですね。
でも、この年齢なら当然もらっていい額ですね。
自分には程遠い額ですが・・・(苦笑)

東京は、

63,051件

障害者枠求人は、
東京で1/60
福岡で1/110
鳥取では、1/286
しかないんです。

そして、これは、障害者枠なので、障害の種類によっては、さらに狭き門になるでしょう。

実際、良さげな求人に応募したけどだめだったという例があります。
そこは、20人応募したけど誰も通ってない。
どんな人なら採用できるんだ?と言われている人もいましたが、
これはおそらく、法定雇用率達成のため、軽い障害の人をイメージしてるんじゃないかなとは感じます。

法定雇用率って何なんでしょうね?

これがあるから、雇用は進んだというのはもちろんあるでしょう。
ですので、否定するつもりはありません。

ただ、障害といっても、ものすごく幅があります。
この幅というのは、できることの幅です。

そして、法定雇用率で言う障害は、障害者手帳を持っている人に限りますが、難聴に関しては、手帳を持ってなくて、非常に聞こえで困っている人は多いです。

でも、障害者枠は使えない。
一般枠なら、聞こえないことで聞こえる人の方が選ばれてしまうケースは今は多い。

こういう問題もあります。

障害者雇用が増えているのは理解が進んでいるのではと思いがちですが、実態は、できることが多そうに見える人、もしくは、仕事ありきで、それをやってくれる人たちの採用が増えているだけなのではという気もしてきます。

障害者枠雇用は、良い制度なのか?
優しい制度なのか?
どうなんでしょうか?

この制度ができた当時のことを思えば、現状打破においては突破口となったとは思います。

でも、時代は流れ、環境も状況も変わっています。
その時に合わせて、最適な制度に変えていく必要があります。

その視点で言うと、今の法定雇用率や障害者雇用というのは、全く機能してないどころか、足を引っ張る制度だと言えるでしょう。

ベストは・・・

その人の能力、特性を見て、最も力を発揮できる役割を振っていくことです。

精神障害の方の丁寧な取り組みのおかげで、ぶどうより甘い、めちゃめちゃ美味しいトウモロコシを作っている農家さんも実際にあります。

難聴者には、聞こえないがゆえに突出した力を活かせる業務内容は多々あります。

勤務時間が尺度になる仕事もあれば、勤務時間を尺度にする必要のない仕事もあります。

要は、自社が求めるアウトプットを出せるかです。
1分で出せれば、8時間粘る必要はありません。
出来の良しあしは、時間では決まらないものもあります。

もう、今の環境から言うと、障害者雇用という考え方は、どちらかというと足枷になっているような気がします。

じゃあ、失くせばいいのかというと、
今、もうやめにします!とこの制度だけ失くしたとしたら、障害を持つ人の多くは放り出され困ることになるでしょう。

なので、もちろん、企業側の意識転換がまず必要です。

その人の能力をいかに活かすか?
これを前提にした雇用にしていけば、みんながハッピーなはずです。

8時間働かなければいけない、そうしないとお金は満額出ないなんて決める必要ないんです。

求める成果を出してくれれば、普通に対価を払えばいいですよね?
もちろん、成果さえ出せばそれでいいというわけでもないですが、
やっぱり、
「障害がある『けど』採用しましょう」
が前提では、もう立ち行かなくなってきていると思います。

いや、立ち行かないというか、その人の能力を活かすという視点で採用すれば、自社の発展にもつながるんです。
それを多くの企業に知ってもらいたいと思っています。

ある会社の方、その地方ではかなり大手の企業です。
その方がはっきり言っていました。

「障害者向けの採用は、すでにその人にやってもらいたいことがある。それをやってもらうために採用する」

非常に残念な視点だなと思いました。

これは、「障害を持っていても、それがゆえに突出した力があって、それを活かしていきたいんです」という言葉に対して返ってきた言葉です。
つまり、もう決まってんだから、今更変えられないんだよということです。
そして、やってもらいたいことというのは、簡単な作業ですね。
法定雇用率達成のため+簡単だけどあまり人がやりたがらない仕事をやってもらおうというニュアンスをヒシヒシと感じました。
実際に業務内容がそういったものになってますので。

これでは、もう一緒に過ごすとかではないです。
何が共生社会だ?
何がSDGsだ?
という話です。

完全に分けて見られているわけです。

他の人ではなかなかできないことだけど、この人たちはうまくできる

ということが、いろんな障害の中であります。
それを活かしていくことこそ今求められますし、それがひいては、自社の発展にもつながるんです。

そんな雇用に変えていく時期に来ているなと強く感じます。
皆さんは、どう考えられますか?

おっと・・・長くなってしまいましたね(笑)
難聴者のための就職支援セミナーは、まだやってますので、よかったらぜひご参加ください!
https://cutt.ly/N9T69yk

継続支援クラウドファンディングも実施しています!
第二目標:3/3までに50人(あと16人です!)
https://readyfor.jp/projects/nancho_kakehashi


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