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学校での観劇における情報保障の実例マニュアル

みなさん、こんにちは!
岩尾です。

今日は、学校での観劇における情報保障について、実例から、具体的な方法をお伝えします!

学校では、観劇の機会がたまにあると思います。
・劇
・ミュージカル
・人形劇
などなど。

それほど回数はないと思いますが、こういった劇などは、「言葉」がわからないと楽しめませんよね。

ただ、こういう劇に対してどのように情報保障をお願いしたらいいのか?そもそもできるのか?糸口もなかなか見えないかもしれません。

ということで、我が家も観劇の機会が2回あり、1回目も打合せをしてたんですけど、思わしくない結果で、2回目、本気モードでやりとりをしてきました。

今回の観劇はこれ!
劇団ポプラさんのオズの魔法使い

これを、できる限りの手を尽くして、学校、劇団さんに協力してもらい、難聴児も楽しめる舞台にするべくやりとりさせてもらいました。



1.どんな情報保障を準備するべきか?


まず、これはミュージカルです。
なので、バックミュージックがあって歌ったり、セリフを言ったり、効果音とともにしゃべったりします。
もちろん、声だけの時もあるはずですが。

このシチュエーション、補聴器ではなかなか言葉を認識できません。
ロジャーなどのワイヤレスマイクを使っても同じです。
音の多い場所では音が重なってしまい、「言葉」としての認識が難しくなってしまいます。

もちろん、ワイヤスマイクを使った方が、使わないよりもいいはず(言葉を認識できる頻度は上がると思います)ですが、これはそれぞれ好き好きだと思います。

いずれにしましても、音だけでは認識は難しい。
となると、「文字」が必要となります。

手っ取り早いのは音声文字変換アプリ。
でもこれは難しいでしょうね・・・・

かなり誤変換があります。
そして、文字化が遅れてしまうことも絶対にあります。
それから、劇団員さんたちもワイヤレスマイクで連絡を取り合っているようで、干渉しないチャンネルを選ぶことはできるようですが、携帯電話などはちょっと困るかなという感じでした。
ipadも同じようなものですかね。
ちょっとワイヤレスの周波数帯での干渉の方も気になります。

ちなみに、ロジャーは特殊な周波数帯を使っています。
2.4GH周波数帯域を使っているので、干渉は心配ないようです。

となると、どうすればいいか?

幸いなことに、こういった劇はセリフが決まっています。
そうです!台本があるんです!
だから、台本のセリフをスクリーンに映せばいいわけです!
これが、おそらく今回のケースではベストです!


2.台本を貸してもらい、パワーポイントに打ち込む!


事情を話せば、台本は貸していただけます!
もちろん、ダメなとところもあるかもしれませんが、2024年の4月からは企業も合理的配慮が義務になるので、対応してくれるといいですけどね。

そして、セリフをパワーポイントに打ち込みます!

パワーポイントで、セリフに合わせて文字を出していくという方法です。
100%完全な文字保障です。

本当は、この作業は学校側の作業です。
なぜなら、学校の行事での情報保障だからですね。

ただ、学校の先生は忙しいですよね。
そこはもちろんこちらも協力しますし、何より前例のないものはやることすら難しいので、何とか前例を作りたかったのもあります。
ゆくゆくは、学校で完結できるところを目指して、まずは前例を作ることを優先させたいと思いました。

ですので、僕は自分で打ち込みました。
僕も本気ですし、親の本気を見れば、先生もまた感じるところもあると思います。

基本1スライド4~5行ぐらいですかね。
長いセリフだと、行間をつめられますが、MAX6行ぐらいでした。

そして、子ども向けはこれが大変なんですが(笑)、ふりがなをつけます(笑)

僕はフォントサイズ48、ふりがなは24で書きました。
フォントはBIZ UDPゴシックです。
これ、見やすいんですよね。
これは、大体のパソコンに入ってます。

このフォントを珍しいものにすると、学校のパソコンで開けたときに認識せず、別のフォントになるので、ふりがなも字の大きさもずれてしまいますので悲劇です(笑)
事前に確認しておいたほうがいいですね。

ちなみに、小学校で習う漢字はここで調べられます↓
https://ieben.net/syou-kanji/2020gakunen-check/

もちろんケースバイケースで、小学校で習わない漢字でも、漢字を使って、ふりがなを打った方がわかりやすいのもありますし、小学校で習う漢字でも、ひらがなにした方がいいかなというのもあります。

1年生から6年生までいると、どの字に焦点を合わせるか悩みますが、そこは状況次第で考えてください。

台本は80ページぐらいだったですかね。
大体、5~6日ほどでできましたが、丸1日使った日もありますし、10日もあれば多くの場合できるのではないかと思います。

ですので、観劇があるとわかったら、3週間前には学校に相談して、まずは台本を送ってもらって、打ち込みに入った方がいいかと思います。
事前に先生に、観劇があるときは早めに教えてくださいと伝えておいた方がいいですね。


3.スクリーンを置く場所を決める


さあ、これが肝となります!
スクリーンを置く場所です。

事前に先生とは打ち合わせていて、状況を聞いて、だったら、ここがベストかなという位置がありました。

ダメだったら、子どもが座ってる横に出しましょうかと言われたんですけど、それでは意味がなくなってしまうので、理由を説明して、そこはダメですねと伝えていました。

まあ、どうなるかわかりませんがということで、僕は当日セッティング時に同席させてほしいとお願いして、現地に行かせてもらうことにしました。

いや~行って良かったですね・・・・
最初、ここにセッティングされていました・・・・

上図の赤線が子どもの右端の位置です。
となると、この位置では、字幕を見ている間、舞台が観えないわけです。
下図、ご参照ください。

なので、当初話していた、この位置に置けないか劇団の方に聞いてみました。
(左右はどちらでも構いませんが、下座は使えないとのことでした)

そうすると、この位置まで役者さんが来るらしいんですね。
そうなると置けないよね・・・・

というわけで、なんかいい方法ないですかねと話していたら・・・・
ここに置くことができるようになりました!

この位置、スピーカーがあるので、無理だと思い込んでしまうところ、少しは動かせるようでした。
もちろん、どこの劇団さんでもできるかわかりませんが、思い込みは外して相談してみることです!
聞いてみないとできるかできないかはわかりません!

ここだと、字幕を見る方向に舞台があるので、言葉も認識しながら、舞台を楽しめると思います。
まあ、ギリギリですね・・・・

あ、ちなみにこの場合、子どもが座る位置は右端です。
後ろは、字が読めるなら後ろ目の方が舞台も見やすいかもしれません。

ここで、中央の位置に座ってしまうと、目線が右と舞台とズレてしまうので、あまり見やすくないはずです。
後ろの方だったら、字幕も視界に入って見えるかもしれませんが、スクリーンが横すぎるので、この場合は、右端から見た方がいいとは思います。

先生も、スクリーンの位置はどこに置かないと意味がないかは、説明してるのでわかっていたと思います。
理屈では。

でも、やっぱり、劇団の方になかなか突っ込んで言うのは難しいですよね。

それと、やはり難聴のわかりづらさ、見えづらさというのもあるのかなと思いました。

「ベストの位置じゃないけどしょうがないよね」と、無意識のうちに思ってしまうのはあるような気がします。

ここまでスクリーンを用意すれば、この位置でもしょうがないよ、よくやったよと思ってしまうことが多いかもしれませんが、あの位置ではダメなんです。

字幕を見れば舞台が観えないし、舞台を観れば言葉がわからない。
お願いしている身ではありますけど、本質をお伝えすると、あの位置では、字幕がないのとさほど変わらないんです。

だからこそ、空気を読まず突っ込むことが大切です(笑)
もちろん、礼儀は持ってですね。

まあ、僕も、「ちょっと待ってくれ、ここはまずいわ!」というテンションで話しかけてしまいましたが(笑)、「ここだと、舞台を見れないんですよ」と事実を伝えると、「そうですね」となり、スピーカーの前に置けるようになりました。

言ってみるもんです!
礼儀を持って!
諦めてはいけません!

実際の映像です。

こんな感じのセッティングです。
赤いコーンが、子どもの右端+一番前の位置です。

実際に座るかなという位置から見るとこんな感じ。
まあ、大丈夫かな・・・・
一段上だとさらに良かったですが(笑)、まあこれでも何とか大丈夫でしょう!

これでセッティングはOK!
後は、先生が一人張り付きになってしまいますが、セリフに合わせてパワーポイントを進めていけば、完全文字保障で、難聴児もオズの魔法使いを楽しめるわけです!

ちなみに、うちは難聴学級があるので、先生にも頼みやすいという下地があります。
今回は、難聴学級の担任の先生がパワーポイントを動かしてくれましたが、もし、難聴学級がなければ、対応できる先生がいるかはわかりません。

ただ、教頭先生でも校長先生でも、誰かは動けるんじゃないかと僕は思うんですけどね。


4.ワイヤレスマイクもセット!


これは、子どもさんによりますので、ワイヤレスマイクがあった方がいいか、ない方がいいか、その子ごとに確認となります。

うちの子は、ショッピングモールのゲームセンターの場所で、「ロジャーがうるさいから切って」と言ったことがありました。
音の大きな場所では、バックの音が大きすぎてうるさくて嫌だ、言葉もわからないということがあるかもしれませんので、その辺は個別に聞いて確認してもらえればと思います。

今回、うちの子は、ロジャーもあった方がいいということで、併用しました。
音が重なっていると、ロジャーを使ってもなかなか言葉として読み取りにくいですが、字幕があれば認識しやすくはなるはずです。
併用がベターですね。

ロジャーに関して言いますと、
タッチスクリーンマイクは25m使えます。

セレクトは、15mなので、子どもの座る位置は要注意です。

マイクを、スピーカーの近くに置きます。
スピーカーは左右にあるので、どちらでも大丈夫ですが、プロジェクターの近くに置くと、プロジェクターが発する機械音を全部拾ってしまうので、プロジェクターの近くには置かないでください。

マイク部分をスピーカーに向けます。
なるべくマイクに近い方がいいですが、これも、あんまり近すぎると本人が音が大きすぎるとなってしまうかもしれませんし、遠いと声を拾いにくいかもしれません。
現場での調整が必要です。

そして先ほどもお伝えしましたが、ロジャーの周波数帯は2.4GH。
大体の通信機器とは干渉しないでやれると思います。


5.ベストなスクリーンの位置は?


さあ、スクリーンを置くベストな位置はどこなのかをお話しします。
下図をご覧ください。

今回のケースですが、今回の劇団ポプラさんの演劇は、「2.5次元舞台」という名前がついていました。

そうです。
プロジェクションマッピングです!

これ、今から絶対増えていきますよね。

だとしたら!!

ベストは、このプロジェクションマッピングに字幕を載せておくことです。

一応、劇団の方に、技術的に可能かどうか聞きました。
実はこのことも確かめたかったことです(笑)

技術的には可能なようです。
まあ、そうですよね!

映像が出てるなら、それに合わせてセリフを入れればいいし、歌の時は、音楽があるから、それに合わせて字幕を入れればいい。

あとは、役者さんが舞台で演じているときですが、これも、プロジェクションマッピングはあるわけなので、セリフを後ろのスクリーンに出すことはできますよね。

もちろん、手間がかかるので、劇団としてやるかどうかとなると上の判断になるとは思いますが、オズの魔法使いは、一定期間過ぎたら流行らなくなるものというわけではありません。
流行りすたりではなく、ずっとできるものです。
1回作れば、ずっと使えます。

難聴児は、なかなかこういうものを楽しめない(言葉がわからない)ということが多々あります。
でも、字幕があれば、言葉がわかって、舞台を楽しめます!

聞こえない子どもたちのために、どうか、字幕のことぜひ、検討してもらえれば嬉しいです!

さあ、2番手は、舞台の上から降りてくるスクリーンですね。

ただ、これも、プロジェクターが下から映す方式だとさすがに役者さんに当たりそうでできそうにないかもしれません。
上についていれば問題ないんですけどね・・・・

それから、プロジェクションマッピングを使うとなれば、この位置でのスクリーンは使えません。
だからこそ、プロジェクションマッピングを使うなら、字幕を入れてほしいですね!

そして、3番手が舞台の横です。
ただ、役者さんは舞台を目一杯に使うケースが多いんでしょうね。

そこは、事前に話し合って、字幕スクリーンの幅を考慮してやることもできるとは思うんですよね。
それこそ、学校によって、舞台幅とか変わるはずですけど、まさか学校の仕様は全国一律とかではないでしょう。
ちょっと早めにこのあたりを劇団さんと話し合えるといいかもしれませんね。

そして、4番手が今回うちの学校で置いた場所です。
ギリギリ・・・・ギリギリの場所ですね・・・・

最初に置いていた場所は、申し訳ないですがNGの場所です。


6.結果


本人楽しめたとのことです(^^ゞ

ロジャーでも聞こえていた分はあって、時々字幕を見ていたようです。
字幕の位置は、他の位置を経験してないから何とも言えないようですけど、まあ大丈夫だったようで、あの位置でもOKだったら、多くのケースでいけそうですね。

字幕スクリーンをつけるというのは、前例もないし、かなり大変そうに見えるし、だからやろうとする人は少ないと思いますけど、これは、スタートラインに立つための、自然で正当で普通のフォローのお願いです。

どんどん前例を作っていけば、これが普通になります

ぜひ、いろんな場所で観劇+セリフ字幕、拡がるといいなあと思います!

あ、もっと言うと、プロジェクションマッピングをしてるなら、そこに字幕が入るのがスタンダードになると一番いいんですけどね(笑)
まずは劇団ポプラさん、やってほしいなあと思います!

何かお尋ねなどありましたら、いつでもお気軽にご連絡ください!


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