通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方
皆さん、こんにちは!
岩尾です。
さて、3/13に、文科省から、
「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議報告」
が出されました。
「通常の学級に在籍する」というのをどう分類してるかがよくわかりませんが、通級、もしくは支援級を利用している子たちも含む何らかの障害を持っている子と捉えて考えることにします。
そして、僕は難聴しかわからないので、難聴に特化して思うところをお話ししたいと思います。
なぜこの話をするかと言いますと、この検討会議の報告が、あまりに現場を知らなさ過ぎると強く思ったからです。
まず、文科省は、通級をかなり推していることがわかります。
かなり通級の充実を図ろうとしています。
ただ、難聴に関して言えば、ちょっと違うんですけど、下記PDFの報告からから一つ一つ見ていきます。
https://www.mext.go.jp/content/20230313-mxt_tokubetu02_000028093_01.pdf
上記PDFのP12に通級の課題が書かれています。以下です↓
課題のところに、「毎週授業を2~3時間程度抜けることになる」というものがまずありません。
これは、大きな課題と思うんですね。
でも、課題に上がってないんです。
(放課後の時間帯もありますが、数に限りがあります)
つまり、通級を利用する子は、療育のため勉強ができなくなることは仕方ないと考えているということになりますよね。
勉強は少々できなくても、療育をしなさいと。
これ、難聴に関して言えば、難聴児が地域の小学校に行った場合の大きな課題は、勉強についていけるかと友達とのコミュニケーションです。
その勉強についていけるかという課題があるにもかかわらず、通級で授業を抜けることに関しては課題として上がってないんですね。
完全に、現場の課題感とズレています。
そして、P13
「通級が作れないからと言って、安易に支援級を作ることは適切ではない」
と言っています。
これは、言ってることは正しいです。
なぜかというと、通級と支援級は目的が違うからです。
大事なところなので繰り返します。
通級と支援級は目的が違います。
通級は、療育をすることが目的です。
一方、支援級である難聴学級は、勉強環境を整えることが目的です。
勉強環境を整えるとは、なるべく静かな環境をつくり、聞えなかったときに気軽に聞き返せるし、子どものペースに合わせて勉強ができる環境を整えることです。
難聴児には、この2つが必要です。
療育と勉強環境の2つです。
ただ、今の日本のシステムでは、学校においては、このどちらかしか選択できません。
通級を取れば難聴学級は取れませんし、難聴学級を取れば通級は取れません。
本来は、両方取れるようにうするべきです。
なぜなら、この2つは目的が違い、両方必要だからです。
ただし、地方によっては、療育は別の場所でできることもありますが、通級以外に療育ができる場所がない地域もあります。
そんなとき、じゃあ、勉強環境を整えることと、療育、どちらを優先するべきかと言うと、もちろん、個々に違いますが、多くの場合、「勉強環境を整える」ことになるはずです。
理由は2つ。
まず、地域の小学校に行った後も、未就学の頃にやっていたような療育に力を入れる必要があるのであれば、地域の小学校よりはろう学校を選んだ方がいいかもしれません。
でも、地域の小学校に行ける状況にあるなら、勉強環境を整えて、学習の支援に力を入れていった方が現実的です。
なぜかというと、これが2つ目の理由ですが、難聴の大人の人から、小学校での生活で、何て言ってるのかよくわからないことが多かったという話を聞くからです。
そして、成績も思うように上がらなかったという話もよく聞きます。
アメリカの研究では、
15-25dBでは、大きな教室では10%
30dBでは、25~40%、
35-40dBでは、50%の聞き落としがあるとされています。
ロジャーなどをつければもう少し良くなるかもしれません。
でも、聞き洩らしは必ず発生します。
頑張っても頑張っても、思うように成績が上がらない。
それで悔しい思いをしてきた子たちも多くいます。
聞こえないから聞くことに注力するので、そこから考えるとなると、疲れてしまってなかなか力を発揮しにくくなります。
だからこそ、聞くことに注力しなくていい環境をつくることで、勉強をしっかり理解できるようになるんです。
勉強が全てと言うつもりはありません。
でも、聞こえる子なら普通にできていることが、聞こえない子は何らかのフォローがないとできないんです。
勉強ができなくても、友達と思い切り遊んで仲間ができればいいというのは違います。
それは、しっかり言葉が把握できた上でのことです。
言葉が把握できないまま、勉強ができなくてもいいというのは、それは違います。
子どもの学ぶ権利が阻害されています。
もちろん、子どもは一人だけで授業を受けることを嫌がるケースが多いです。
でも、それは小1,2ぐらいで、そこまで考えられることはなかなか少ないです。やはり親が必要性をしっかり話して双方納得する必要はあります。
でも、ここができないがために、多くの子どもたちが自信を無くしたり、そのおかげで友達関係もうまくいかなくなったりすることがあるんです。
だからこそ、難聴児にとっては、勉強環境を整えることが非常に重要なんです。
長くなりましたが、話を元に戻しますと、どうも文科省は、支援級を通級より下と見ている印象を受けますが、そもそも目的が違います。
あ、支援級にも自立という時間があって、療育的なことをする時間は設けられています。
もちろん、先生は専門家ではありませんが、それでも、小学校以降で、地域の小学校に行けるぐらいの状態であれば、自立の時間ぐらいでもある程度の療育はできます。
発音練習などは、そもそも通級でもほとんどできないはずなので、そう考えると、どちらかというと、やっぱり勉強環境を整えることの方が、難聴児にとっては必要かなと思います。
さあ、その療育的なことをする通級ですが、難聴の専門家がいるのでしょうか?
ほとんどの場合、NOです。
P16 通級の先生の専門性を上げる
と言っています。
これはもちろん大賛成ですが、ちょっと待ってください。
そもそも、難聴がわかる先生はいるわけがないんです。
たまたま言語聴覚士(ST)が転職して先生になったとかでない限りですね。
そして、STでも難聴がわかる人は少ない。
ましてや子どもの難聴がわかる人はもっと少ないという状況です。
そんな中、スキルをどうやって上げるんですか?
新卒の先生が、10年以内に全員支援級、支援学校を経験させると書かれてましたが、そんなんで専門性が身に付きますか?
無理ですよね。
これは、先生の専門性を上げるのではなく、STを配置するべきなんです。
そうですよね?
地域によっては、STが配置されているところもあるようですが、福岡市は配置されてません。
STって、本当に専門職ですよ。
その専門課程の勉強をしないで、いきなり療育をさせるって、おかしいですよね?
医者でない人を、1日だけ研修して、さあ、手術してくださいってのと同じようなことです。
そんな人の手術を受けますか?
受けませんよね?
難聴の療育を舐めないでもらいたいです。
今や小学校は、臨床心理士、公認心理士ですかね?
学校についてますよね?
そんな感じで、子どもの難聴がわかるSTを配置するべきです。
基礎の勉強もしないで、数年経験するだけでできるようになるレベルのものではありません。
そして、最後にインクルーシブです。
インクルーシブと言いながら、支援学校と連携して一体化して運営していくと書かれてましたが、それじゃあ分かれたまんまだし、支援学校の近くの学校しか連携できませんよね。
難聴に関しては、やっぱり少人数クラスで勉強できることが今のところベターじゃないかなとは思うんですけど、一緒の教室で全てできるのであればそれがベストですよね。
そのための第一歩としては、まずはろう学校の機能を地域の小学校に入れることかなと思います。
支援級スタイルから、段々と通常クラスでもできるように模索していくのがインクルーシブですよね。
全てインクルーシブにした方がいいかどうかはわかりません。
障害の特性がありますからね。
でも、同じ学校に通って、クラス間はオープンになることは目指すべきかなと思っています。
結局、今の日本は、分離教育がなされているので、障害を持っている子と触れ合うことがない人が多いんです。
なので、大人になって出会ったときにどうしたらいいかわからない。
そして、優しくできない、関わらない方がいい、見て見ぬふりをしてしまうなんてことが起きたりしてるわけです。
なので、触れ合う機会を拡げるためにも、まずはインテグレーションは必要かなと思います。
その方がお互いにとってもいいと思います。
なぜ、文科省が通級を推しているのかがわかりませんが、他の障害では、その方が効果的なことが多いんでしょうか?
ちょっとわかりませんけど、難聴に関しては、全然理解されてないなと感じます。
文科省の通級推しのせいでしょうか、就学相談のときは、なぜか通級を勧められることが多いような気がします。
「難聴学級を新設したい」と言っても、
「できなかったらどうするの?だから通級にしといた方がいいよ。せめて第二希望に通級を書いてた方がいいよ」と言われます。
これもおかしな話で、目的が違うんです。
でも、難聴学級以外に勉強環境を整える選択肢がないんですよ。
だから、第二希望を書けないんです。
通級神話みたいなものがあるのを痛烈に感じます。
思考停止してはいけません。
子どものためにも、冷静に考えてみてください。
勉強をしっかり理解していくことが必要な時に、週に3時間も授業を抜けることが子どもにとって有効ですか?
通級に行ったら、全て通常級の授業になりますけど、先生の言葉を全て把握できると思いますか?
実際に、小学校高学年、高校生の難聴の子たちを見ているSTの人に話を聞くと、下の学年でのことがわかってなくてつまずいていることがほとんどだそうです。
小学校高学年の子は、小2あたりのことができてなく、これがなかなか理解してもらえずすごく苦労したと言っていました。
高校生は、分数がわかってなく、そこは教えたらすぐにできたとのことです。
言葉を聞き取れてないんです。
その当時は、本人も聞き洩らしがあることに気づけません。
勉強難しいなあとなるだけです。
このときに、環境を整えていればできるんです。
難聴学級は少ないです。
それだけに新設申請もハードルが高いと思われるかもしれません。
でも、文科省の方針では、希望されたら必ず作らなければならないという方針があります。
地方の教育委員会までこの方針は浸透していませんが、ハードルが高いものではなく、ごくごく普通のことです。
できないのは、部屋がもうないとか予算が取れなかったとかですね。
でも、部屋の問題は、校長室がありますからね。何とかやりようはあるはずです。
1人でもできます。
複数いないとできないというデマがよくありますけど、これは完全にデマです。
1人でできている難聴学級多くあります。
ちょっと話は飛びましたけど、文科省は現場をしっかり見てもらいたいですね。
この検討会議も、現場の人はいたんですかね?
特に難聴なんて、親でもわからないことが多いので、お世話になっている放課後デイや、病院のSTさんなど、現場の専門家の意見も聞きながら方策は考えてもらいたいなと思います。
ちなみに、僕はいつでも検討会議いきますよ。
ぜひ呼んでください!
あ、交通費は出してくださいね(笑)
言葉のかけはしの記事、活動に共感いただきましたら、ぜひ、サポートをお願いします! いただいたサポートは、難聴の啓発活動に使わせていただきます。 難聴の子どもたち、難聴者と企業双方の発展、そして聞こえの共生社会の実現のため、どうぞよろしくお願いします!