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難聴の子どもたちの環境を整えることの重要性

皆さん、こんにちは!
岩尾です。

4/15に、保護者向けの「難聴児の小学校選択の考え方」セミナー、
4/25に、看護師5年目の難聴当事者の高野さんを講師に迎え、
「友達とのコミュニケーションのヒント」セミナーを開催しました。

この2回を通して、難聴の子どもたちの環境を整えることがいかに重要かを改めて実感しました。

大人になった難聴者の話は、今の子どもたちに何をするべきかを明確に教えてくれます。

小学校低学年は、それほど複雑な会話もないのですが、小3、小4となってくると段々と複雑な会話も出るようになります。
さらに女子はヒソヒソ話なども多くなるようで、そうなると全然聞こえないということでした。

ヒソヒソ話ではなくても、女子は声の小さい子も多いので、女子とは話せなくなり、男子とばかり話していて、それでまたいじめられたという話も聞いたことがあります。

そして、今はマスクをした子が多いんですね。
口の動きも見えないし、マスクでこごもった声になると聞こえません。

大人がマスクをさせました。
日本では義務ではありませんでしたが、学校では義務となっていました。
それが解除されました。

「今からはマスクは個人の自由です」とただ言うだけでは、子どもはなかなか外せませんよね。

ウイルスというものは変わっていくもので、
もう、マスクをしなくても、死に至るようなウイルスではなくなった。
自分に熱がなければ、他人に感染させるようなこともないです。
ということをまずは子どもたちに伝えるべきですね。

もちろん、風邪というのはこじらせれば死に至る可能性もあるものですが、それは昔からそうですし、日常的にマスクをしている状態は、人間の営みとしてやはり不自然ですよね。

そもそも、マスク自体に感染を防ぐ優位なデータはないようですし、他にも疑問点は多々ありますが、複雑なことを言っても混乱するので、シンプルに、今まで通り健康な人はマスクをしなくても自分も他人も困らないよと、大人は子どもたちに伝える必要があるでしょう。

特に学校は義務でしたので、やはり学校の先生からこういうメッセージは伝えるべきだと思います。

そして、高野さんが言うには、聞こえないことで、自分は抽象的な言語や論理的な言語の理解に遅れがあるなと気づいたとのこと。

これは興味深く、いつ、何をきっかけに気づいたのか聞きました。

そうすると、
「小学校の頃からうすうす気づいてはいた。
でも、何かおかしいというモヤモヤとしたもの。
大学時代に、発達段階などの専門的な勉強をする中で、「ああ、私は聞こえない影響で、そういった言語の理解が遅れてたんだ」と気づいたとのことです。

非常に考えさせられる話ですよね。

小学生では、そのような影響について明確にわかりようがありません。
ただでさえわからないのに、難聴児は聞こえた経験がないんです。
幼い頃に失聴したとしても、それほど覚えてはないでしょうから、今の状態がどんな状態かがわからないわけです。

音はしているので、聞こえていると思っている。
でも、ヌケモレが非常にある状態。
難聴児は、それが普通の状態と思っているわけです。

抽象的な言語、学習言語といったものは、小3,4ぐらいから多くなってきます。
そのとき、ヌケモレだらけだとしたら、やはり学びは遅れます。

なぜか勉強が難しい。
点数が上がらない。
努力してるのにどうしてなんだ?
努力が足りないのか?
自分が劣ってるのか?

聞こえないからという発想に結び付きにくいんです。
なぜなら音は聞こえているので、これが聞こえている状態だと思ってしまうんです。

繰り返しますが、でも実際はヌケモレのオンパレードなわけです。

もちろん、それを自覚して、うまくやっている人もいると思います。
でも、多くの子が気づかずに過ごしていて、高校、大学、仕事をしだして、何だかうまくいかないと落ち込むことだって結構あるわけです。

ここですね。
ここが大きな課題の一つだと確信しました。

ヌケモレがある状態を何とか少なくするための対策があまりないんです。
小学校から、勉強環境、音環境を整える働きかけをしている人が非常に少ないんです。

当然子どもが自分からはできません。
そもそもわかりませんので。

ここは、親が働きかけないとできない部分です。
先生もわかりません。
もちろん、難聴の先生、難聴の子を持つ先生ならわかるでしょうが、これは稀な例でしょう。

プラス、働きかけにくいシステムもあります。
それが、小学校に上がった後、難聴学級か通級教室かどちらかしか選択できないというシステムです。
さらに、なぜかほとんどの関係者が通級教室を勧めているという事実。

これによって、小学校に上がったら、とりあえず通級教室に行けばいいねとなり、一番肝心な音環境、勉強環境を整える働きかけをするまで頭が回らなくなってしまうんです。

とはいえ、
・ロジャー(ワイヤレスマイク)を使ってください
・口を見せて話してください
などは学校に伝えていると思います。
資料を渡している人もいるでしょう。

ですが、それだけでは多くは忘れ去られていると思います。

なぜなら、うちは難聴学級があって、難聴学級の先生と連携を取りながらやってるんですけど、それでも交流クラスではロジャーさえ使ってなかったり、目の前にあるパスアラウンドマイク(児童用のマイク)を使ってなかったり、黒板に向かって話したりしてるわけです。

何度も何度も言っていかないと、重要だと思ってもらえないんです。

それは、そもそも難聴を誤解してるというのもあります。
先生も忙しいでしょうから、そんなに一人に構ってられないというのもあるでしょう。
これは決して肯定するわけではないですが、現状、そういう言動によく出遭います。

ある人が、「みんな余裕がないので、めちゃめちゃ優しい人じゃないと考えてくれない」と言われていて、良い悪いは抜きにして、現状をよく捉えているなと感じます。

だからこそ、まず環境をつくることが非常に効果的なんです。
つまりは、難聴学級という少人数のクラスを作って、勉強環境を整えることです。
これで、国語算数は環境が整います。

そして、難聴学級を作れば、そこから交流クラスにも話をしやすくなります。
通常級のみに行ってる場合と比べて、格段に環境は整えられるはずです。

就学相談などで通級教室のメリットで、自分のクラスの先生と連携がとりやすいとかを言う人がいますが、難聴学級の方が自分の学校にいるわけなので、他の学校の通級の先生よりも格段に連携しやすいです。

最早、通級を正当化する言い訳にもなってない発言ですが、妄信的に通級となってる関係者が多いのかなと思ってしまいます。

東京都に至ってはちょっと前まで通級しかなかったようですが、今はどうなってるんでしょうか。根本的におかしいですし、子どもたちにとって何がいいのかをアップデートしていくシステムになってないですよね。
もっと、現場を中心に見ながら関係者同士が連携していき、システムを見直していく必要が絶対にあります。

まだまだ課題はありますが、難聴の啓発活動をしていくうちに見てくるものが多くあります。
一歩ずつしかできませんが、一歩ずつやれることをやっていきたいと思います!


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