見出し画像

31.10 ベクトルの初歩(内積の目的と定義)

これまでは、長さ、角の大きさ、面積、体積を測ること(計量)をしませんでした。長さについては触れていますが、比として使っただけで長さを測ることはしてません。
では、その長さや角の大きさを測るのにはどうすればいいのか。そのための準備をします。
なお、三角比や弧度法を忘れてしまった場合は、三角比の話または三角関数をご覧ください。


計量する (測る) ために内積というものを導入します。このように理解しておくと、長さ、角の大きさなどを求めたいときに、「内積が使えないかなあ」という考えが自然と浮かぶようになります(※1)。


内積

天下り的ですが、三角比で学んだ余弦定理を用いて内積ナイセキを定義します。もちろん考えるベクトルは、平面上または空間内のベクトルです。

三角形の合同条件「二辺挟角相等」から、2辺とその挟角が決まれば角の対辺の長さも決まります。これを式にしたのが次の余弦定理でした。長さと角の大きさに関係しているので、計量を考えるにはうってつけなのです。

余弦定理

この式を次のように変形します:

        $${\text{BC}^2=\text{AB}^2+\text{AC}^2-2\text{AB}\cdot \text{AC}\cos \theta}$$
     $${\iff 2\text{AB}\cdot \text{AC}\cos \theta=\text{AB}^2+\text{AC}^2-\text{BC}^2}$$
     $${\iff \text{AB}\cdot \text{AC}\cos \theta=\dfrac{1}{\:2\:}(\text{AB}^2+\text{AC}^2-\text{BC}^2)}$$

この最後の式の左辺 (つまり 右辺) によって内積を定義します。なぜこのように定義するのかは、ベクトルの成分の話をするときに分かります。


確認(ベクトルの長さを表す記号)

ベクトル$${\overrightarrow{\mathrm{AB}}}$$の長さ (大きさ) を$${|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|}$$で表すことにします。同様に$${\vec{a}}$$の長さは$${|\vec{a}|}$$とします(※2)。

記号の読み方
$${|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|}$$:①ベクトルABの長さ(大きさ) ②絶対値ベクトルAB
  $${\vec{a}}$$ :①ベクトル$${a}$$の長さ(大きさ) ②絶対値ベクトル$${a}$$
と読みます。①②のどちらで読むかは好みです。


ベクトルの記号を使えば、線分$${\text{AB}}$$の長さは$${|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|}$$と表せます(※3)。


内積の定義

余弦定理を変形して得た$${\text{AB}\cdot \text{AC}\cos \theta}$$をベクトル記号で書き直した

           $${|\overrightarrow{\mathrm{AB}}||\overrightarrow{\mathrm{AC}}|\cos \theta}$$

を$${\overrightarrow{\mathrm{AB}}}$$と$${\overrightarrow{\mathrm{AC}}}$$の内積といい、記号$${\overrightarrow{\mathrm{AB}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}}}$$で表すことにします:

         $${\overrightarrow{\mathrm{AB}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}}:=|\overrightarrow{\mathrm{AB}}||\overrightarrow{\mathrm{AC}}|\cos \theta.}$$

角$${\theta}$$は2つのベクトル$${\overrightarrow{\mathrm{AB}}, \: \overrightarrow{\mathrm{AC}}}$$の成す角といいます。考える角の大きさは

        $${0\leqq \theta \leqq \pi}$$ ($${0°\leqq \theta \leqq 180°}$$)

の範囲で考えます。ふつう弧度法(ラジアン)を使うと思いますが、度数法でも構いません。ここでは弧度法を用いることにしますが、答えに関するときはできるだけ併記しようと思います。

ここから先は

7,851字 / 3画像
この記事のみ ¥ 200
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?