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薄明の空に輝く「一等星」

帰り道を歩いている途中、僕は一基の街灯に惹かれた。
周りにある街灯とそんなに変わりはないのに。
どうして、その街灯に惹かれたのか。それはよく分からない。

でも、何故か、その街灯に自分が励まされていたような気がした。

その灯は、とても弱々しかったけれど。
その灯は、LEDのような輝かしい光には敵わないけれど。
その灯は、僕の足元を照らすことしかできないけれど。

それでも、僕には、その灯が「デネブ」という星のように感じた。

そして、その灯が、僕に向かってこう言っているように聴こえた。

「生きることを、諦めないで」と。
「理不尽なこの世界に、抗い続けて」と。
「どれだけ項垂れても、踏みとどまって、立ち上がって」と。

それは、沢山の願いだった。

一つは、生きることを諦めてしまった「誰か」の―。
一つは、抗い続ける苦しみに耐えられなかった「誰か」の―。
一つは、項垂れて、暗闇に飲まれて、自分自身を見失った「誰か」の―。

そんな願いだった。

「今のは、一体・・・?」

声の正体が分からず、「もしかしたら、心霊現象かな?」と考えていた時。
既に「誰か」の声は、聴こえなくなっていて。
僕が「デネブ」という星のように感じた灯も、ごく普通の灯に戻っていた。

「本当に、何だったんだろう・・・?」

もしかしたら、あれは、心霊現象だったのかもしれない。
身体に疲労が溜まりすぎて、幻聴が聴こえてしまったのかもしれない。
励まされたのも全部、本当は、僕の妄想に過ぎないのかもしれない。

でも。何故か、心が救われたような気がした。

「・・・。」

本当は、今日、死ぬつもりだった。

毎日が辛い事の連続で、そんな日々に悩んで、苦しんで。
絶望の淵に突き落とされて、そこから這い上がれなくて。
でも、人はいつか死ぬって分かっていたから。

「いつか死ぬのなら、今、ここで死んだ方がいい」

何度も、何度も、そう思った。
地獄みたいなこの世界に、自分が存在している意味なんて無くて。
なんで、生き続けているんだろうって。

でも。そんな時。

「誰か」に、「一緒に、頑張ろう」と手を引かれて―。
「誰か」に、「大丈夫だよ、私達がいるから」と背中を押されて―。
「誰か」に、「辛くなったら、私達を思い出して」と身体を支えられて―。

気付いた時には、僕はもう、絶望の淵から這い上がっていて。
「死にたい」なんて思いも、僕の心からは消えていて。
明日という未来を、少しだけ待ち遠しく思いながら。

Photo→へびかい@ナナセスト倭国 様(X→@hebikai_toru)

僕は、明日という未来に向かって、薄明の空の下を歩き始めていた。


このnoteを作れたのは、こんな素敵な写真を撮ってくださった、へびかいさんのお陰です。へびかいさん、本当にありがとうございます。あと、Noteを本格的にやり始めてから数週間で、スキ!とフォロワーが物凄く増えました。ありがとうございます。これからも、頑張ります。

追伸:noteを本格的にやり始めてから、初めてこんなに書きました。何度も「絶対に書けない」と思ってしまって、手(あと思考)が止まることが何度かありましたが、諦めずにちゃんと向き合って、書き終えることができて凄く嬉しいです。感謝感謝、ですね。

良ければ、Twitter(X)のフォローも、よろしくお願いいたします。

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以上、有栖 狐兎でした。また、次作でお会いしましょう。

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