見出し画像

読書日記(20240429)〜「82年生まれ、キム・ジヨン」/「子持ち様批判」の今、鉛を飲んだ気持ち

この世界は、「お母さん神話」でできている。
正直にいうと、今の心境はそんな感じで、小説を好きになれなかった。気持ちはすっきりしない。「これは私だ」という人が多い、とあとがきに書いてあった。すごくよくわかる。

Xの「子育て垢」「婚活垢」だったり、今(なぜかふたたびどころかエンドレス? 何かきっかけあるんだろうか)巷で話題の「子持ち様批判」関連のヤフーニュースのコメント欄だったり、女性や子育てに対する、大なり小なりの怨嗟や理想、もろもろの声がうずまくものすべてを煮詰めて描かれたようなところがあった。

この本を読んで、女性たちは、「やっぱり女に生まれるんじゃなかった…」と思うんじゃないか。筆者は決して、そんなつもりではないと思うんだけど。


1.キム・ジヨンさんとほぼ同世代の自分 韓国も日本も似ている

韓国が日本以上に深刻な少子化だ、というニュースは記憶に新しい。

「私は産んではいけない」 韓国の少子化、将来不安が拍車:日本経済新聞

韓国の23年、出生率は0.72だそうだ。日本が22年に1.3と記事にあるので、日本よりずっと一人の女性が子どもを産む数は少ない。

韓国のことはまったく詳しくないんだけど(韓流ドラマもほぼ見たことがない)、短期留学していたころに仲が良かったのは、韓国からの留学生だった。
価値観がとても似ていたし(主にマナーや礼儀)、当時、反日感情が強いと言われていたはずなのに、いざ欧米に行くと、私たちは外から見ると大差ない「極東アジアの人」と見られた。

「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んでも、その感覚は変わらなかった。登場人物が韓国の名前で、地名や法律で知らないことはあっても、「お隣の国韓国」と言われるほど、同世代のキム・ジヨンさんと、私は日本で、小学生の頃からそっくりな経験をしていた。

たとえば、学校の座席だ。当たり前のように「男の子のあいうえお」→「女の子のあいうえお」。
男の子が女の子をいじめるのは、好きな子だから。意味がわからん。やられた方はトラウマだ。

日本より韓国の方が儒教意識がつよくて遅れてる、と思っていた(のはわたしだけかもしれない)が、何のことない。日本もほぼ同じだ。
むしろ、もし「子育て支援」というなら、韓国の方が進んでいるところもあった。いいか悪いか別にして、韓国は0歳から5歳まで全所得者対象に保育料が無償らしい。

2.日本の「子持ち様」批判と、韓国の「ママ虫」批判

日本ではなぜか定期的に「子持ち様」が批判される気がする。
今、盛り上がっているけど、火種は何かあったんだろうか。わたしが最近見たのは、ヤフーに転載された、毎日新聞の記事だった。

10000近いコメント欄の大半は、職場にいる子持ち(主に母親)への怨嗟だ。
見て正直、復帰してから産休前までの自分のことを言われているんだろうな とどっぷり、落ち込んだ。

仕事ができない中堅の子持ち様。それが嫌で、自分でなんとかしようと囲い込んで、深夜早朝残業。それでも容赦なく熱を出す子ども。家族も追い込んで、職場にも迷惑をかけ、みんながつらかった。わたしみたいなのは、ワーママになっちゃだめなんだ。と卑屈になりそう。
それもまた、ええい我ながら鬱陶しいわ!!悲劇のヒロインは20代までじゃ。

そうかと思うと、こんな記事も出てくる。

社会保障制度の賦課方式(現役世代が高齢世代などの医療費等を負担している)などをあげ、「他人の子どもの負担をなんで俺が」の怨嗟は、勘違いだという趣旨だ。そこには、「おたがい様の精神を持たなければ」の声が多数派に見える。

「キム・ジヨン」でも、たった一杯のコーヒーを手に取っただけで、「ママ虫(マムチュン)」と言われたことがジヨン氏を追い詰めるシーンがある。

「マムチュン」=公共の場で周囲に迷惑をかける子連れの母親を非難する言葉
https://www.sankei.com/article/20221025-HBMK34TRKRO47KXNB6PFBJCB74/

産経新聞

子持ち様批判をつい、見てしまったからだろうか。
子育て・妊娠・出産にあたって、権利を行使した自分の心がズキズキと痛んでくる。もともとあった、強い罪悪感がふくれあがる。過去の自分がやらかした多くの迷惑を考えると、復帰するのがどんどん怖くなってくる。

ええい、鬱陶しい! もう一回自分に喝を入れる。
悲劇のヒロインは20代までじゃ!!!!!!
(SNSは感情の増幅器だ。インターネットは調べものに使うくらいでいい)

3.ふと思った 子持ち様批判で連想されそうな自分

純粋な疑問が浮かんだ。今、パパ育休が話題になっているくらいで、職場にも、子育て中で子どものお迎えをするパパは多い。

わたしの肌感覚に加えて、コメント欄等の印象でしかないけど、比較的、若い人(性別問わず。ただ、未婚の皆さんが多そうだ)はパパが子どもを理由に抜けたり休んだりすることをあまり非難しない気がする。主な想定ターゲットはやっぱり、母親に読めてしまう(違っていたら申し訳ない)

SNSでも、「未婚女性」が「子持ち女性」を非難している図はあっても、「未婚女性」が「子持ち男性」を非難している姿が少ない。わたしが見えていないだけか、そもそもレアケースだからかもしれないが(重ねて違っていたら申し訳ないです)。

仮に「イクメン総合職」な彼らを非難するとしたら、同じように子育てをがんばって無理する同じ立場の子持ちか、一切合切の家事・育児を配偶者に任せてきた、仕事しまくってきたマッチョな上司だろう(これは性別問わない)。

なぜだろうか。

子どもを理由にママが休んだり早退したりするのは当然で、パパが育児すると「イクメン」で希少価値が高く、今最も褒められる対象だから、というほど単純なのだろうか。また、そういう男性になりたかったり、結婚したりしたい、からだろうか。

それとも、彼らのふるまいが(一般的に)仕事が立派にできながらも子育てにも邁進できる、体力的にも精神的にもタフな素晴らしさを備えているからだろうか(やっぱり、生理その他、女性のほうが体力でしんどい状態になることをひしひしと感じる)。

もし後者なら、(嫌味でもなんでもなく)わたしはイクメン男性の上手な働き方のコツをどうしても知りたい。職場に迷惑をかけず、家庭とのバランスの取れる、幸せな働き方を模索して復帰したい。切実な悩みなのです。
性別でくくるのは乱暴で、個体差だーー、と言われる気もするけど、そのくらい怨嗟の声がつきささる。

そのくらい、子育てフルタイムの日々は、家族にも職場にも迷惑をかけてしまった。そして、今、仕事に復帰するのがとても怖い。

この本で、ジヨンさんが精神を患ってしまう気持ちがよくわかる。救いがなかったし、鉛を飲んだような気持ちになった。特効薬も処方箋もないのも、自分の人生は自分で決めるしかないこともわかってる。

でも、この本と、今の「子持ち様批判」はリンクした。そして、できればこれからを生きるために、救いがほしい。そう思ってしまったのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?