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《和歌日記》2021年1月11日

 小学一年生の長男は明後日が誕生日です。今日はプレゼントを買いにでかけました。

 しばらく前から欲しがっていたのは天体望遠鏡でした。夏に天文台に遊びに行ったことが忘れられなかったらしく、何度聞いてもブレませんでした。月や惑星などを見てみたいそうです。
 しかし天体望遠鏡は、入門機でも2、3万はするものが多いのです。子どもに気軽に触らせられるような値段ではありません。近所の電気屋には5000円ほどのものも置いてあったのですが、サイズが小さく気に入らない様子でした。僕が触ってみても操作が難しい印象を受けます。ひとまずネットでもう少し合うものを探す、ということで落ち着きました。

 天体望遠鏡って、そもそも小学一年生が扱うことを前提に作っているものなどあるのでしょうか。前途多難な予感がしています。

播磨潟 須磨の月よめ 空さえて 絵島が崎に 雪ふりにけり
              (『千載和歌集』九八九 前参議親隆)
 播磨潟 須磨に浮かぶ月 空に冴え 絵島が崎には 光の雪が 

 播磨国の須磨から海に向かい、対岸の淡路国の絵島が崎を視野に入れ、月を眺める風情。須磨も絵島が崎もそれぞれに景勝地と言えますから、両方いっぺんに歌世界に取り込んだというのはずいぶんな贅沢です。スカイツリーを見上げながら東京タワーも視野に収めるようなものですね。
 二つの名所を一つにまとめるのは、月の光です。尖った個性をもつそれぞれの地を、月が一つの色に染め上げます。月を歌えば地上から見上げる視線、下から上へのベクトルが想定されますが、月光を雪に喩えたことで月から地上へのエネルギー、上から下へのベクトルも用意されたのです。そのおかげで二箇所が一色にまとめられました。

 天体望遠鏡を求める息子にも、こんな月を見せてやれる日がくれば嬉しいなあ、なんて思います。

 

 

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