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3月29日 海の桜と夜空に散る花

 3月にして今年4度目の海に来た。

 2月で春の陽気をたたえていた海辺は、3月ともなると初夏を感じさせる。

 大きな防波堤で次男を釣りデビューさせた。帰り際、隣の釣り人が次男に「釣れたかい?」と聞くので、「まあ釣りごっこですから」と代わりにこたえた。もっと他の答え方があったかもしれない。「経験するのが大事だよ」と釣り人は笑った。

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 海岸にはタコノマクラがたくさん落ちていた。

風も無い春の海辺に散る花を波に流せば舞う海の雪

☆ ☆ ☆

 地上の花も満開を終え、風に流れる花弁が主役になった。

山高み峰のあらしに散る花の月にあまぎるあけがたの空
         (『新古今和歌集』130 二条院讃岐)

 さすがは「沖の石の讃岐」。過剰とも思える装飾だ。

 まず花と月が一文字を置いて隣り合っている。字面だけでも派手な歌だ。     
 内容を見るとさらに派手だ。「あまぎる」は「天切る」ではなく「天霧る」。吹雪のごとく風に舞う花が、月をおぼろに霞ませている。

 「あけがたの空」のおかげで、真っ暗闇ではないことがわかる。すると月を霞ませるだけでなく、空一面にあふれだす、圧倒的量感を備えた桜吹雪をイメージすべきだろう。

山がとっても高いから
峰を吹く嵐に
散っていく花、そのあふれ出す花弁が
月を隠すようにして、空一面を霞ませる
そんな明け方の空




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