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《和歌日記》2021年1月4日

 朝。娘の熱は下がらず、息子たちは早起きせず、妻は肩を痛め、僕は1週間かけて塩漬けしたバラ肉の乾燥に失敗した。

 バラ肉について。
 自作のベーコンの旨さを仄めかすキャンプ好きの同僚に感化され、ベーコン作りに取り組んだ。年末から1週間経った昨日までバラ肉を塩漬けした。24時間乾燥させ、今日の午後に4時間燻し、直後に味見した。
 肉は煙くさかった。それ以上に、酸っぱかった。驚いた。
 煙には酸味成分があり、食材の水分に溶け込むと酸っぱくなるらしい。乾燥が不十分だとよく起こる状況だそうだ。

 500グラムほどの肉だ。元の持ち主だった豚にとっては、この部位が無くなるだけでもきっと致命的だったろう。捨てずに食べる道を探ろうと思う。 

 三ヶ日の幕が閉じた後の、パッとしない1日。それでも午前中に娘は医者にかかり病名は判明したし、3時までに息子たちは冬休みの宿題をほぼ終わらせたし、夜までには妻は肩の痛みと折り合いをつけた。きっと明日、僕のバラ肉にも、食える道を見つけられるだろう。

まこも草 つのぐみわたる 沢辺には つながぬ駒も 離れざりけり
                  (『詞花和歌集』12 俊恵法師)
旨い草が 沢辺一面 芽吹いたら ほっとかれても 馬は飯食う  

 まこも草は食われるもの。駒は食うもの。正反対の存在なのに、どちらも春を謳歌しているようだ。それぞれにあるのではなく、循環する生命のエネルギーが部分である草と駒とを躍動させるからだろう。食うことで円環は完成する。静物から世界になる。

 食い物は、食わねばならぬ。

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