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【短歌と和歌と、時々俳句】20 本気のベーコンの話と冬の落葉の歌

 朝晩には冷え込みが感じられるようになってきた。鹿児島にもようやく冬の気配が漂いはじめた。
 ところが少し日が強くなるとすぐに気温が上がる。桜が狂い咲く。蚊が血を求め彷徨う。南国の夏はしぶとい。悍ましいほどの生き汚なさすら感じる。こんなに風情のない冬は和歌には歌われまい。
 とはいえ涼しい日が多いのは事実だ。そこで久々にベーコンを自作した。

 (レシピ)
 乾塩法で豚バラ肉を塩漬けすること10日。まぶしたのは30gほどの塩と10gの黒胡椒と10gの砂糖。それから玉ねぎを半玉とローレルを2枚。
 塩漬け後に水洗いした肉を水をはった鍋に投入。塩抜きには一晩使った。
 水から上げてペーパーナプキンで水気を拭き取った。それからピチットシートでくるんで15時間ほど冷蔵庫で放置。
 夕方に肉を段ボールにセットして火のついた炭を放り込み1時間放置。さらにサクラウッドに火をつけて豚肉と炭と一緒に段ボールに封印すること4時間。夜10時半に取り出してネットに干して一晩放置して完成。

(試食と反省)
 朝に試食した。味は十分。一晩水に浸けたというのにしょっぱいほどだ。水分はやや抜けすぎたか。パサつきを感じる。ただし煙によるすっぱさやえぐみは全く無い。
 プロの作るベーコンと比べると塩味が強い。それに味とジューシーさのバランスが悪い。旨味も足りない気がする。
 今回は乾燥に時間と手間をかけすぎたのかもしれない。もともと700g以上あった肉が500g弱になるほど乾燥させたのだから。4時間の燻製中に炭も投入していたのが過剰乾燥の原因だったかもしれない。合わせて5時間ほど炭にあてていたことになるから。今後は温度計がついている燻製器を導入することも考えている。乾燥器内が80℃を超えないようにする必要があるだろう。味付けについては化学調味料を使ってみるのも手だろうか。

失敗の例は無いかと検索す勝どきだらけのクックパッドで

散り添ひて山あらはるる木の間より紅葉にかへて滝ぞ落ちくる
紅葉が散っていく それとともに
私の目の前に 山が立ち現れる
その山が見える木と木の間から
つい先日までふりそそいでいた紅葉にかわって
滝が 落ちてくる

御水尾院御集 596「落葉」

 木の間から滝が落ちてくるという異様さに惹かれて目を止めた。「落葉」題で詠まれた一首だ。少し解体してみよう。

 まず紅葉が散るということを明確に詠んでいるのは

木の葉散る宿は聞きわくことぞなき時雨する夜も時雨せぬ夜も

後拾遺和歌集・382・源頼実

あたりが古い例だ。また木の葉が散ったおかげで別の物が見えてくるという発想は

三室山木の葉散りにし朝よりあばらに見ゆる四方の玉垣

曽禰好忠『好忠集』293

 小倉山麓の里に木の葉散れば梢に晴るる月を見るかな

新古今和歌集・冬歌・603・西行法師

などは魅力的な先例だ。
 木の間から見る景色に注目する例では

冬ごもり思ひかけぬを木の間より花と見るまで雪ぞ降りける

古今集・331・紀貫之

などがある。
 見つからないのは冬の滝だ。近代では

冬滝のきけば相つぐこだまかな

飯田蛇笏

など味わい深い作品が多々ある。しかし八代集の時代の古典和歌では今の所出会えていない。冬の滝はいつから詠まれるようになったのかはまだしばらく調査が必要なようだ。

 冬に裸になった山で滝が存在感を増すのはありそうな話だ。しかしそれを落葉の距離感で言語化されるとたじろいでしまう。まるで水飛沫がかかってきそうなほどの眼前に滝が落ちてきているかのようだ。この異様な距離感は後水尾院のオリジナルなのかもしれない。





 

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