寂しい冬の歌 後拾遺和歌集 和泉式部
寂しさに 煙(けぶり)をだにも たたじとて
柴折りくぶる 冬の山里(『後拾遺和歌集』三九〇 和泉式部)
寂しい。せめて煙だけでも私の周囲から絶やすまいよ。 そう思って、
薪を折り、火にくべる。ここは、人気もない冬の山里。
月や桜を友として、山の暮らしの寂しさを紛らわすのは、まあ風流だ。そこには「こんなオレが好き」という自己陶酔か、あるいは「こんなオレを見て」という自己顕示欲すらも感じられるかもしれない。
煙だ。
目に入ると痛い煙だ。もくもくとたちのぼる煙は、汲めど尽きせぬ物思いの比喩にもなったりする。そんな煙と戯れる人を見て、誰がしみじみとした感慨や憧れの念を抱くだろう。
しかもこの煙、自給である。どこからともなく訪れる風や、気がついたら向き合っている月ではない。そこに他者性は薄い。友というより自己の一部とすべきものだろう。
心地良い隣人とは言えない。他者ですらない。そんな煙でも、いないよりましだと焚き続ける女が一人、山にいる。
架空に設定されたキャラクターの心を歌にしているのだけど、発想だけでもどこか狂気すら感じてしまう。冬の孤独の歌である。
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