詩　おふろ

　今日は
　辛いことや疲れたことが
　たくさんあって
　強く口を結びながら
　お風呂のドアを開ける

　手早く頭と身体を洗って
　さっとシャワーで泡を流し
　いつもより熱めに設定した湯船に
　ゆっくりとつかった

　口元までお湯に沈みながら
　目をつぶると
　身体がじんわりと
　温まってきた

　ろうそくみたいだ、と思う

　熱い温度に包まれた身体は
　じわじわと
　少しずつ少しずつ
　溶けていく
　硬くこわばった
　奥の方のしんまで
　ゆるゆると
　ほどけていく

　まぶたを開けると
　オレンジに灯った電気が
　目に入った
　間違えて買ってきてしまった
　オレンジ色
　でもむしろ
　この色で良かったのかもしれない

　半身を起こしながら
　大きく深呼吸して
　不意に
　今、何かのお花の香りで満たされたら
　幸せかもしれないと思う

　いい案だと
　自分で自分を褒めながら
　立ち上がる

　明日にでも
　駅の近くの雑貨屋さんで
　花の香りがする
　バスソルトでも買おうかと
　考えながら

　ふっと笑みをこぼして

　お風呂場の電気を消した