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舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~ミライへの伝言』その5 前作ゲーム化&台風襲来の章

ちょっと間があいてしまった(失敬)。
前回は、COVID-19という障害を乗り越えて脚本の初稿を書き上げた、という話をした(そんな話だったか?)。

脚本を書き上げる上で留意したのは、あくまで舞台D.C.IIIの主演は新田恵海さんであり、主役はリッカ・グリーンウッドである、ということ。
物語的には葛木家の抱える500年の呪縛をテーマにしているので、葛木姫乃ルートがベースになっているが、このお芝居は厳密にいえば「姫乃ルートの舞台化」ではなく、『D.C.III~ダ・カーポIII~』そのものの舞台化である。
姫乃はメインヒロインとして扱うが、リッカはこの物語においてはヒーローという立場に据え置くことで、そのバランスを保つことが可能になった(というか僕の中ではリッカはいつでもヒーローなんだけど)。
そして物語の「視点」である「主人公」(主演ではなくあくまで視点=観客)の清隆の存在。
かくして、舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~ミライへの伝言(仮)』の脚本は、主演:新田恵海さん、ヒロイン:佐々木未来さん、主人公:櫻井尚輝くん、という三本柱で成り立つ不思議な舞台になった、とも言える。

却説。

前作の流れを知っている方々なら、初稿脱稿後は、劇団さんの都合や、演出家さんの希望など、侃々諤々の会議を繰り返して、稽古用の台本になるであろう、ということは予想がつくと思うが、それと同時に別のお仕事がCIRCUSさんから打診された。

『D.C.III P.S.~ダ・カーポIII~プラスストーリー』キービジュアル

それが、
・『D.C.III~ダ・カーポIII~』を新たにコンシューマ化(後の『D.C.III P.S.~ダ・カーポIII~プラスストーリー』)するにあたって、前作『君と旅する時の魔法』をベースにしたプレイアブルなシナリオを作成して欲しい。
・新コンシューマ版の特典として、新たなドラマCDの脚本を書いて欲しい。
というふたつの依頼だった。

かくして、僕は新作舞台の脚本の改稿、前作舞台のゲームシナリオ化、ドラマCDの脚本の執筆、を同時にこなさなければならなくなってしまった、というわけだ。
作業量自体はそれほど多くないし、締め切りも十分に余裕があるものではあったが、メインで抱えてるお仕事をこなしつつであったので、脳内タスクが増えてしまったことは否めない。

そんな折、2022年9月、大型の台風14号が迫る中、劇団飛行船さん主催、市村啓二さん演出の『デリシャスパーティ♡プリキュア ドリームステージ♪』の静岡公演を観させていただく機会があった。

この年の静岡公演は浜松市開催(同じ静岡県でも清水と浜松は間に神奈川県がまるっと入るくらいの距離がある)だったので、家族と共に浜松駅近くのビジホに前日入りして、翌朝、浜松市浜北文化センターへ。

以前の記事でも書かせていただいたが、娘が小学校に入学する前に『スター☆トゥインクルプリキュア ドリームステージ♪』を観させていただいたのが舞台D.C.IIIとの御縁の始まりだと思っているので、脚本のリライト前に久々に市村演出に触れられること、今回は娘さんだけでなく、奥さんや息子くんとも一緒に楽しむことができたことに、感謝感謝の時間でした。

が、問題は台風であった。台風14号(ナンマドル)自体は、非常に大型ではあったものの九州から日本海側に抜けて東に進んだので、静岡県にそれほど大きな被害をもたらさなかった。
しかし、そのホンの4日後、台風15号(タラス)が静岡を直撃。まだ14号の雨から緑のダムが回復しきっていないところに、記録的な「雨台風」の15号が直撃したので、さあ大変。
清水区は、『ちびまる子ちゃん』の洪水回のモデルになった昭和49年の七夕豪雨以来の水害に。

自宅の近くの支流も決壊し、我が家も床下浸水。倉庫の中にあった大事なものたちも、泥と水にまみれてしまった。
しばらくの間、道路は乾いた汚泥とそこから発生する粉塵に包まれていたし、公園は使えなくなった粗大ごみが溢れ返っていた。僕が仕事場に行ってる間にテレビ局の取材があったみたいで、家族がワイド番組(多分、めざまし8か何か)に出てたらしいし、その後、しばらくは大変な期間が続くことになった。

舞台とは直接関係ない出来事ではあるが、そんな時期の中、頑張ってたんだよ、と一応、報告だけはさせて欲しい(支援物資を送ってくださった皆様、本当にありがとうございました)。

閑話休題。

『君と旅する時の魔法』をゲーム用のプレイアブルなシナリオにする作業だが、もちろん「はい、できました」と簡単にできるわけではない。
舞台でひとつだった台詞が、1ワードにおさまることはまずないし、動きやテンポ、表情などで理解してもらえる部分も補足しなければ伝わらない。
舞台だと無駄な解説を入れない方が勢いで進むシーンもあるが、ゲームだと省略している部分のせいで矛盾があるように見えてしまうため、そうはいかない。
逆に言えば、舞台では冗長になってしまい泣く泣くカットした掛け合いなどは復活させることができる。

そんなわけで、方針としては「初稿から第二稿になる段階で、演出さんや劇団さんの意見を受け、構成を入れ替えた部分を元に戻す」「稽古初稿から稽古中にコンパクトになった掛け合い台詞を戻す」「実際に芝居で良かった部分はフィードバックする」「舞台で勢い任せで解説を省略していた部分を補足する」などの細かな変更を加え、完成したのがゲーム版「君と旅する時の魔法」のシナリオだ。
ゲームでは全ヒロイン~Da Capoシナリオをオールクリアした後に、メニューに「STAGE EPISODE」という項目が増えているので、そこを選択してもらえれば遊ぶことが可能だ。
このためにたにはらなつき先生、鷹乃ゆき先生らがイベント画を起こしてくれたので、プレイできる環境をお持ちの方は、舞台版との違いを楽しみつつ、プレイしてみて欲しい。
リッカ、姫乃、シャルルは舞台と同じキャスティングだが、それ以外のゲームのオリジナルキャストが舞台の内容を演じてくれている、ということもセールスポイントのひとつかも知れない。桜咲千依さん、又吉愛さん、岸尾だいすけさん、下野紘さん、あおきさやかさん、水島大宙さん、種崎敦美さんたちによる「君と旅する時の魔法」を是非、楽しんで欲しい。

もうひとつは、『D.C.III P.S.~ダ・カーポIII~プラスストーリー』完全生産限定版の特典として封入されるドラマCD用の脚本だ。
これに関しては、あくまで新CS版のドラマCDなので、必ずしも「君と旅する時の魔法」に関係しなければいけない、ということはないのだが、いろいろ考えた結果、演者さんたちからも散々擦られた「今日のところは部屋に帰れよ」と言われてしまった姫乃を主人公にして、風見鶏の女子寮を巡る話にすることにした。言ってみれば舞台の外伝だ。
実を言えば、今まで出たドラマCDは都合上すべて初音島編を舞台にしていたので、風見鶏編を描いたドラマCD自体が初だった気がする。そういう意味でも、初音島の姫乃が風見鶏を紹介するような内容になっている筈だ。
舞台版とゲーム版で若干、風見鶏編の導入部分に差異(姫乃が教室で目覚めるか、寮で目覚めるか)があるものの、どちらの外伝としても解釈できるように構成してみた次第。
あと、ちょっとした遊びだが、ドラマCDの冒頭のモノローグで姫乃に、

姫乃「これは過去? それとも夢? 本当のわたしは眠ってるの? 夢じゃないなら、帰ることはできるの? かすかに残された希望を頼りに、わたしはひたすら歩いたのだった」

君と旅する時の魔法外伝 姫乃の「王立ロンドン魔法学園女子寮探訪」台本より抜粋

と言わせている。台詞の中に、音夢、由夢、二乃、可子の名が入っているので、是非、聴いて確認してみて欲しい。

そんなわけで、秋以降、僕は台風被害に四苦八苦しながらも、「ミライへの伝言」の脚本の改稿を重ねつつ、コンシューマ版追加シナリオとドラマCDの脚本を完成させたのだった……。

次回は、改稿に関する内容を書く予定。
ゆっくり待っていて欲しい。


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