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妻の「おいしい」が聞きたくて、僕は今日もキムチ焼きそばを作る

突然だが僕の妻は料理が上手い。

なんでも感覚的にこなす妻は、
料理もなんとなくで大抵こなしてみせる。

鯛と昆布を買ってきて昆布締めを作ったときは、
どんだけ食べたくても自分で作ろうって発想にはならんなあと驚いた。
(しっかり美味しかったことにも驚いた)

ごま豆乳鍋が食べたいなあと言ったときも
でかい無調整豆乳を買ってきて作り始めたからそれも驚いた。
(市販の鍋の素よりも美味しかったからまた驚いた)

では僕はと言うと、
THE 普通 
だと思う。

冷蔵庫にある残り物で適当に作るくらいのスキルはあるが
感動的な美味しさを提供できるわけではなく、
まあ普通に美味しいね、くらいの料理を作る。

妻には
「おいしい?」
と聞くと
「おいしい」
と返ってくるが、聞かない限りは特にリアクションも無い

夫婦ともに働いているので、ご飯は早く帰ってきた方が作ることになっていて、まあリアクションがそんなに無くても全然構わない。

けど、僕は妻の料理を食べると
「おいしい」
と素直に出てしまうので、悔しいなあと思っていた。

そんなある日、
突然キムチ焼きそばが作りたくなった
コチュジャンを使ってみたくなったのだ。

僕はあまり考えず、自分が美味しいと思うキムチ焼きそばを作って妻の帰りを待った。

帰ってきた妻は僕の作ったキムチ焼きそばを食べ、一言

おいしい

と言った。


妻からしたら普通に感想を言っただけだと思う。
ただ妻は、自分の「おいしい」という言葉に
どれほどの力があるのかをわかってない

と言うか、僕自身わかってなかった。
妻から自発的に出る「おいしい」にあんな魔力があるなんて
あんなに嬉しいなんて思わなかった。

それから僕の得意料理はキムチ焼きそばになった。

合わせて、果てしない探求の旅が始まった。

どの豚肉がより美味しいんだ?
どのキムチがより美味しいんだ?
どの麺が?どのコチュジャンが?
コチュジャンの量は?
酒の量は?砂糖の量は?醤油の量は?

一体どの組み合わせが最も美味しいんだ?

こだわりだしたらキリが無い。

1つの料理を作るのにこんなに無限の可能性があるなんて。

あまり何度もキムチ焼きそばを作ってしまっては
妻に飽きられてしまう。

キムチ焼きそばを作るチャンスは少ない。

自分1人の時に作っても良いが、
あくまで僕の尺度は妻の「おいしい」なので、
自分が美味しいだけでは意味が無い。


そうやって何度もチャンスを見計らってはキムチ焼きそばを作り続けていると、

楽しいなあ

と思っている自分に出会った。

独り暮らしが長かったので料理は嫌いじゃないが、
これまではお世辞にも楽しいことではなく、作業みたいな物だった。

だけどキムチ焼きそばを作ってる時は楽しい。
スーパーで豚肉を選んでいる時ですら楽しい。

妻の「おいしい」がまた聞けると思うと顔がほころぶ。

誰かのために作る料理は楽しいなあ。


あれから試行錯誤を繰り返し、
コチュジャンの正解は見つけることができた。

あとはキムチと麺と豚肉と醤油と砂糖と……

…まだまだ先は長そうだな。
もしかしたら一生続くのかもしれない。

けど一生かけて楽しめるならそれはそれで悪くないか。

今日の組み合わせはまた「おいしい」って言ってもらえるかな?
そろそろ作っても大丈夫かな?

妻の顔を浮かべながら今日も僕はキムチ焼きそばを作る。


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