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ただいま、と言いたくなる場所「馬路村」

みなさんは高知県にある馬路村をご存知だろうか。

高知市から車で1時間40分程山に向かって走るとつく。
車で2時間弱かかる時点で車で行く場所なのか怪しく思えてくるかもしれないが、馬路村に向かう鉄道は無い。
それどころか馬路村に行ってしまえば、コンビニもスーパーも信号機も無いのだ。

元々は林業の盛んな地域だったが、いつまでも林業だけでは無理が出てくる。馬路村は選択を迫られた。
そんな中、馬路村が選んだ道は「ゆずの村」
ゆずの生産を軸に村おこしを始め、実は今色々なところで僕たちは馬路村のゆずを目にすることが多い。

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これは「ごっくん馬路村」というゆずジュース。
爽やかなゆずの味にはちみつの甘さが調和してとても美味しい馬路村の代表的な商品である。
美味しい。

さて、馬路村には特別村民制度というものがある。

「特別村民制度」は、平成15年(2003年)にはじまりました。
現在では、村の人口をはるかに超える約11,000人のファンが
全国から応援してくれています。
特別村民に登録すると専用の特別村民証が発行され、
年に1回お便りが届いたり、うまじ村に来た際は村長とごっくんが飲める等の特典があります。
住民税などは一切かかりませんので、ご安心ください。

              馬路村HPより

僕はこの説明を最初読んで、馬路村という場所が行ったことも無いのに大好きになった。
はっきり言って意味がわからない特典だけど、11000人以上とごっくんを飲む村長のお腹が心配になった。

今はコロナ禍の影響で一緒には飲めないみたいだけど…

まあなんにせよ、馬路村という場所の朗らかさというかそういう物が垣間見える制度だと思う。

そして僕は馬路村へ憧れるようになり、数年前についに行った。

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ごっくんのラベルも村のHPも全てこの独特なイラストと字体で統一されてる。
高知の田舎ながら、ブランドイメージをしっかり持って村おこしをしてるあたり侮れない。

レンタサイクルがあると調べていたのでレンタサイクルで村を走ってみた。

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ギーギー言う不安なチャリで村をフラついてみる。
信号もないのでゆったりとした時間が流れていた。
この自転車にGoproをつけて走ったんだけど、特別良い画が撮れたわけではなかった。
基本豊かな自然と自転車のギーギー音だけ。
でもそこに入る僕の声は興奮していた。
何が凄いのかわからんが すげー! 気持ちいいー! と風切音の中で聴こえるテンションの上がる声。
「何も無い」がある場所だなと思った。
30分もかからず村は回れた。

そして村役場に到着。
生憎僕が行ったのは土日だったので、村長はおらず職員さんが1人パソコンとにらめっこしていた。

あーこりゃ流石に休みの日は無理かーと思っていると、
「特別村民の方ですか?」と聞かれる。
人口が限られてるから村民かどうかは一目でわかるんだろうなと思いつつ特別村民証を見せると、
「残念ながら今日は村長が不在ですが、僕で良ければ」と職員さんが村長室に案内してくれた。

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数年前に行ったときの様子。
村長さんは変わっていないだろうか。

改めて思えば自治体の首長室に職員が案内し、写真も撮らせてくれるってとんでもないことな気がするな。

一通り村長室の様子を見ていると、
職員さんがごっくん馬路村を持ってきてくれた。

僕の記憶が正しければ2本持ってきたと思う。
職員さんも飲んでいたはず。
村長とじゃなくても、一緒にごっくんを飲むってところを大事にしてたのかなあ。

職員さんと馬路村のことや僕がどこから来たかなどを話す。僕は馬路村の魚梁瀬杉を使った商品に興味があったが結構高価だったので、お金を下ろせる場所は無いかと尋ねると、「あー平日なら郵便局で下ろせるんですけど…土日で下ろせる場所は無いですねえ」と言われた。
これもかなりカルチャーショックを受けた。

そして最後は写真撮影。

きっとさっきの写真の奥にあるボードに僕も追加されたんだと思う。

その後は昔切り倒した木を運搬するためのインクラインという乗り物?に乗って、頂上で運転手のおっちゃんに写真を撮ってもらったり、村を流れる安田川に入ってみたり一人の時間を満喫した。

日々仕事に終われ、常に時間を気にしていたような気がするが、馬路村にいる間は時間が気にならなかった。
そこにはただ余所者を受け容れる寛容な空気とゆっくりとした時間が流れていた。


僕は帰ってすぐふるさと寄附の手続きをした。
選んだのは魚梁瀬杉を使ったシャチハタと食品。
行く前からファンだった僕は、行ってさらにファンになった。

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行こうとすると途方も無い距離に感じられるけど、
いつかまた必ず訪れよう。

その時は僕は心から ただいま と言える。
きっと馬路村は、前と変わらず当たり前のように僕を村の一部のように受け入れてくれるはずだ。


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