9歳になった娘と創作のこと

9歳の娘はイラストを描くことが好きで、毎日メキメキと上達している。

手持ちの鉛筆とコピー用紙では飽き足らず、神保町の画材屋さんに行って、鉛筆やGペン、スケッチブックを買った。それらをダイニングテーブルに広げ始めたら、本人の納得がいくまで終わらない。

我が家では、子どもは本を無制限で買っていい決まりにしている。その決まりを活かして、娘は「イラストの描き方」「手の表現」「アニメができるまで」といった本を何冊か手に入れた。そこで基本だけを押さえたら、あとはYouTube、TikTok、Instagram、Pinterestなどでしっくりくるやり方を適当に調べて、ひたすら実践する。

年末のコミケにもはじめて行った。私も付き添いで行った。そこでも好きなイラストを見つけて、作者さんから直接買う経験をした。娘の目はキラキラと輝いていた。ハンドメイド作品のコーナーでも買い物をした。娘はレジンが好きで、私もキーホルダーをつくってもらった。創作物がとにかく好きだ。

私は、娘のクリエイティブに1日30分以上は付き合うと決まっている。教えられることは何もない。ただ、ツールの使い方を一緒に調べたり、聞かれたときに「ここがかわいいと思う」と答えたりしているだけ。私は仕事があったり、1歳の弟がいて細やかなケアを求められたりするが、娘とのこの時間だけは娘専用になる。

娘はいま、自分専用の大きなiPadを持っている。すぐに娘の相棒になった。iPadでは、レイヤーを巧みに使いこなして、イラストの特訓をしている。車の中でもiPadで絵を描く。学校に行く準備が5分早く終わったら、その5分でももちろん絵を描く。「ご飯だよ」と呼ばれて、テーブルに座って食事が来るまでの30秒間でも絵を描く。

娘の生活は絵を描くことで埋め尽くされていく。私も一応文章を作ることを仕事にしているが、「創作ってそうだよな」と娘は私に思い出させてくれる。目の描き方の研究だけで、娘はどれだけたくさんの絵を描いているのだろうか。一度やり始めたらとにかく没頭する。

それから映画が大好きだ。金曜ロードショーは毎週欠かさず観ている。我が家では、金曜日だけは夜ふかしを許されている。聞いてみると、「自分で選んだ作品じゃないからいい」ということのようだ。娘はYouTubeショートやTikTokも人並みには見ているけれど、長い映画を観続けるのが苦手になっていない。配信でも、飛ばしたりしないで食い入るように観ている。よほど好きなのだろう。

『すずめの戸締まり』を好きになったら、新海誠監督の過去作を配信でまず全部観る。サッカーが好きな僕が「一緒に観よう」と誘った『アオアシ』は、4話まで一緒に観たが、数日経って気づいたら娘だけが遠く先まで進んでいた。

基本的にはアニメが好きだが、母親が観ている韓流ドラマも観るし、1歳の弟が観ている幼児番組も観る。とにかく映像作品が何でも好きだ。

小説を読むのも好きだ。小説は、作者で選ぶか、装幀と装画で選ぶことが多い。だいたい目次の次ページあたりに装幀と装画の担当者が書いてあることを知っているので、それを確認してググって、好きなイラストレーターさんが蓄積されていく。

思えば、娘は小さい頃から絵本が好きだった。「パパ読んで」が終わらなくて大変だったことを思い出す。

絵を描き続けていたら、娘は絵にセリフや音楽を載せたくなってきた。そして動画編集ソフトを触り始めた。いまどきのソフトはUIが簡単なこともあって、1人ですぐに使い方を覚えていく。娘は声優さんも好きだ。これから、娘のアニメ作品が作られていくのだろうか。楽しみだ。

音を載せ始めたら、音楽を作りたくなった。相棒のiPadで、音楽制作ソフトも触り始めた。もとより、好きなJ-POPの曲を「曲名 弾き方」とYouTubeで調べ、ピアノ(物理)で練習するのも好きだ。ドラムやベースも

だから娘は忙しい。絵を描きたいし、映像を作りたいし、音楽を作りたいし、友達と遊びたい。
好きなアニメの最新話が更新されたら観なければならない。金曜ロードショーの時間だけは、必ずテレビの前にいなければらない。家族と出かけて遊ぶのも、いまはまだ好きだ。近くに住むいとことも遊ばなければ。

でも、まだ9歳。これからの人生で、果てしない量の絵を描くこともできるし、映像も作れるし、音楽も作れる。ほかの何かに興味が移ることもあるだろうし、それはそれで、いまの経験も糧になるだろう。

あなたは 何処でも行ける
あなたは 何にでもなれる

星野源『Family Song』

心からそう思う。

過度に期待せず、本人を信じて、後ろから支えていきたい。というか、黙っていれば勝手に作り続けていくのだから、邪魔をしない存在でありたい。

そして、自分も娘から刺激をもらって、創作によりいっそう励んでいきたい。


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