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アルバム音源制作、終盤を迎えて。

今日は少し、自分自身に向けた言葉で書かせてもらいますね。


思えば、

4月の中頃に急に思い立って始めたアルバム制作。計画が思い通りにいかない。ライブができない。せっかく一歩踏み出そうとしていたのに、その出鼻をコロナによって挫かれたのが、すべての始まりだった。

2020年はきっと、僕らに限らず多くの人にとっての予想外で、僕らの業界にも、音楽家の人口自体が大きく減ってしまう可能性があるほどの、未曾有の危機だったと感じる。

僕は何とか、今までの仕事の蓄えで生計は成り立っている。けれど、今もまだ先は見えていない。仕事は、市場は、復活するのか?新たに形を変容させていくのだとしたら、そんな流れの中で僕は何ができるだろう?今もまだ、答えは出せないまま、降ってきたことを形にすべく、止まらずにはいる。


アルバム制作を始めてから、色々あった。

今だから、思う。

デモが10曲出揃った時は、
もっと一瞬でアルバムが完成すると思っていた。

 − 僕が2~3年前、当時の持てる技術、情熱、資金の全てを注いで作り込んだ前作「BRAINSTORM」。

このアルバムを作った時は、原盤主(レコード制作に出資している人)は僕だけで、まともなオリジナル音源制作も初めてだらけだった。

本当に、制作している最中も、そしてリリースしてから「秒の間」「Brainstorm」の2曲が、当時ゼロベースでスタートした状態でSpotifyバイラルチャートで1、2位になるまでの間、本当に心身、金銭的にも苦労した。


今回は、内山肇さんとの原盤折半での制作。
当時より技術も向上し、機材も充実している。
内政も多く、2人で協力し合えるし、もっと気が楽に進むはず!

4月の終わりに、高らかにこのnoteを書いた時は、そう信じ切っていた。


でも、そんなに甘くはなかった。特に、僕にとっては。

きっとこれは、このアルバムを作り進める上で、
越えなくちゃいけない壁だ。

そう思えることが、山ほどあった。この話は、結構長くなるので、皆に共有するのはいつかの機会にとっておこうと思う。

1つはっきり言えるのは、シングルのように、1曲完成したらすぐにリリース作業に入れるわけではないということ。そして、今までリリースしてきて、アルバムに入れる楽曲に対しても、連なって聴き続けて検証していくと直したくなってしまう、ということが続いた。本当に、続いた。

作っても作っても、自分も、肇さんも、聴き続けていくとどんどん、もっとよくできる。と思えてしまう。まして今回は、ミキシングを外注せず、僕が全ての音像バランスを操っている。直そうと思えば、マスタリングの2時間前まで、やろうと思えばできてしまう状況。

30年以上、信じられないような世界的大スターたちとも仕事をしてきて、超一流のエンジニアとは何ぞやを知り尽くしている肇さんが、12年ぶりに自身の名前を冠して共作したアルバム。

そのサウンドメイクを、他でもない僕に託してくれた。それはいい意味で、僕らの関係性上プレッシャーには感じなかったけれど、要求されることは今思えば結構、いや、かなりシビアだった 笑 

今はもう笑えるくらいに気持ちが回復したけれど、一時期は、

「何で俺ばっかりこんなに作業しなくちゃいけないんだ!」

と、正直、思っていた。博報堂での営業経験があることも重なって、どうしても僕がすべての連絡窓口に。そもそも自分が往々にしてそれを望んでいる部分も多々ある。肇さんがその座を譲ってくれていることも分かっている。

でも、曲のことを10曲同時に根詰めて考え、作業もしながら、リリース文言どうする?プロモーション施策の詳細、楽曲リリースごとの5,000字を超えるnoteでのライナーノーツを考えるなどなど、作業自体はできても、気持ちが追いつかなかった。日々のクライアント仕事で手を抜くことは勿論ないけれど、こと自分たちの作品となれば、1つの作業にのし掛かるメンタル負荷は倍増どころではない。そういう意味で、しんどい5月を過ごした。


分かっていても迫りくる、数字の評価と他人との比較。

リリース自体は、今年に入って昨年の比にならないほど多作だと思う。既に発表している楽曲だけで、僕のアーティストクレジットが入っている楽曲は、2020年6月19日現在、10曲。我ながら、沢山作っている。

その割に、正直、今年の作品たちの多くは、僕の完成度への満足度合いに対して、再生状況が比例していない。2019年の楽曲たちとの比較をどうしてもしてしまうからだろう。

理由は明確だ。
僕の2019年の音楽活動の主は、プレイリストを攻めたことだったからだ。

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自力で、特にSpotifyに関しては自分自身で楽曲をアピールできる場を設けられている。そこ一点に集中して楽曲をリリースしたから、「Right」が130万回、「Cactus」が50万回、「Jasmine」「秒の間」が20万回を超える再生につながっている。

昨年の夏に書いたnote。この頃、プレイリストを攻める、という方針に、僕は限界を感じ始めていた。このままでは、楽曲を入れてもらえても、そこをきっかけにプレイリストを横断したり、SpotifyだけでなくAppleやLINE、YouTube Music、AWAなどでの展開を期待するのは難しいと感じ始めた。


つまりは、ファンの方々との交流経路がなかった。

僕が自身の音楽活動に悩んでいた頃、元Spotifyの松島さんがお話されるセミナーを聞きに行ける機会があった。

僕は現在、ことあるごとに、松島さんがおっしゃっている

①知ってもらう → 知ってもらうために何をするのか
②広げてもらう → ファンに広げてもらうために何をするのか
③愛してもらう → 毎日聞いてもらうために何をするのか

(松島さんのnoteより引用)

と言うワードを思い返すようにしている。今の自分は、まだ①を少しだけ果たせている程度の段階なのだ。

音楽を一生懸命作る。これに関しては、ちゃんと日進月歩でより良いクオリティに向かって進んでいる自信がある。ただ、アーティスト活動となると、それだけではそもそも必要要素を満たしていないと今は感じている。

僕は基本的には
表方と裏方の間にいる音楽プロデューサーのつもりなので、
そこの線引きは結構、難しいのだけれど。

楽曲を聴いてもらいたい、と言う気持ちは強いし、そのための努力は、正直現代のSNSを駆使する優秀なアーティストの皆さんに比べたら、まだまだできていないように感じる。僕には、僕なりのやり方があるはず。それを見つけることが今はとても大事だ。


その点noteは心の拠り所で、僕が日々感じることをすごく事細かく、誤解なく伝えることができる場。自分が発信した内容に対して、SNSでのシェアを見るたびに嬉しい気持ちになります。いつも、本当にありがとう。


意味もなく、他人と自分を比較してしまうこともあった。

アーティストとは皆、自身が社会とどう対峙するかを、日々ものすごく高い次元で見定めた上で生きていると思う。移り変わる世界の情勢、自身の精神の起伏、作品や自身の人格を通じた世の中との繋がりかた。それを若い頃から、あるいは若くして毎日考え続けている人とそうでない人とでは、言葉一つの重みやメッセージの強さが違う。

コロナの最中に僕が一番感じたのはそれだった。単純に、「皆、すごいな」って思ってしまった。その「すごいな」の中に、「自分はダメだな」という比較感情が混じっていた。自分の心の水準器が、少し狂ってしまっていた。


別に、自分は自分でいいのにね。


今こうして冷静になると、世の中で何が起ころうと、それに対して文句を言ったり、自分が解決できないことを意見するのは、僕の流儀にそぐわない。昨今の、アーティストがそれぞれの立場で政治や情勢に対する発言をしなければいけない、という扇動を行うような姿勢を強く感じて、「窮屈だな。めんどくさ。」って実は感じている。

僕らは希望を歌い奏でて繋いでいくのが音楽家としての使命だと心の底から感じている。だから、今は黙ってアルバムを作ることに集中しよう。ベテランらしく心どっしりに居続ける肇さんとは対照的に、僕はその信念を貫き通すことに、特にこの2ヶ月間、本当に必死だった。


答えは、音楽を作る過程の中にある

音楽を作ることは、僕にとって余暇を過ごすための趣味に近い感覚が本来的には備わっている。仕事にしているけれど、自分的に「いい曲」ができる時は、基本的には苦しいという感情を超えられる。

再生していて、弾いていて、ただただ喜びが溢れてくる。音のシャワーを浴びながら、「自分って天才だ」と束の間でも思い込める。本当に芯を食った音楽が作れた時は、気がつけばスピーカーの前で、あるいはヘッドフォンで爆音で自分たちの曲を聴きながら、その場で踊っている。


僕にとっての僕の音楽は、
作った自分自身がその曲に救われる存在だ。

狙って作ったものに対して、狙った部分に関して評価をしてもらえることは、職人として、プロとして嬉しい。でも実は、それだけじゃ僕は満足できない。一番嬉しいのは、僕自身が心踊った瞬間と、聴いてくれた他の誰かのそれがピタリと重なった時。

きれいごとなんかではなく、本当に、100万再生の積み上がった数字より、1人の顔も名前も知らない人からかけてもらえた、楽曲への賛辞が、今の僕には嬉しい。そうなの!そこなの、一番こだわったのは!そう思えるところを共有できたり、そうでなくても、その人の人生に何か一つ、希望の光を見いだせてもらえるだけで充分なんだ。

それを実感できると、制作していくうちに頭が硬くなってしんどくなりがちなタイミングも、「もう一踏ん張り頑張ろう」って心から思える。そうか、本来アーティストってきっと、それを糧に生きているんだ。そう思うと、アーティストって素敵だなとより心に深く実感できる。一度、この世界に足を踏み入れたのだもの。もっと、深くこの世界に関わってみたいと思う。


冒険の、まだ見ぬ世界への、地図。

先んじて完成しているアルバムアートワークは、それ単体で美術作品として非常に力のあるものになった。それはまるで、まだ見ぬ世界を目指すための地図のよう。早く見せたいけれど、そのストーリーもあるから、改めて。

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僕は今、仲間たちが音、絵、そして映像で繋いだバトンを受け取って、全曲聴いてのミックス調整、そしてマスタリングに向かう最終段階へと向かっている。僕らの音楽はミックスからマスタリングの段階で、毎回ありえないくらい音楽が進化しているから、まだ楽曲それぞれの真価は見えてこない。きっと、全曲が最高の形でマスターされて初めて、見えてくる景色がある。

今回も、作りたい音楽を作りきるために、妥協は全くしていない。アルバムのために楽器を新たに手に入れて、ミックスのクオリティを上げるためにアウトボードも拡充した。全ては、僕たち自身が音楽を作っていて「最高だ」と感じたいから。そんな音楽を、丁寧に届けたいと思うから。

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1ヶ月以上制作スケジュールが押している、アルバム「Voyager」。ようやく、もうすぐ音源完成です。リリースはおそらく、8月半ばから末にかけてでしょう。遅れた分、確実に作品力は増しました。シングルカット曲がもう2曲あります。まずは、そちらをお楽しみに!


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