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今こそ、アナログシンセを使おう。

こんにちは、作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎です。Spotifyを中心に、自らの作品をストリーミング配信しながら、CMなどの映像作品に音楽を提供しています。

僕の詳しいことは以下から是非。


さて、僕の投稿において実はめちゃくちゃ読んでもらえている記事がこれ。note編集部のオススメに入っていないのに、2年前に書いたものが未だにとても読まれています。

この時に機材のことをいろいろ書きましたが、フォロワーも増えてきた今、僕の楽器も大きく拡張されたので、今回は僕の音楽の太い柱となっているアナログシンセサイザーについて書こうと思います。


そもそも、アナログシンセサイザーとは?

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こちら後述しますが、僕が夢にまで見た80年代を代表するローランド社のアナログシンセサイザー、Jupiter-8。ここ数年で価格が大きく高騰した上に、もはやヴィンテージシンセショップでも滅多にお目にかかれない代物に。縁あって、先日僕の手元にやってきてくれました。

そう、これがシンセサイザー。鍵盤がついているからピアノの一種と誤解されがちですが、鍵盤はこの楽器の主ではなく、上についているツマミやノブがこの楽器の大きな特徴です。Synthesizeとは英語で「合成する」の意味。いろんな種類のシンセがありますが、アナログシンセと呼ばれる楽器は音を電気信号として創出し、波形同士を合成、加工することで発音する、というシンプルな仕組みです。

この、複雑怪奇そうに並んでいるツマミの群が、シンセの証。シンセサイザーは鍵盤が並んでいるものの、電気を合成して発音できる音数は多くの場合「1桁」音数(1, 2, 4, 5, 6, 8とか。多いのは16)に制限されていて、1音の表情を豊かな表現力で変化させていく、という側面でいうと管弦楽器(トランペット、ヴァイオリンなど)に属性が近いと僕は思います。

上記の動画はシンセの名門Moog社が誇る金字塔、Moog IIIc(形状から、通称「タンス」)一度に沢山の音を生成でき、発売当初は数千万〜数億円とも言われました。Moog社の発展により、当初は技術者の興味の対象でしかなかったシンセサイザーは、70年代初頭あたりからミュージシャンの手に普及しだし、80年代にその存在を一気にメインストリームまで拡げました。

なお、深く興味のある方は是非、「I Dream Of Wires」というドキュメンタリーをご覧ください。シンセの歴史がものすごく深く理解できます。

シンセサイザーには電子回路を用いて発音するアナログシンセと、各メーカー独自のコンピュータープログラム(僕は説明できませんが)で発音するデジタルシンセ、デジタルの応用でアナログサウンドを模倣しコンパクト化したアナログモデリングの3つが大きく存在します。

こちらの記事は割とわかりやすい。

僕はアナログ・デジタルを合わせて22台の鍵盤楽器を使っています。それぞれに異なる音楽的特徴があるため、今後もおそらくその数は増えていくことでしょう。今回は特にアナログシンセの魅力について、僕が所有している機材を中心に、実際の楽曲のどの音、という視点で書いていこうと思います。

なお、せっかくタイトルに「使おう」と書いているので、僕が持っている希少なシンセだけでなく、今「買い」な実機に関しても書きたいなと思います。僕が使っているアナログシンセは、今となっては比較的高価なものが多い(ここ1、2年で価格が爆上がりしています)ので、そうじゃないものでオススメなものも紹介したいと思います。


アナログシンセの魅力①豊かな低域

特に近年急速に発達しているソフト音源のシンセサイザーと比較すると、アナログシンセは全体的に「極めて倍音成分が豊か」です。こればかりは鳴らしてもらわないと比較のしようがありませんが、特に昨今、ジャンルの壁を超えて音楽的なテーマになっている「超低域=ローエンド」付近の力強さはアナログシンセの右に出るものはいません。

僕の楽曲でいうと、先日リリースしてnote編集部でも話題にしていただいている「Not Found 404」がいい例かと思います。

余談ですがAppleだけQRコードを拒否されてアートワークが違うんです。

この曲のトラックにおける最大のポイントはキックとベース。キックは、Sequentialが誇る現代の無敵リズムマシン「TEMPEST」にNative Instrumentsの「Battery」に入っているRoland TR-808(通称ヤオヤ)のサンプル、ベースも同じくSequential Circuits(昔の名称)が誇る歴史的名機「Prophet-5」の超低音パッドです。

TEMPESTはシンセ界隈の神の一人、Prophetシリーズの生みの親であるDave Smith氏と、80年代にマイケル・ジャクソン「Thriller」など数多の名曲のドラムを彩った「Linn Drum」の生みの親であるRoger Linn氏の2人が共同開発した夢のドラムマシンです。

アナログサウンドのドラムマシンは現行機種でも多々ありますが、僕はTEMPESTの持つふくよかなキックの低域、パンチがありながら痛くない、スネアの中低域感、そしてシンセサイザーとして優秀なノブが気に入って使っています。同じく僕の中でのヒット作「Cactus」など、ドラムマシンを用いた曲のリズムは基本的にこのTEMPESTで作っています。

Cactus、Spotifyで50万再生を突破!ありがとうございます。

そして、上記2曲ともに、ベースを任せたのがこのProohet-5!80年代を代表する、名アナログシンセサイザーです。

僕も大好き、Doctor MIXのYouTubeチャンネル。まぁ、なんと生き生きとした色気と気品溢れるサウンドでしょう。Proohet-5の大きな特徴は、超リッチな1音を5発同時に出せること。そして、音色変化の要である、キレの鋭いフィルターです。低域から高域にツマミをひねった瞬間の強靭な鋭さ、ファンキーさを極めるレゾナンス。もう、どこを切り取っても最高です。

1音が活きがよく、ブリッとしているため、低域をベースとして使ったら一気にグルーヴがトラックに宿ります。楽曲のボトムをアナログシンセで支えることで、音楽全体が非常にどっしりとして、自信にあふれる構えにできます。これは、間違いなくソフトシンセでは叶いません。ソフトシンセの低域では出ない「壁」のようなものを軽々と超えていくような、ズシンと音像を下に深堀りするような音がします。

なお、この2台は比較的高価なので僕が気になる他の実機も。

①Electron Analog Rytm MKII

北欧が生んだ名機です。MKIIになって、そのレンジたっぷりなアナログサウンドに加え、サンプルをアナログに重ねることができるようになったそうです。いい音だな。欲しい(笑)


Moog Grand Mother

このシンセ、マジでバケモンです。10万円でこんなにも荒々しいサウンドが手に入るなんて。スプリングリバーブも付いている、超優れもの。セミナーでも僕は真っ先にこれは買ったほうがいいと話しています。いわゆる、アナログシンセ特有の「電流の音」がしっかりします。機構もシンプルなので、シンセサイザーの基礎を学ぶにも適しています。

僕が保持していないの理由は、同じくMoog社の2000年代フラッグシップモデル、Minimoog Voyagerを使っているから。僕にとって不動の地位を築いている、大好きなモノフォニック(単音型)シンセ。モノフォニックのベース担当は、僕にとってはこのボイジャーです。

Nine Inch Nailsのトレント・レズナーによるボイジャーレビュー(他の機材のことも話していますが)


アナログシンセの魅力②1音色で全てが埋まる倍音

2010年代後半のEDMブームの頃よりも更に、音数が少ないのにパワフルに感じるサウンドがもてはやされる現代のミュージックシーン。僕はアナログシンセを使い始めて以来、DTM上で使用するトラック数が激減しました。

理由は、1つの音色で豊かな隙間を保ちながら、低域、中域、そして伸びの良い高域から超高域までを、シンセが完璧に埋めてくれるからです。なお、高域〜超高域(10kHz以上)は場合によっては、実機のデジタルシンセが非常に良い作用を発揮しますが今回はややこしいので割愛します。

僕の所持する大好きなシンセを3台並べた写真をご覧ください。

左側のシンセが、つい先日ご縁あって手に入れたローランドが誇る80年代の至宝アナログシンセ、Jupiter-8。右側下段が先ほど紹介したProphet-5。そして右側中段は、ローランドのヒット楽器でありJupiter-8より若干後発のアナログシンセ、Juno-106です。全て、複数音出せる「ポリフォニック」型のシンセサイザーたちです。

Jupiter-8といえば、僕が感銘を受けたこの動画をご覧ください。

そして、これ!

先ほどと同じくDoctor MIXの動画ですが、マイケルの名曲「Thriller」を完コピしています。もう、Jupiter-8の使い方が秀逸すぎる。実際に自分で弾いてみて、まさにこの煌びやかでファットなサウンドがして、気絶寸前。Minimoogのふくよかでワイルドなベース、先ほど紹介したLinn Drum特有の、太いキックとスネアのサウンドも最高です。リンドラム欲しい・・・

はっきり言って、この楽器が1台あれば、余計なサウンドを間に挟む必要、全くなし!Prophet-5やMinimoog Voyager、TEMPESTで低域を補ってあげるだけで、帯域全域が埋まります。(個人的にはローエンドは他の楽器で。)Jupiter-8はもはや、ヴィンテージシンセショップでも個体そのものを見かけることが減ってきています。今後僕の曲でがっつり使うのでお楽しみに。


同じく、僕が心から愛するローランドのやんちゃ姫、Juno-106。

Jupiter-8と人気を二分する、Juno-106。後発かつ、Jupiterシリーズより廉価で販売されたことで、普及機として多くのミュージシャンに現在もなお愛されています。しかし!安いからといって、音も安いわけではない。どちらかというと、シンプルながら普遍的にオシャレな音、と言う印象。Jupiter=8が王様のサウンドだとしたら、Juno-106は「ストリートの姫」です。(JupiterもJunoも、ギリシャ神話の神様の名前が由来)

僕の楽曲でJunoが光る曲といえば、「Ginger」の冒頭のリフ、そして「Hello」のリフ、パッドです。

とにかくJuno-106は、直感的な操作で音作りができて、プリセットにもムードがあります。何と言っても極上なのは内臓の「コーラス」!一気に80sムードが楽曲全体に漂い、そしてそれは現代もなお、非常にファッショナブルなサウンドとして映ります。

Junoは106が発売される前に、6と60という名機が存在します。60を使っている僕の大好きなアーティスト、CHVRCHESの動画もご紹介。そう、ご存知、テラスハウスです。

最高です。生音のJunoは、その活力が素晴らしい。こちらもJupiter-8、Proohet-5同様に、1音色の説得力が圧倒的なんです。

はっきり言いますが、今流行りの80s、90sのサウンドを追求するなら、絶対に実機を導入することをオススメします。あの時代の音楽の魅力って、現代の尺度でいうとほとんどの要素を「音色の質感」が占めていると思うんです。曲調を模倣して、今の音源でなんとなく作っても、全く質感が伴わない。ベース用のポリフォニックシンセも勿論ですが、僕は4~8音の80sのポリフォニックアナログシンセを導入することを強くプッシュします。

Juno-106も数年前から比べたらかなり値上がりしていますが、それでも2020年3月現在、10万円代で購入できます。この機体はオシレーターやフィルターに不具合が出てしまう特性を持っているため、メンテをしてもらえるお店で買うことがミソ。Junoはオススメします。

ちなみに、僕はそもそも実機を持っているので買いませんが、最近ローランドからJupiter-Xmというアナログモデリングシンセが登場しました。名機の音たちをモデリングしていて、これも使いやすいのでオススメ。ただし、僕が言うアナログシンセの音はしません。あくまでモデリングの音です。

なんだろう。デジタル特有の丸みというか、粘り気があるんだよな。特に低域。キックの音とか、そんな感じがします。


アナログシンセの魅力③直感的なモジュレーション

ただならぬ熱意で紹介してきたシンセサイザー。ソフトとハード(実機)の違いの大きな一面は、楽器を手で触ることができることだと思います。

僕が好きで、けれど持っていない現代の超優秀アナログシンセ、MoogのSUB 37。ソフトと最も違うと言ってもいい、モジュレーション(変調)の魅力を端的に語っている動画です。いいなぁ。現代的。ストリート。

特にシーケンス(あらかじめ用意したフレーズをMIDIなどで走らせて演奏する方法)を使った場合に、ツマミやホイールをリアルタイムに調整していくことで、単調に聴こえがちな機械的なフレーズが一気に命を宿します。

冒頭でもお伝えしましたが、シンセを演奏する上で重要な要素は「鍵盤を弾く」こと以上に「音色を音楽的に変化させていくこと」だと僕は考えます。モジュレーションはその真骨頂。ツマミをひねる強弱も、楽器によって様々。これらを理解しながらグルーヴやフレーズに好影響を与えていく、スリリングなダンスミュージックが僕は大好きです!

Fx的な効果音として使うもよし、ダブの要素で、ベースをワブル(ウニョウニョ)させてもよし、シンセは1音の表情変化をすごく楽しめる楽器なので、モジュレーションに自らの演奏力と魂を込めている音楽って僕はとってもかっこいいと思うんです。是非、触ってみてほしいです。


まずは1台、自分の特にこだわるパートに使ってほしい

キーボーディストで、リードのソロに自信がある人は単音でも複数音でも活躍するポリフォニック型を。ベースラインを生き生きとさせて、ローエンドを愉しみたい人はモノフォニック型を。ウワモノはソフトのキレやスピードを好む人は、リズムマシンを。など、自らのより「太く、音楽的にしたい」と思う箇所からアナログシンセを導入することをオススメします。

確かに、実機はかさばるし、ソフトに比べたら高価です。けれど自分に音楽にとって本当に効くと思える音色って本来そう多くはないし、それ一台で出せる音、なせる音楽が大きく変わると思えば、ローンを組んででも20万円台くらいのアナログシンセを導入した方が、僕は道が開けると思います。それほどまでに、現代の音楽には実機の音が必要とされていると感じます。

正直、これだけ音楽が細分化され、また一方で流行りの音楽スタイルが画一化されてしまっているトラックメイクの現状で、圧倒的に差が出るのは「音色の表情」だと僕は思います。サウンドの魅力は他に追随を許さない個性になります。景色が変わります。僕のこれまでの音楽活動、並びにクライアントワークでの急速な発展は、楽器の力あってのことです。確実に実りある投資になると思うので、是非トライしてみてください。


Twitterやインスタでも楽器のことを書いています。そしてSpotifyでは日々、作品をリリースしながらより良い音を追求しています。是非フォローしてもらえたら幸いです。

そして、ここより踏み込んだ話や、僕の実機のワンショットもDLしてもらえる機会を作る予定の「サークル」を立ち上げています!気になった方、是非入会してみてください。













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コメント (2)
大賛成です。
おいらも大昔、YAMAHAのシンセを買って遊んでた世代ですが、デジタルになって一気に熱が冷めたことを思い出しました。
アナログシンセの音作りが究極の「一期一会」でしたよね。つまみの位置を神経質に戻しても、微妙な電圧の違いや温度、湿度の差で完全に同じ音は再現できない、あの儚さ、あれなんだよなぁ、と。
ちなみに、当時欲しかったマシンはミニムーグです(今はモーグと表記するみたいですね)。今は骨董品的な価値が出てしまい、昔より遥かに高い値段で取引されているようですねぇ。
Future analog synth. using Brillouin scattering in optical fiber↓
https://www.youtube.com/watch?v=KmeqETyAo14
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