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アメリカ人富裕層が集まる、サンタフェのフォークアートマーケット体験記

早いものでもう今年も2/3が終わろうとしていますが、気づけばnoteの更新が半年も止まってしまっていました。そんなに経っていたとは自分でもびっくりなのですが、月日の流れる速さを改めて実感します。更新が止まっている間も、私は相変わらずあちこちを飛び回っていましたが、今回は最近のトピックスとして、約3年ぶりのアメリカ出張で体験した、ちょっと珍しいイベントのことをお伝えします。


世界でも例を見ない「フォークアート」のマーケットへ

今回のアメリカ出張は約2週間の日程でした。コロナ禍でアメリカ行きはしばらくストップしていたので、約3年ぶりです。最初に訪ねたのはニューメキシコの州都サンタフェ。ここで毎年7月に開催されているInternational Folk Art Market(IFAM)に、日吉屋が招待されたからでした。どういうイベントかというと、世界中から集まった民芸・工芸品の作り手が、自分の作品をBtoCで販売するのです。私自身、招待を受けるまでIFAMについては何も知りませんでしたが、実際に現地に行ってみて、このようなイベントは私の知る限り、世界でも例を見ないものだと感じました。

そもそも開催地であるサンタフェは、標高約2,000mほどの砂漠の高地。見渡す限り荒涼とした風景が広がる場所ですが、アメリカを代表する女性画家ジョージア・オキーフが晩年を過ごした町としても知られています。「アートに溢れたリゾート」というイメージは今も健在で、世界中からアーティストが集まるほか、ギャラリーの数も非常に多いのです。そのせいでしょうか、リタイア後のセカンドライフをここで過ごそうという富裕層がアメリカ全土から集まっているようです。

IFAMの来場者の7割がサンタフェ周辺在住。

今回、日吉屋が参加したIFAMも、来場する購買者の9割がまさにそういった裕福なアメリカ人です。彼らのパワフルな購買力をもって、世界の民芸・工芸作家を支援し、各地の伝統文化の継承に貢献しようというのがこのイベントの趣旨で、2004年に初回を開催して以来、もう20年近い歴史があるのです。

毎朝、列をなして集まる、購買欲旺盛な富裕層たち

今年のIFAMに集まった民芸・工芸作家は、招待枠と一般参加枠を合わせて、世界55カ国から168人。展示即売会本番は3日間(別途VIP向けレセプションもあり)でしたが、事前に2日間にわたって参加者向けのカンファレンスが行われました。このカンファレンスの目的は、作家活動を続けていくのに必要なブランディングや広報、販促など、ビジネススキルに関する学びを提供すること。こんなところからも、このイベントの支援色の強さが伺えます。

そして展示即売会が始まってみると、有料イベント(入場料20ドル)にもかかわらず、毎朝、会場入り口では来場者が列をなして集まり、熱気を見せていました。会場のつくりは、だだっ広い屋外の公園にテントを立てただけのごくラフなもので、お世辞にも高価な工芸品を売るような環境とは言えないのですが、それでも来場者の購買欲は旺盛。日吉屋のブースでは持参した和傘や照明KOTORIの販売在庫は初日で早々に完売してしまい、あとは受注オーダーを受けるのみとなりました。

ブースは簡易なテントのみながら、日吉屋は持参した商品が初日で完売。

主催者に聞いたところでは、1ブースあたりの3日間の売上平均は約2万ドルとのこと。つまりイベント全体で4〜5億円規模の売上があったということです。この経済効果の大きさも、私が「世界でも例を見ないイベント」と感じたポイントのひとつです。その旺盛な購買意欲の背景には、「よそでは出会えないユニークなものを手に入れたい」という欲求に加えて、世界各国の民芸・工芸作家の経済的自立やビジネス的成功を支援しようというチャリティ精神もあるのでしょう。世界で進むグローバリゼーションの対極にある、固有の文化的バックグラウンドがあるもの、土着的プリミティブさを持つものを求める気持ちも、もしかしたらあるのかもしれません。

IFAMは、日本の伝統工芸作家にもおすすめできる穴場

今回集まった参加者の出展作品を見ていると、伝統工芸的なものだけでなく、個人の作家性の強いものあり、趣味の手作り品レベルのものもあり、中身はバラバラでした。一般参加枠は、主催者団体の審査を受ける必要があるのですが、その審査はどうやらまだそんなに厳しくないように見受けられます。それでもイベントを通して、どの作り手も「アーティスト」という位置付けで敬意を払われていたのが印象的でした。

IFAM関係者でもある地元博物館が同時期に主催していた別のチャリティイベントに、
日吉屋の和傘が採用され、作り手のアーティストとして支援者の皆様にご挨拶する場面も。

日吉屋も、ニューメキシコの地元新聞やイベントの主催者が発行する雑誌に取り上げられ、非常に高い評価を受けることができました。また、地元植物園のイベント演出に、日吉屋の和傘が採用されるという予想外の出来事もありました。

今回参加してみて、私はIFAMは日本の伝統工芸作家にもおすすめできる穴場だと感じています。なんといっても、あれだけの購買力をもったコンシューマーが、世界の民芸・工芸品を求めて大挙して集まるイベントなど、ごくレアなのではないでしょうか。すでに来年の開催に向けた参加者募集の締め切りは過ぎてしまいましたが、興味をお持ちの方は、ぜひ今後チャレンジしていただけたらと思います。

International Folk Art Market(IFAM)公式サイト


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