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京の伝統工芸を現代の住空間に。地域商社「京都アンプリチュード」の挑戦。

昨年末の12月9日、弊社がパートナー企業として協業する地域商社「京都アンプリチュード」のショールームが、京都市中京区の堀川御池にオープンしました。この場所は、元はといえば京都中央信用金庫の西御池支店だったところ。今回は、京都ならではの可能性を秘めたこの地域商社の仕組みと、これから目指すビジョンについてお伝えしたいと思います。

地域商社「京都アンプリチュード」が取り扱う「WAZAI」とは。

「京都アンプリチュード」は、ユネスコの世界遺産にも指定されている二条城(元離宮二条城)から3分ほど歩いたところにあります。

ここは京都府下のさまざまな伝統工芸品を現代の住空間に生かすためのショーケース的な場所。織り、染め、和紙、漆塗り、陶磁器、竹・木工細工など、現時点で500ほどの素材・アイテムがラインナップされています。「京都アンプリチュード」では、これらを「WAZAI」と呼び、これから日本国内は言わずもがな、世界を相手にインテリアビジネスを行っていきます。

「WAZAIプロダクト」が並んだ1階ショールーム・ギャラリー

1階はどなたでも入れるショールーム・ギャラリーで、京都ならではの伝統工芸の粋に触れ、それらを使った「WAZAIプロダクト」を購入したりもできるようになっています。そして2階は、建築や内装のデザイン施工に関わる方々を対象とした「WAZAIマテリアル」ライブラリー。ホテル、飲食店、オフィス、住居などの空間にマッチする、伝統工芸の技を生かした壁紙や壁面パネル、タイル、照明、床材、テキスタイル等が多彩に取り揃えられています。

京都の伝統工芸の商材がBtoBからBtoCまで含めてここまで豊富に揃う地域商社は、世界広しといえどもここだけでしょう。ここには、これまで約20年間、日吉屋が自社の照明・インテリア事業と、伝統工芸支援事業で蓄積してきたノウハウがすべて詰め込まれています。私たちにとって一つの到達点と言ってもいいでしょう。

日吉屋が手がけたコラボレーションの一例

信用金庫が、商社業を立ち上げたわけ

この「京都アンプリチュード」、実は、日本最大の信用金庫である京都中央信用金庫の100%子会社です。12月にオープンしたショールームが同金庫の旧店舗を活用しているのはそのため。ではなぜ信用金庫が地域商社を立ち上げたのでしょうか。

信用金庫の特徴は、銀行と比べるとより地域密着型で、地元の中小企業や住民を対象にしている点です。とくに京都中央信用金庫は、京都という土地柄もあって、その取引先には伝統工芸に関わる中小企業が多く存在していました。これまでにも同金庫は、長年にわたってそれら作り手を支援する活動を行っていましたが、ここ3年ほどは、そこに弊社のもつノウハウやネットワークが合体して「Inspiration of Kyotoーインスピレーション京都ー」という事業に発展していました。

これは毎年度、公募で集まった参加事業者が、弊社プロデュースのもと日仏のデザイナーとインテリア新商材の開発を行って、最終的にパリの展示会「メゾン・エ・オブジェ」にてプレゼンテーションを行い、販路を開拓していくという事業です。新商品開発から販路開拓に至るまでの1年に並走し、サポートを行うというこの事業は、チャレンジ精神のある事業者にとっては大きなジャンピングボードになり得ます。

デザイナーとともに新たな表現を獲得した伝統織物をインテリアファブリックに

しかし一方では、単年度事業であることの物足りなさも常につきまとっていました。つまり「1年はサポートしますが、あとの営業は各社で頑張ってください」とならざるを得ないのです。そうなると、人的・金銭的リソースの限られた中小企業では、志はあってもなかなか実践は追いつかず、やりたいことに十分手が回らない、というケースがままあります。

そんなジレンマを解消する突破口になったのが、2021年の信用金庫法一部改正でした。これにより、銀行に続いて、信用金庫も商社を立ち上げて、自ら商品を販売することが可能になったのです。つまり新規事業に挑む事業者を、単年度ではなく長期的に、販売ビジネスを通じて支援していけるということです。

日吉屋にとっても、これは大きな喜びでした。現在、日吉屋オンラインストアでは、自社製品のみならず、弊社が支援サポートさせていただいた企業の伝統工芸品も販売していますが、やはり一社でできることには限りがあります。同金庫がもつネットワークや資本を活用すれば、その何倍、何十倍という規模のビジネスを生み出せる可能性があります。

「デザインホテルがワンストップで一軒建てられる」機能

こうして立ち上がった「京都アンプリチュード」、CEOには京都中央信用金庫の戦略企画部部長だった首藤晃弘さんが就任され、ブランドアドバイザーには、かつてエルメスフランス本社副社長を務めた齋藤峰明さんをお迎えしています。弊社・日吉屋は業務提携契約を結び、パートナー企業としてスタッフを派遣するとともに、同社の事業プロデュース全般と実際の商談等を担当しています。

CEOの首藤晃弘さん(左)とブランドアドバイザーの齋藤峰明さん(右)

今年夏には、世界のどこからでもデジタルカタログにアクセスできるようなウェブ上の仕組みも完成させる予定で、現在構築を進めています。また「京都アンプリチュード」には、京都中央信用金庫や日吉屋のネットワークを活用して、インテリアデザイナーをはじめ各種専門事業者と提携し、さまざまなカスタマイズやセミオーダーにもお応えできる体制を整えています。

2階の「WAZAIマテリアル」ライブラリーでさまざまな商談に対応

これにより、たとえば「竹細工×西陣織で照明器具を作りたい」など、異なる技術のかけ算を求めるオーダーにも、しっかりとしたデザインや企画提案力を持って対応できます。一専門職や一事業者にとってはハードルが高いこういうアッセンブルも、地域商社なら可能。まさに地域商社だからできる、「点と点をつないで新しい星座を作る」役割です。

もちろんデザイナーだけでなく、協力会社には建築・施工の専門業者も揃っています。つまり「京都アンプリチュードに依頼すればワンストップでWAZAIを活かしたデザインホテルが一軒建てられる」という機能が備わっているのです。

伝統工芸品に日常的に触れる暮らしを、若い世代にも

海外からの観光客受け入れが再開された今、2025年の大阪万博を2年後に控えて、インバウンド需要の高まりとともに、ホテルや飲食店、民泊などの施設の新築・改修はこれから増えていくでしょう。特に、超富裕層向けのラグジュアリーなサービスを提供する施設では、京都の伝統工芸を活用した内装が人気を集めることは十分に考えられます。

しかし、その一方で私が強く思うのは「ラグジュアリーな施設だけでなく、一般住宅でも、もっと気軽に伝統工芸を活用してほしい」ということです。伝統工芸品は人の手がかかっていますから、大量生産品のようにお安くはありませんが、その生産工程を考えれば、決して高いものでもありません。むしろ、飽きずに長く愛せる美しさや、使い込むほどに味わいが増していく点などを考えれば、暮らしを豊かにしてくれる、価値あるお金の使い方だと思うのです。

住空間に対する意識が成熟してきている今、マンションメーカーやハウスメーカーがつくる画一的な住まいではなく、どこかに自分らしさを取り入れた住まいを求める気持ちは、社会全体で高まっています。そんな変化の中で、とくにこれから子どもを育ててゆく30代などに、「WAZAI」のある暮らしをもっと身近に楽しんでもらえたらーー。「京都アンプリチュード」のような地域商社なら、そんな未来にも貢献できると思うと、楽しみで仕方ないのです。

ぜひ皆さんも、京都にお越しになる時は「京都アンプリチュード」を覗いてみてください。きっと新鮮な発見があるはずです。

ADDRESS
京都アンプリチュード https://www.amp-kyoto.co.jp/
〒604-0053
京都市中京区御池通堀川東入森ノ木町208番地の2
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