【修道院で醸造】トラピストとアビイを知って、ベルギービールの真髄に迫る!
こんにちは!光太郎です。
ビール大国として有名な国はいくつかありますが、中でもベルギーは有名でしょう。
広く一般的に「ベルギービール」と呼ばれている同国のビールは、どれも高品質でファンが多く、過去から現在にかけて世界中のビールファンを魅了し続けています。
そんなベルギービールの中に、「トラピスト」と呼ばれるビアスタイルがあるのはご存知でしょうか?
この記事ではビアスタイルの1つ「トラピスト」について解説いたします。
また、トラピストによく似た「アビイ」というビアスタイルについても併せてお伝えいたします。
「トラピスト」「アビイ」の2つを知って、ベルギービールの真髄に迫りましょう(^^)
トラピストは一部の修道院のみで造られるビール
トラピスト(Trappist Beer)は、修道院の中に醸造所(設備)を持つ一部の修道院のみで造られるビールのことです。
「国際トラピスト協会(International Trappist Association)」という協会があるのですが、ここで決められた3つの厳格な基準があり、それを満たしている修道院の作ったビールのみが「トラピスト」の名を使ってよいことになっています。
その3つの基準とは、
トラピスト会修道院の敷地内にある醸造所で醸造されること。
醸造はトラピスト会修道士の監督の下で行われること。
ビールによる収益は、修道士の生活のため、そして修道院の維持のために割り当てられること。
残った場合は慈善団体や、困った人々に与えること。
というもの。
現在「トラピスト」の名を使っているビールは、それを造っている修道院が上記の基準を満たしていることになります。
そしてトラピストの基準を満たしているビールには、「Authentic Trappist Product」と書かれたロゴマークを使用できます。
もしお手元にベルギービールをお持ちでしたら、一度確認してみてください(^^)
もしこのロゴが入っていたら、そのビールはトラピストビールということになります!
(反対に、基準を満たしていてもあえてロゴマークを入れていないビールもあるそうです。)
トラピストはビアスタイルではない!?
記事の序盤でも「トラピストと呼ばれるビアスタイル」とお伝えしてきましたが、実はトラピストは正確にはビアスタイルを表す言葉ではないようです。
というのも、前述した3つの基準を満たしていれば、造り方や原料などの取り決めはなく、それぞれの醸造所(修道院)ごとに自由に造ってよいビールだからです。
とはいえ、現在トラピストビールと呼ばれるベルギービールは、おおむね同じ方向性の特徴を持ったビールと思ってよいでしょう。
風味の特徴としては、
アルコール度数(ABV)はやや高め
プルーンや蜂蜜のような濃厚な風味が特徴
という感じです。
基本的にエール(上面発酵酵母)で造られており、「瓶内二次熟成」といってビールを開栓せず置いておけばどんどん熟成が進んでいく特徴を持っています。
(熟成を進めるために氷砂糖を加えることが多い)
この特徴のおかげで、同じ銘柄のビールであっても、製造ロットの違いや実際に飲んだ日(製造から開栓するまでの経過日数)によって味が違ってきます。
つまり、飲むたびに毎回違った顔を見せてくれるビール(ビアスタイル)で、飽きがこないビール揃いとも言えるでしょう!
※専用グラスは聖杯型のものが基本です。
口当たりが良いなどの特徴はありませんが、「修道院のビール」って雰囲気はとても感じられると思います(^^)
ベルギー国内にあるトラピストを名乗ることができる5つの修道院
2022年現在で、「トラピスト」と名乗れる修道院(醸造所)はベルギー国内に5つあります。
スクールモン修道院
銘柄:シメイ(Chimay)オルヴァル修道院
銘柄:オルヴァル(Orval)サン・レミ修道院
銘柄:ロシュフォール(Rochefort)シント・シクスタス修道院
銘柄:ウェストフレテレン(Westvleteren)ウェストマール修道院
銘柄:ウェストマール(Westmalle)
元々は他にもあったのですが、醸造を担当する修道士が高齢のため引退するなどの理由で「トラピストのロゴ」が使えなくなるそうです。
(この例の場合は前述した3つの基準「2」が満たせなくなるということになります。)
醸造を他の修道院で行うなどの方法でビールの銘柄自体は残ることが多いものの、「Authentic Trappist Product」のロゴが使えないため「トラピストビール」とは呼べなくなるってことですね。
このあたりの基準の厳格さが、ビールだけでなく修道院の品位を保つための秘訣なのでしょうね。
※ベルギー以外では、オランダ・オーストリア・イタリア・イギリスなどに「トラピスト」を名乗れる修道院があるようです。
トラピストビールの銘柄紹介
ここでトラピストビールをいくつかご紹介いたします。
スクールモン修道院「シメイレッド(Chimay Red)」
有名なトラピストビールの「シメイレッド」です。
チェリーやプルーンのような甘みと香りのあるビールで、リッチな気分にさせてくれます。
アルコール度数は7%なので、やはりゆっくり飲みましょう(^^)
ちなみにシメイは他に、白、青、金、緑があります。
オルヴァル修道院「オルヴァル(Orval)」
オルヴァルはかなり特徴的な味のするビールで、シナモンやクローブのようなスパイシーなハーブ、プルーンやマンゴーのような味の濃いフルーツ感があります。
オルヴァルも瓶内二次熟成のビールとあって、表示されている賞味期限はめちゃくちゃ長いです。
ずっとずっと置いておいて、いつか熟成させまくったオルヴァルを飲んでみたいと思っています。
(だけど絶対我慢できずそのうち飲む笑)
宗教とビールの関係について
宗教(主にキリスト教)とビールについては、切っても切れない関係となっています。
過去、ヨーロッパで猛威を振るった伝染病・感染症で有名なものに、ペストやコレラなどがあります。
これらの病気は生水を介して感染するのですが、このことに気づいた修道士たちは、水を飲まずワインやビールを飲むように推奨したのだそうです。
特にビールは製造の際に水を煮沸させ滅菌することができるので、衛生的で安全な飲み物だとされました。
現代でもアジア圏など衛生面が心配な地域では、水を飲まずビールを飲むことがあるそうですね(^^;
お酒造りだけでなく、医学や衛生面の知識に長けた人が多かった修道僧たちは、修道院に助けを求めてやってきた人へビールを提供していたそうです。
(もちろん食事や寝床も提供していた)
ビールに使われているホップは薬草としての成分も含まれていますし、修道院や修道僧は病院・医者としての役割も担っていたようです。
話は少しそれますが、キリストは最後の晩餐の際、弟子たちにワインとパンを分け与えました。
「ワインは私の血、パンは私の肉である」と説いたので、その後キリスト教のミサ(儀式)が行われる際はパンとワインが分け与えられるようになりました。
しかし、地域的にワイン用のブドウ栽培ができない場合、代わりにビールを与えられるそうです。
こうしたビールやキリスト教の歴史に思いを馳せながら、トラピストビールを飲んでみるのも一興かと思います。
特に、アルコール度数の高いビールはゆっくり飲みたいので、考え事をしながら楽しむのにピッタリかと(^^)
アビイビールについて
最後になりましたが、「アビイ(アビイビール)」について解説いたします。
実はアビイビールもトラピストと同じく修道院で造られるビールのことで、特にビアスタイルを指すものではありません。
勘の良い方はお気づきかもしれませんが、「トラピスト協会以外の修道院が関わって造っているビール」がアビイビールと呼ばれています。
この場合は修道院の中の醸造所で造られるものだけでなく、ビールのレシピを一般の醸造所へ委託して造られているものもあります。
味や香りの特徴はトラピストビールとよく似ていて、どちらも「修道院ビール」などと呼ばれることも。
比較的入手しやすい有名なアビイビールには、
レフ(Leffe)
マレッツ(Maredsous)
サンフーヤン(Saint Feuillien)
などがあります。
トラピストを知ることはベルギービールを知ることにつながる
この記事では、ベルギーの「トラピスト」と「アビイ」について解説いたしました。
厳密にはどちらもビアスタイルを指すものではありませんが、一般的な括りでは「ビアスタイル」として解説されています。
どちらも「ベルギービールといえば?」と質問されたら思いつくようなビールが多く、味や風味も特徴的。
不慣れな人にはやや癖のあるビールに感じられるかもしれませんが、飲み慣れてくるとその奥深い美味しさを堪能できると思います。
これからはベルギーのビールを見るたびに、ラベルに「Authentic Trappist Product」と書かれたロゴマークが入ってないかをチェックしてみてください(^^)
僕個人の意見ですが、トラピストやアビイを知ると、ベルギービールの真髄に近づけるような気がします。
ビールの味や香りを楽しむのはもちろんのこと、造られた背景や歴史を知ることも、クラフトビールの楽しみ方の1つだと思います。
修道院ビール、ぜひチェックしてみてくださいね♪
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