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山際響
2019年1月22日 23:25
首都圏近郊のニュータウンにその小さな大学はあった。大学の脇には東京へと続く線路と国道がそれぞれ一本だけ走っている。 十二月のある夕暮れ。五十歳になる大学教授の私は大学の図書館から一冊の本を借りた。それは私が生まれた年、つまり五十年前に書かれた本で、ポルトガルの若者がヒッチハイクをしながら国中を旅する、という内容だった。本のタイトルは、フーガと言った。それは、ポルトガル語で『逃避』を意味する。