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ライブ会場でノレない人は、本当にノレていないのか?~心で感じるライブの楽しみ方~【2020/12/18 あいみょんライブレポート @横浜アリーナ】

音楽ライブの観客は大きく分けると2種類に分類できる。

全身で音楽を楽しんでいる様を表現する人
微動だにせず心で音楽を感じる人

皆さんがライブを頭の中でイメージしてみた際は、前者を想像する人が多いのではないだろうか。
そして、他人から見ると、大きく手を振る・歓声をあげる等して元気に動いている人の方が、動いていない人よりも楽しんでいるように見える。

上記のような周囲のイメージを気にしてか、微動だにしない人が、自分は心からライブを楽しめていないのではないか?という錯覚に陥ることもある。


しかし、動いていないからといって、それはライブを楽しんでいない、ということになるのだろうか?

今日におけるコロナ禍のライブでは、歓声をあげることも、周りの観客と触れ合うこともできなくなった。

「心で感じるライブの楽しみ方」がスタンダード
として浸透し、今まで「全身で楽しみを表現していた人」は新たなライブの楽しみ方を、「心で音楽を楽しんでいた人」はどことなく漂っていた"楽しめていない感"が排除された状態でライブを楽しむことができるようになったと感じた。



感じたことのない緊張感に包まれたライブ会場

2020年12月18日
AIMYON TOUR 2020 "ミート・ミート" @横浜アリーナ

11月末から12月にかけて全国5会場(10公演)で開催されたライブは、あいみょんにとって、緊急事態宣言が発令されて以降、初めてのライブとなった。

当初2020年は、弾き語りツアー 2020 "風とリボン"と合わせて、全国20会場(32公演)でのライブを予定していたが、社会情勢を踏まえて、会場・公演数を縮小し、来場人数も減少させた上でのライブ開催となった。


アーティストのライブに対して、賛否両論に分かれている中実施されるライブは、もちろん演者側にとっては、様々なリスクを抱えているが故、いつもとは異なる緊張感があるはずだ。
一方で、観客側にとっても、コロナ禍におけるライブはどんな光景になるのかという不安感もありつつ、久しぶりに観れるアーティストのライブに対する高揚感も相まって、独特な緊張感に包まれていた。


ただ、一たびライブが始まると、ネガティブな緊張感からは解放され、現在の状態だからこそ「映える」ライブもあるのではないか、と思わせてくれた。



「声が出せない」ライブで見出した、新しいライブの楽しみ方

冒頭に申し上げた通り、大衆がイメージする音楽ライブには、歓声をあげたり、踊ったりする観客が存在する。

しかし、感染対策を施したライブの禁止事項の一部に、「声を出さない」「隣の人と触れ合わない」というルールがある。


「全身で音楽を楽しんでいる様を表現する人」はほとんど存在せず、いわば「微動だにせず心で音楽を感じている人」にならざるを得ない状況である。

観客全員が、心で音楽を感じるしかない異質なライブの中で、観客はどんな想いを感じただろうか?元々、前者だった人は、ライブを楽しめなかったのだろうか?

けしてそんなことはないと思う。


全神経を目と耳に集中させると、音一つ一つ、歌詞の一節一節が身に染みる。今まで聴いていたアーティストの歌が、また違った力を持って、自分の耳の中に入ってくる

経験したことのない緊張感の中で歌うアーティストの姿は、まさに孤高の存在そのもの。その姿が非常に美しく見え、言葉では表すことのできない感情がグッと心に響く。

コロナ禍特有のライブだからこそ感じることのできる演者の想いや観客の想いがそこにはあった。特有の緊張感をポジティブな方向へ昇華させ、新しいライブの楽しみ方さえ見出している。

まさに、あいみょんは、そんなライブを見事に体現してみせた。



人それぞれのライブの楽しみ方を尊重する

元々、「心で音楽を楽しんでいた人」にとっては、いつも通りのライブの楽しみ方になったかもしれないが、どことなく漂っていた「ノレていない観客は楽しんでいない」感を排除することができたのではないだろうか。

ノレていない自分たちを楽しめていないと思わなくていい。
コロナ禍におけるライブは、自分たち(心で音楽を楽しんでいた人)の楽しみ方も最高なんだぜ、ということを、「全身で楽しみを表現する人」にも浸透させるいい機会になったと感じた。

勿論、「全身で楽しみを表現する人」が悪いとは全く言っていない。
どちらかというと筆者も、情勢が良い方向に向かっていったら、昔のように、箱にぎゅうぎゅうになった状態で、色んな声が轟くようなライブが開催できるようになることを願っている内の一人である。

ただし、そうなったとしても、色んなライブの楽しみ方が尊重され、ライブの場にいる人全員が楽しめる環境になったら良いと切に思っている。

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