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韓流ドラマとPP広告の台頭

韓国ドラマの世界的な人気により、ドラマ内で商品やブランドを露出させる「プロダクト・プレイスメント(PP)広告」が注目を集めている。動画配信の普及により視聴者数が爆発的に増加し、韓流ドラマの「媒体価値」が一層高まっている。


NetflixとPPLの相乗効果

Netflixの急成長とPPLの相乗効果により、ブランドにとって大きな広告効果が期待できる。Netflixは現在、全世界で2億3,000万人以上の有料会員を抱える動画配信サービスの最大手だ。そのNetflixのオリジナル作品にPPLを行うことで、ブランドは膨大な視聴者にリーチできる。例えば、Netflixの大ヒットシリーズ「ストレンジャー・シングス」では、コカ・コーラの過去のデザイン缶が登場し話題となった。作中の1980年代の雰囲気にマッチしたレトロなデザインは、ブランドイメージの向上に一役買ったと言える。

Netflixのグローバルな視聴者基盤を活用し、PPLを通じてブランド露出を図ることは非常に効果的なマーケティング手法と言える。また、Netflixのパーソナライズされたレコメンデーションにより、PPLを含む作品が視聴者に届きやすくなっている。視聴履歴や評価をもとに、ユーザーの好みに合った作品が自動的に提案されるため、PPLの効果が最大化される。ブランドにとって、ターゲットとなる層に的確にリーチできるのは大きなメリットだ。

Netflixの会員数の増加とPPLの組み合わせは、今後ますます広告主の注目を集めるだろう。動画配信サービスの隆盛により、テレビCMに代わる新たな広告手法としてPPLの重要性が高まっている。ブランドがNetflixのようなグローバルプラットフォームを活用し、PPLを展開することで、これまでにない広告効果を生み出せる可能性がある。

コカ・コーラのPPL戦略

コカ・コーラは1940年代からPPLを積極的に活用し、ブランド認知度向上とイメージ構築に役立ててきた。最近ではNetflixの人気シリーズ「ストレンジャー・シングス」で、昔のデザインのコカ・コーラ製品が登場し話題となった。コカ・コーラは「コーラ戦争」と呼ばれるペプシとのマーケティング競争の中で、映画へのプロダクトプレイスメントをほぼ独占し、ハリウッドとの繋がりを深めてきた。一方、ペプシは『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で未来のペプシ「パーフェクトペプシ」を登場させるなど、PPLで対抗した。両社のPPL合戦は炭酸飲料市場を拡大させ、結果的に両社の売上を伸ばす結果となった。

韓国ドラマの人気作とPP事例

韓国の人気ドラマでは、様々なブランドのPP広告が登場している。例えば、大ヒットドラマ「愛の不時着」では、ダイソンのヘアドライヤーやダイキンのエアコン、ボルボの車などが登場した。主人公の身につけるファッションアイテムも注目を集め、ノースフェイスのダウンジャケットは品薄になるほどの人気ぶりだった。

また、「梨泰院クラス」ではメルセデス・ベンツ、「愛の不時着」ではボルボ、「イタズラなKiss」ではシボレーの車が目立って登場し、ブランドの認知度向上に一役買った。化粧品ブランドも積極的にPPLを活用しており、「太陽の末裔」に登場したランコムは売上が15%増加したと報告されている。Netflixで世界的に流行した「イカゲーム」では、登場人物が着用する白と緑のトレーニングウェアが話題となり、ブランドの公式サイトがダウンするほどのアクセスが殺到した。PPLとSNSの拡散効果により、ドラマに登場する商品への関心が一気に高まる現象が見られる。

韓国の人気俳優を起用したPPLも増えている。例えば、ヒョンビンが出演するTVCMでは、着用している時計やバッグなどのファッションアイテムが完売するなど、俳優の影響力の大きさがうかがえる。韓流スターを活用したPPLは、ブランドイメージの向上と売上増加の両方に効果があると期待されている。

最近の韓国ドラマ人気作とPPL

2024年も韓国ドラマの人気は衰えず、様々な話題作が生まれている。例えば、ディズニープラス スターで独占配信中の『クレイジーラブ』では、主人公が乗るメルセデス・ベンツの高級車が印象的だ。人気俳優パク・ソジュンやヒョンビンが出演するドラマでは、彼らの着用するファッションアイテムが注目を集め、即完売するなどの現象も見られる。

また、Netflixオリジナルシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、韓国ドラマの魅力が凝縮された作品と評判だ。主人公が愛用するアップルのMacBookやiPhoneが頻繁に登場し、ブランドの露出効果を高めている。

『百人力執事 ~願い、かなえます~』では、主人公が経営する高級ホテルが舞台となっており、インテリアや調度品にもこだわりが感じられる。室内に飾られた絵画や彫刻は、ドラマの格調高い雰囲気を演出するのに一役買っている。

韓国ドラマは、単なるエンターテインメントの枠を超え、ファッションやライフスタイルのトレンドを発信する存在となっている。PPLを通じて、最新の商品やサービスが自然な形で視聴者の目に留まる。ドラマで使用されたアイテムは、すぐにSNSで話題となり、販売数が急増するなどの効果が見られる。

韓流ドラマのグローバルな人気により、PPLの対象はアジアだけでなく、欧米のブランドにも広がっている。世界中のファンが熱狂する韓国ドラマは、まさにPPLの最前線と言えるだろう。今後も、斬新な企画と豪華なキャスティングで視聴者を魅了し続ける韓国ドラマから、目が離せない。

韓国ドラマのPPLを利用する代表的な企業

  • 食品・飲料

    • ネスレ、ロッテ、CJグループ、農心、サムスン食品、コカ・コーラ、ペプシコ、ソウルメイト、ハイト眞露

  • ファッション・コスメ

    • ロッテ免税店、愛茉莉太平洋、エスティローダー、LVMHモエ ヘネシー ルイ ヴィトン、シャネル、ディオール、ジバンシィ、ユッケン、イニスフリー

  • 自動車

    • ヒュンダイ、起亜自動車、ジェネシス、ルノーサムスン、ポルシェ、ジャガー、ランボルギーニ、テスラ

  • 家電・IT

    • サムスン電子、LG電子、SKテレコム、KT、アップル、マイクロソフト、グーグル

  • その他

    • 現代百貨店、ロッテ百貨店、新韓金融グループ、KB国民銀行、ユーチューブ、ネイバー、カカオ

韓国ユーザーのPPL認識

韓国でのPPLに対するユーザーの反応は概ね好意的だ。視聴者は自然な形で商品やブランドが登場することに違和感を覚えず、むしろ現実感を高める効果があると捉えている。ドラマの中で使用されている商品に興味を持ち、SNSで情報を共有したり、実際に購入したりするユーザーも多い。

一方で、あまりにも露骨なPPLには批判的な声もある。ストーリーの流れを阻害するような不自然な商品の登場や、特定のブランドへの偏重には疑問を感じる視聴者もいる。PPLは、あくまでもドラマの世界観を壊さない程度に、さりげなく行うことが求められる。

韓国の視聴者は、ドラマを単なる娯楽としてだけでなく、トレンドを発信するメディアとしても捉えている。登場人物が身につけるファッションアイテムや、使用する電化製品などに注目が集まり、流行を生み出すきっかけとなる。PPLは、そうしたドラマの影響力を利用したマーケティング手法として、広告主に認識されている。総じて、韓国でのPPLは視聴者に受け入れられており、ドラマを通じたブランドの露出は効果的だと言える。ただし、ドラマの質を損なわないよう、適度な商品露出にとどめることが肝要だ。今後も、視聴者の反応を見極めながら、PPLのあり方が模索されていくだろう。

韓国のPPL合法化と規制

韓国では、2010年に放送法が改正されPPLが合法化された。それ以前は、ドラマや映画での商品露出は「間接広告」とみなされ、規制の対象となっていた。法改正により、一定のルールの下でPPLが認められるようになった。現在、韓国におけるPPLは、放送通信委員会(KCC)によって管理・監督されている。KCCは、視聴者の利益を保護しつつ、放送事業者の財源確保にも配慮するという方針の下、PPLに関するガイドラインを設けている。

ガイドラインでは、以下のような規定が設けられている。

  1. PPLは、放送プログラムの内容や編成に影響を及ぼしてはならない

  2. 視聴者を誤解させるような過度なPPLは禁止

  3. ニュース、教養、子ども向け番組でのPPLは原則として認められない

  4. PPLを行う場合、番組開始前または終了後にスポンサー表示を行うこと

ただし、昨今の韓流ブームを背景に、韓国ドラマにおけるPPLは急増しており、規制当局の監視の目も厳しくなっている。露骨な商品露出や、ストーリー展開に不自然なPPLについては、KCCが警告を発するケースもある。2020年には、人気ドラマ『愛の不時着』において、PPLが度を越していると批判が殺到した。登場人物が特定ブランドの商品を過剰に称賛するシーンが問題視され、制作陣が謝罪する事態となった。これを受け、KCCはPPLのルール順守を改めて放送局に要請している。

韓国におけるPPLは、法改正により一気に加速したが、行き過ぎた商業主義への警戒感も根強い。規制当局は、視聴者の信頼を損ねることのないよう、PPLの適切な運用を放送局に求めている。一方で、制作費確保の重要性も認識されており、PPLと表現の自由のバランスを取ることが課題となっている。今後、動画配信サービスの普及に伴い、PPLの手法はますます多様化することが予想される。規制のあり方についても、柔軟な対応が求められるだろう。視聴者の利益を守りつつ、コンテンツ産業の発展を後押しする、賢明なPPL規制が期待される。

各国のPPL規制とポリシー

韓国以外の各国におけるPPLの規制やポリシーは様々だ。アメリカでは、連邦通信委員会(FCC)がPPLを規制しており、テレビ番組内で商品やブランドが目立つ形で登場する場合、スポンサーであることを明示することが義務付けられている。ただし、映画におけるPPLについては特に規制がなく、自由度が高い。

一方、イギリスではPPLに関して厳しい規制が設けられている。公共放送のBBCは、編集の独立性を保つためPPLを禁止している。民放においても、オフコムという独立機関が放送内容を監視しており、視聴者を誤解させるようなPPLは認められない。

フランスでは、テレビ番組でのPPLは原則禁止されている。ただし、映画については例外的に認められており、フランス映画におけるPPLは一般的だ。規制当局は、PPLが芸術表現の自由を阻害しないよう配慮しつつ、行き過ぎた商業主義に陥らないよう監視している。

各国・地域によって、PPLへの規制やポリシーには違いがあるものの、共通しているのは視聴者保護の観点だ。PPLを全面的に禁止するのではなく、行き過ぎを防ぎつつ、表現の自由とのバランスを取ることが重要視されている。今後、動画配信サービスの普及に伴い、PPLのあり方についても議論が進むことが予想される。

日本におけるPPLの現状

日本でのPPLは、民間放送連盟(民放連)のガイドラインにより、一定の制限が設けられている。ニュース番組でのPPLは禁止され、ドラマなどの番組でも、商品露出が目的と見なされる場合は、スポンサー表示が義務付けられている。これは、視聴者を誤解させないよう、広告と編集内容の区別を明確にするためだ。

一方で、近年は映画やアニメ作品とのタイアップなど、PPLの手法が多様化している。例えば、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では、日清カップヌードルとのコラボレーションが話題となった。作中に登場するカップ麺が、劇中のストーリーに自然に溶け込んでおり、違和感なくPPLが行われていた。また、人気アニメ『サザエさん』では、長年にわたってサンヨー食品の「サッポロ一番」とタイアップしている。劇中で製品が登場するだけでなく、キャラクターを使用したパッケージデザインなども展開され、アニメファンから好評を博している。

日本における今後のPPLの展望としては、YouTubeなどの動画プラットフォームとの連携が注目される。インフルエンサーを起用した商品紹介や、バーチャルYouTuberとのタイアップなど、新たな手法が登場しつつある。規制当局の動向を注視しつつ、クリエイターの表現の自由と、視聴者保護のバランスを取ることが求められる。

日本でのPPLは、欧米と比べるとまだ発展途上の段階にあると言える。しかし、コンテンツ制作者の創意工夫により、今後ますます多様化・洗練化していくことが期待される。ブランドにとっても、コンテンツとの親和性の高いPPLは、効果的なマーケティング手法となるだろう。



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