見出し画像

バンドがしたい年頃〜高1ver.

Tにフラれてから、余計好きになった。冷たくされればされるほど好きになってしまう。中学の時もそうだった。変な癖だ。

文化祭ではMy Little Loverの“Hello again″がずっと流れていた。

私はジュディマリと小室哲哉さんのつくる音楽にドハマりしていた。
ジュディマリのYUKIのファッション、高音キーの歌い方、顔、全てが好きで、バンドのスコアを購入した。


吹奏楽部の練習そっちのけで、部室でひたすらドラムの練習をしていた。ドラムがべらぼうに上手い2年生の女の先輩に教えてもらっていた。

高校からスネアドラムを1から始めるのは遅すぎるのは百も承知だった。でもリズム感を養う事はピアノへも繋がっていくと思い、毎日毎日机の真ん中ばかりをメトロノームに合わせて叩く練習を続けた。基礎だ基礎、基礎が大切…と言い聞かせながら。

同じパーカッションの友美は、鍵盤系が得意であった。グロッケン、シロフォン、マリンバ…私は鍵盤系はピアノだけでお腹いっぱいだったので、何か曲が決まってもドラムは私、友美は鍵盤系とお互い分業した。

次第にバンドをしてみたいと思うようになり、ジュディマリ、スピッツ、布袋寅泰のスコアを購入した。
ドラムだけでなくギターもできたらいいなと、音楽室にあったアコースティックギターを軽い気持ちで手にした。


ピアノやエレクトーンを皆習っていたので、いわゆる鍵盤系は他の友達にやってもらおう、ドラムやギターはパーカッションで習うか独学でやるしかない。それをやる女子も中々いない。
男子の場合、ほぼ独学でギターをしている者が多かった。(数学補講メンバーいわゆる落ちこぼれ軍団の中に複数いた)

ギターは完全独学だ。
まずコードから練習するために、誰でも弾けます!みたいな分厚い本を購入し、毎日毎日部活の練習を抜けて、コードの練習をした。
ギターをやった事がある人はお分かりだろうが、だいたい初心者はFのコードでつまづく。確かに手が届きにくく難しい、でも悔しいので死ぬほど練習したらアッサリ弾けるようになった。


ピアノで音階とアルペジオが頭に入っていたので、コードの名前もコード進行も、あーなるほどね…と言った感じですぐに理解できた。

ただひとつ、ギターは弦楽器なので毎日チューニング、それもしばしば調整しなければ、すぐに狂った気持ち悪い何ともいえない和音がジャーンと鳴る。私はそれが許せなかった。

正確にチューナーで合わせ、チューナーが手元にない時は自分の耳だけでチューニングした。

コード進行だけでも覚えると、CDに入っているお気に入りの曲に合わせてジャカジャカ弾けるようになるのが嬉しかった。自分もバンドマンになったような気分に浸れる。

スピッツの“ロビンソン″のイントロが弾きたくて仕方なかったのだが、めちゃくちゃ難しかった。ロビンソンは歌というよりギターの音が好きだった。もちろん草野政宗くんの高音キーの歌声も好きだったのだが。
ジュディマリはひたすらYUKIのボーカルとドラムに耳をすませた。

布袋寅泰にハマったのは、単に好きになったTが何となく顔が似ていたから…という超単純な動機だったが、ギターがカッコいい。でもエレキギターなんて、ウチは絶対買ってもらえない。


母が許すロックン・ロールとは、自身の好きなエルビスプレスリーとデイビットボウイのみである。


だが、布袋寅泰のCDも当然購入して、カセットテープにダビングしては、毎日自転車通学時、小型のプレイヤーでイヤホンを耳にさし、爆音で聴いていた。
高1の頃の私のカセットテープの中身はジュディマリ、布袋寅泰、スピッツ、安室奈美恵、華原朋美、trfだらけだった。タバコをプカプカ吸いながら好きな音楽を聴きながら…鼻歌混じりの自転車通学は、とても解放的で好きだった。

勉強は完全に匙を投げていたので、カバンはペタンコ、化粧品一式とタバコ、カセットプレイヤーしか入ってない。
どうもイヤホンの音がガシャガシャうるさいのが気に入らなくて、家にあったSONYのヘッドホンをさしてみたら…それはもう別世界…!ヘッドホンひとつでこれほど音響が変わるのか!ってくらい身体中に音楽が響いた。それからは通学中ずーっとヘッドホンを耳にした。

その頃男子はミスチルやB′zをよく聴いていた。とある男子のグループが文化祭でバンド演奏をしていた。女子はキャーキャー言っていたが、チューニングの音が合ってないギターの音が最後まで気になって仕方がなかった。私は本当に嫌な奴だ。

私はジュディマリのようなバンドも大好きだったが、小室哲哉が生み出すエレクトリックな音楽の世界にもドップリハマった。
小室哲哉がプロデュースする女性シンガーは皆高音キーであるが、私にとって非常に歌いやすかったのと、“今を生きてる臨場感たっぷり″の歌詞が大好きだった。

何で男の人なのに、ここまで女心をよくわかった詞がかけるんだろう…いつもそう思った。

もう一つの魅力は小室ファミリーの原キーの“調″だ。そしてコロコロと転調していく。

特にglobeの“SWEET PAIN″のイントロを聴いた瞬間、この世とあの世の中間をフワフワ浮いているような感覚に陥った。SWEET PAINの音は、私の中では完熟したメロン色の音に聴こえる。trfの時も何曲かそう感じていた。
小室さんって人は、何でこの調で曲をつくったんだろう…単にボーカルの女性シンガーが歌いやすいからかな…DJってのもいるし、ラップも歌わせる、J-POPはつまらないと思っていたのが一気にひっくり返された。何より陰鬱な気分を吹き飛ばしてくれる。

華原朋美が特に好きで、高校が別になったダブルゆうちゃん友達とカラオケに行った。
特にソプラノの夕ちゃんと、いつも曲がかぶり朋ちゃんの歌ばかり競うように歌った。…負けた!やっぱ夕ちゃんの本来持っている美声には敵わない!もちろん全て原キーだ。

今でも華原朋美のコンサートがあればチケットを購入して聴きにいく。個人的に“LOVE BLESS″が1番好き、切ない歌詞と、朋ちゃんの甘美な美声がよく生かされてるなぁと生意気にも思ったりした。


とにかくドラムとギターが少しばかりできる事に拍車をかけ、コピーバンドでいいから女子だけのバンドをしたい!と強く願うようになった。
ただ、ボーカルが見つからない…ぶっちゃけ高校生や若いうちのバンドのボーカルなんて、少々歌がヘタクソでも顔が可愛ければ何とかなる。
ほら、女性シンガーのほとんどは、まず第一条件として顔が可愛いか綺麗か相場が決まっている。ボーカルは顔だ。可愛くないと見てもらうことすらできない。全く理不尽だが仕方ない。


ひとつだけ苦手なもの…やはりアイドルグループやジャニーズだけは最後まで好きになれなかった。
外見コンプレックスもあったが、歌うんなら真面目に歌を歌え!他のミュージシャンに失礼だろ!音楽番組を見るたびに虫唾が走った。

そんなこんなで、母の知らない間に勝手にドラムを叩いたり、タバコを吸っては友達とカラオケに行き、“束の間の自由″を楽しんでいた。
どうせ牢獄のような家なんだから、それくらい楽しませてくれよ。

クラシック音楽以外のジャンルに、本格的に目覚めてしまった。
高2になったらボーカルの女子を見つけて、一度でいいから、女子だけで結成したバンドをやること!が目標になった。



この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?