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フェリチンを「深堀り」します

フェリチンは内部に鉄を貯蔵出来るたんぱく質で、各臓器に存在し、一部血液中にも存在します。身体の鉄貯蔵量により値が変化するため、鉄欠乏性貧血などの鉄代謝異常の指標とされます。

鉄はヘモグロビンの材料となり、不足すると貧血を起こしますが、鉄の役割は多彩であり、貧血になるずっと前から鉄不足による色々な症状が起こってきます

この、貧血には現れない潜在的な鉄欠乏(「隠れ貧血」などとも呼ばれます)が、フェリチンを測定することによって明らかになるのです。

…さて、ここまでは良く知られるようになって来ましたが、フェリチンは「多いから鉄が足りていて、安心」かと言うと、話はそう単純ではありません。今日はフェリチンについて詳しくお話したいと思います。

フェリチンを調べるには

フェリチンは血液検査で簡単に調べることが出来ますが、問題は保険が通りにくいことです。保険で検査を行うには「鉄欠乏性貧血」が疑われた時だけですので、そもそも貧血がないと保険が利かない=自費検査になるということです。

自費であれば基本的に検査が出来ますが、調べてもらえるとは限らないので事前に病院/クリニックに問い合わせておくことをお勧めします。自費検査の注意点としては、ひとつでも自費で検査を行うと、その日行った検査・処方は全て保険が利かず、全て自費になってしまうので覚えておいて下さい。

フェリチン検査の実際の料金は?

フェリチンは保険診療の場合108点(3割なら324円)です。他の検査と一緒に行い、更に初再診や判断料などがかかりますのであくまで参考です。しかし上で述べたように保険か利かない人が大多数だと思います。

自費ではいくらかかるのでしょうか。実は金額は医療機関によって全然違います。私のクリニックでは自費の場合、初診3300円、検査費用としてフェリチン、血清鉄、鉄結合能(TIBC)、尿素窒素(BUN)、クレアチニンの5項目で1100円いただいています。

だいたい2000円くらいとしているところが多いようです。値段を確かめる時の参考にして下さい。

ちなみに最近は自宅でフェリチンを測定するキットが販売されています。周囲に測定してくれるクリニックがなくても検査が出来る、受診のわずらわしさがないのは長所ですが、取り扱い方によっては検査出来なかったり検査結果に問題が生じる可能性があります(後述する溶血や凝血などの問題)。

また自宅でキットを使って行う場合も、医師のコメントなどを求めるとかえって高額であることも多いです。

…ちなみに宣伝になりますが、「ココナラ」でオーソモレキュラーのコンサルを始めました。医師の栄養相談としてはかなり格安だと思います。採血結果の相談先がない!という人は是非ご利用下さい。

フェリチンの基準値

フェリチンは検査会社によって基準値が全然違います。通常各検査会社は、その会社で働く職員を集めて検査を行い基準値を決めています。フェリチンは男女で数字がかなり異なりますが、閉経後の女性では数字が男性の数字に近付いていきます。

つまり、閉経女性の割合が多い検査会社では、フェリチンの基準値が高くなっている可能性があります。男性20~250ng/ml、女性10(あるいは一桁)~80ng/mlくらいとしているところが多いです。

ただ、オーソモレキュラー的にはフェリチン30ng/mlは低い数字です。以下に、私が使用している基準値をご紹介します。

フェリチンの基準値
男性 100~160
女性  80~160
閉経女性は男性に準ずる。
※お子さんは女性に準ずる。男性は80、女性は40を切ると重度低値)

本に登場するような値の人は多くない

鉄欠乏について書かれた本を読むと、フェリチン一桁、尿素窒素(BUN)一桁という人がたくさん登場しますが、これは分かりやすさを重視しているからで、こんな極端な値の人はそんなにいません。また最近は本やブログを見て既に鉄のサプリメントを飲んでから来院される方も少なくないので、尚更です。

ここでひとつ注意が必要です。フェリチンの値は、低ければそれはほぼ鉄の不足と考えて良いのですが、初診時に50~60ng/ml、あるいはもっとフェリチン値が高い人は、「鉄が十分足りている」とは言い切れないことです。

臨床的に鉄が足りない症状(疲れやすい、眩暈や頭痛、あざが出来やすいetc...)があることも少なくなく、この場合の多くは「溶血」「炎症」の影響を受けていることが多いです。初診時フェリチンが高い人、結構いらっしゃいます。

鉄を摂ってもうまくいかない場合はこのどちらかであることが多いのですが長くなりますので、これについてはまた別の機会に書きたいと思います。

特に炎症の場合は鉄をたくさん摂るとかえって具合が悪くなる場合があります。ですので本当は鉄サプリを摂る前に検査を受けておくことをお勧めします。

検査項目はフェリチンと尿素窒素(BUN)だけでいい?

特に藤川先生の本を読むと、ほぼこれくらいの値しか出て来ません。藤川先生はあまり他の検査の値を重視しないのですが、上記の「溶血」「炎症」、また「脱水」などが起こっていると見掛けの数字がかなり変わってしまいます。

こうした問題を推測するには色々な検査の値が参考になります。治療してからだと元の数字が分からなくなるため、個人的には「ATPセット」だけでやりたいという「藤川式」の人もサプリメントを飲む前に、ある程度広く検査しておくことをお勧めします。もちろん、「ATPセット」だけでうまくいく人もいますが、行き詰る人も結構いるからです。

フェリチン測定のフォローアップ

だいたい、初診から鉄を摂り始めて2~3か月開けて測定すると良いと思います。キレート鉄の方は調べないでフェロケル3カプセルなどを飲み続けると割とすぐにフェリチンは高値になるので定期的に調べるか、ヘム鉄/非ヘム鉄への切り替え、あるいは食事で摂るなどの方法に切り替えていくと良いと思います。

まとめ

今日は「貯蔵鉄」のマーカー、フェリチンについて少し詳しくお話しました。「フェリチン」という名前だけが独り歩きしてしまっている印象がありますが、基本的には他の検査項目と合わせて初めて正しい解釈が出来るものだということを強調したいと思います。

最後までお読み下さり、有難うございました!

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貧血についてのマガジンです。








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