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遺族に何と声をかけるべきか

こたろうです。ホスピスを経て、2013年からは開業し訪問診療を行っており、在宅療養者の診察や看取りの対応を行っています。

2022年7月に、日本サイコオンコロジー学会 / 日本がんサポーティブケア学会から『遺族ケアガイドライン』というものが出ました。大切な人を失った遺族の診療とケアに関する、本邦初のガイドラインとなります。本日はこの内容を少し紹介したいと思います。

正直、十分な内容ではありません。また、そもそもガイドラインで簡単に解決する問題でもありません。

しかし、医師らが強く必要性を感じこのような本が出版されるようになっただけでも大きな進歩であると思います。今後の改定に期待します。

以下に商品のリンクを貼りますが、内容は医師向けです。ただ、真剣に学びたいという方は参考にはなると思います。

さて、この記事の表題、遺族への声かけですが結論から言いますと何も言わない方がいい、ということになります。しかし、沈黙というわけにもいかないのでいくらかベターな選択肢を後ほどお伝えします。

ガイドラインの中身

一応、4章構成になっていますが、Ⅰ章は「はじめに」とあり、ガイドライン作成の経緯やガイドラインの使い方、といった内容で、Ⅳ章は参考資料集です。

主な内容はⅡ章が「悲嘆と家族・遺族」とあり、これは一般医向けの内容。悲嘆のプロセス、役に立たない援助、遺族に対して慎みたい言葉の一例など基礎的な内容になっています。医療者でない方にも参考になる部分だと思います。

一方でⅢ章は「精神心理的苦痛が強い遺族への治療」になっていて、専門医向けです。全体の10%強が移行するとされる、長期に渡り生活に支障が出るほどの「複雑性悲嘆」とうつ病、PTSDを区別し、後者の薬物治療を含めた対応、またこれとは別に遺族の中でも特に自死遺族支援にも触れられています。

遺族にNGな声かけ

ガイドラインでは、「寿命だったのよ」「いつまでも悲しまないで」「これで楽になったでしょ」などが遺族が傷つく言葉の代表として挙げられています。よく聞く「大往生でしたね」なども遺族からよくつらい言葉として指摘されます。

どの言葉も優しさから出ていると思いますが、結局のところ相手の気持ちや状況を決めつけるような言葉は、かけない方が無難だと思います。気持ちは、当事者にしか分からないからで、言葉ではあまりつらさを減らすことは出来ないと考えた方が良さそうです。

遺族から見て有用とされること

では、どのような対応が良いのか。ひとつは「どう言っていいか分からないけれど…」と言葉が見つからないことを正直に伝えたり、「何か役に立てることがあったら言ってね」というような気遣いです。

あるいは、ガイドラインには「話し合いや感情を出す機会」を持つことも有益としています。こちらが言うのではなく、相手が話すことを聞くのが重要ということです。

ただ、理想ではありますが結構根気がいることかもしれません。医療の現場では時間が取れず、なかなか十分には難しいのではないかと思います。「遺族会」などもありますので、場所を確認し、紹介出来ると良いように思います。

まとめ

『遺族ケアガイドライン』と、そこで述べられている「NGな言葉」、「有用な対応」について紹介しました。好ましい声かけだけでなく、大切な家族を失い、悲嘆のため生活に支障が出ている方は自分が壊れてしまう前に受診を前向きに考えること、周囲がそれを促すことなども重要だと思います。

参考までに、下記は遺族外来のある病院、遺族会のある病院リストです。





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