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ウツギ

ときめき

 空の木と書いてウツギと読む。〈そら〉と読むか読まないかでこんなにイメージが違うのかと自分の気持ちの変化に驚く。
通勤路の一角でこんもり茂り可憐な小花を一斉に咲きこぼれる見事な主役であった。目を奪われ、写真に収めてGoogle先生に名前を教えて貰う。

〈空〉この字をウツと読むのは空蝉くらいしか思いつかない。セミの抜け殻。虚ろ(うつろ)にも当てるようだが、どちらにせよ心がポッカリ抜け落ちていた頃を想い起こす。

しかし、見事なこんもり具合。。。去年も咲いていただろうに記憶にない。
ちょっとでも可愛いなとかときめいた物を覚えておきたいと思うようになった。たぶん身近にもいろいろとありそうだから。そうしたら「以外に好きなものに囲まれているな」と安心できる気持ちになれそうだから。


誕プレ

レジンと旅行

 来週初めて彼の実家に行く。まだ数回しかお会いしたことがないというのに、いきなりの2泊3日。しかも肝心の〈彼〉抜き。イヤ、この場合に彼は居ることになるのか?それとも一緒に行くことになるのか?

 そもそも、死別してから彼母と交流が始まってしまったのだから真っ当な順序など端なからない。せっせと誕生日プレゼントを作って何日過ごしてしまったことか。いったい幾つの失敗作を生み出してしまったことか。

 二人で覗き込んで見つめていたアオリイカの赤ちゃん。飼いたいなと笑っていたフグの赤ちゃん。そして何故か爆誕した彼の大好物のハゼの天ぷら。
彼の誕生日プレゼントを届けに彼の実家に行く。私の行くべき理由ができた。

たぶん義母様はゆっくり彼の話をできる相手が欲しいという気持ちもあったのだろう。私を受け入れる事で少しでも彼に安心して欲しいとも思われているかも知れない。

工場

 2日目には彼と暮らした工場に連れて行ってくださるという。確かに私には彼の実家のある市に思い出も縁も何もないので、少しでも懐かしい思いに触れて貰いたいとお心遣いいただいたのだろう。ご縁にある知人にも連絡を取っていただきランチをセットしてくださった。

 愛の巣であって、真剣に仕事に没頭した魂のこもった地ではあるのだけれども、私にとっては彼の載る救急車を見送った地であり、苦しむ彼を見ているしかなかった場所であり、最期の別れになった場所である。

 人工心肺で命を繋いでいる彼を看取ったご家族は苦しむ姿を見ていない。
他人の私だけしか見ていないのだから、ご家族に伝えるような事ではないだろう。義母さんはお一人でもドライブがてら訪れたことがあるそうだ。何かの気配だけでも感じたいのだろう。このギャップをシレッと乗り切る強さと勇気を私が身につけていると信じて行ってくる。

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