見出し画像

自分と家族(プロローグ)

 

おぞましい自分の発見

 たぶん2018年のことだった。彼と暮らしていた私は幸せだった。彼と出会って12年、共に暮らして8年が経過した頃だ。私は日々の暮らしの中で
〈未だに大好きって不思議だな〉と、純粋に同じ人をずっと好きでいる自分に驚いていた。素朴に永遠の愛だとか変わらぬ愛だとか信じていなかったという以前に〈愛〉そのものがよくわかっていなかったのだと思う。

 ネットのニュースで幼児虐待による殺人事件が話題になっていた。まだあどけない幼女の笑顔の写真と幼い子に似つかわしくないメモが繰り返し報道されていた。

 そのニュースを見た自分の第一印象がおぞましい。
「良かったね」と思ったのだった。亡くなってしまった幼女に対して、これでもう苦しまなくていいんだ。良かったね。と感じた。

 子どもが体験した理不尽に対する怒りやら無念さやら...、他に感じるだろういろんな感情がまったく思いつかずに、相応しい言葉を探す頭の中では何度も良かったねが閃いていた。

家族

 現在は成人している息子と二人で暮らしているが、ここでは私が生まれ育った実家の家族の話をする。
 若くして起業し自営業だった父は昔気質の人で「家の事と子どもの事は女房に任せる」方針だったために関係性というものが思い浮かばない。ただ父親という名前の存在であった。

 毒親なんていう言葉は無かったが、子どもの思考を洗脳し暴力と呪いの言葉で子どもを縛っていたのは母だった。

 私より2つ上の兄と、10歳下の妹がいる3人兄弟だ。私が小学生の時に祖母が亡くなったが、幼い時に食事やら着替えやらは祖母にしてもらっていた。

 家業を兄が継承することになり、当然のことなのだが会社を渡すとなれば会社の借り入れ金も兄が次ぐことになる。しかしながら両親は生存しているのだから遺産の相続という話にはならない。
 故に大いに揉めた。この揉めた事に私は一切関与していない。会社も家も財産も〈長男のものになるもの〉で私には関係ないという母の考えだ。
 「会社を継ぐから金も寄越せ」という兄と両親は弁護士を挟んで話し合いまぁ納得させるだけのお金を渡したのであろう。もちろん何の報告もない。

 当時の私は高校3年生の息子と育てるシングルマザーで、家業を手伝っていた。給料の未払いが続き、ある日出社したらタイムカードが用意されていなかった。解雇のつもりだろう。

遠方に妹が嫁いでいたこともあり、私がこの件をきっかけに彼のもとに引っ越しをして一家は離散した。

父との関係

 2010年、事業継承のゴタゴタの最中に父と怒鳴りあいの喧嘩をした。
まぁ、会社の負債を背負わせられる兄は経費を削減したい。そこで私を解雇しようとなり、受験生を抱える私を父は守りたかったのであろう。
 兄にとって好ましい人間になれ。兄は「心を入れ替えれば解雇はしない」と父に言ったのだそうだ。

 ブチギレた私は怒鳴り散らした。兄がどんだけ嘘つきであったか。幼い頃から兄の嘘だけを信じて悪いことはすべて私のせいになり母に叩かれて育ってきた。あの二人(兄と母)は真実を捻じ曲げる。自分に都合の悪い過去は無かったことにして都合のいい事実を創造して上書きする。
 「私は小学生の頃から母を○したいと思っていた。今の私の自慢はまだ誰も○していないことだ」と言い切った。絶句した父は「知らなかった。ごめん」と言って立ち去った。

半年程が経ち、彼の家に引っ越す事を父に報告したとき「何処に言ってもお前は俺の娘だ」と言って別れた。

 その後4年目に息子の用事で彼と帰郷した時に小さな用事で父に呼び出された。「タイヤが重くて出せないから手を貸してくれ」この通訳が必要な言い回しに閉口しながら、そのままの言葉を彼に伝えた。

「俺がやるよ」と軽く引き受けてくれた彼は〈彼に会わせろ〉という父の真意を理解したのだろうか。頼まれた用事は簡単に済み、倉庫から家への数メートルの移動の合間に父は彼に頭を下げていた。「娘を頼む」

 私の注意が逸れたスキを突かれたので前後が良くわからない。ただ父の方に向き直り頭を下げる彼の姿が見えた。

 その2年後に父は他界し、さらに2年後に彼父が他界、そこから2年後に彼が他界した。私の複雑な親子関係を知り、父の葬儀に参列するか悩む私に彼が「行っといたほうがええと思うぞ」とボソッと呟いた。

 「お前は(結婚して家を)出ていく身だ」と幼いときから言われ育てられた私が喪主の母の隣に立ち、この家も家族も全部お前のものだと育てられた長男が一般参列客と同様に焼香だけして無言で黙礼して立ち去る奇妙な葬儀だった。


 父と和解したことになるのか、これは現時点では保留だと思う。
幼少期の親との接し方が原因で私が彼との死別にこだわりを残してしまっているのだとしたら、父が他界したからそれをもって解決あるいは和解という結論を出し難い気がする。

 時系列的には、出産を基に退職した私は父の下で働き始め、その後離婚。
彼が起業した時期に出会い、父の会社の事業継承でモメて私は解雇されて引っ越して彼の会社を手伝うようになった。それから父の他界、彼の他界となって、家と仕事を失って帰郷した。それまもほぼ絶縁に近い状態だった母と完全に絶縁して現在に至る。

 この先をどう綴っていけばいいのか考えはまとまらないけれど、徒然なるままにの心境で書いていこうと思う。
 アップするのがめっちゃ怖い。仮面を被った悪魔をさらけ出す気持ちだ。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?