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CIID Week 26: Tangible User Interface - Week2 Reflection

こんにちは。先週に引き続き、CIIDで一番人気とされているTUI(Tangible User Interface)のコースの第二週目を振り返っていきたいと思います。

Wireless Technology to be Focused

LoRa

TUIの第二週で主に学んだ電気部品は、LoRa(LongRange)という
ワイヤレスモジュールです。基本的な機能は先週学んだSimple Radioと同じで、離れた場所にある複数のオブジェクト間のインタラクションを可能にすることなのですが、Simple Radioと違い、10km程度離れていても通信することができるという点がこれまでのモジュールと異なります。イメージとしては、電波塔に近いかもしれません。

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どの程度離れた場所でインタラクションできるか、という点については、実験してみたのですが、実際には50m程度が限界のようでした。原因としては、二つのオブジェクト間に建物やコンクリート壁のようなものがあるとそこで遮断されてしまうことにあるようです。

LoRaは比較的新しいモジュールで、プロジェクト事例や活用事例は非常に少ないのですが、ここにいくつか掲載しておきます。

■ Message in a bottle

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デンマークのとある島から打ち出された浮標で、LoRaが備えつけられています。LoRaはその現在位置といくつかのメッセージをパケットとして送信しており、受信側の人間はそのメッセージを受け取ることができます。

■ Wandering fish

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上記の例と同様な仕掛けですが、図の魚のようなオブジェクトにLoRaとGPSセンサーが備え付けられており、このオブジェクトが人伝手に渡っていくことで、個人間の関係を地図のようにマッピングすることができます。

Design For Meaningfulness

1. People to Self

本来関わることのなかった(興味のなかった)物語や職業などと、ユーザーを繋ぐことにより、ユーザーが新たな趣味を見つけることを促したり、自己探求を可能にするデザインです。デバイスを作り出すことによって、人間が成長できていると感じられれば””People to Self”を実現できていることになります。

■ Self Exploration
“People to Self”は自己探究(Self Exploration)から始まります。これは要するに自分おアイデンティティ発見に関わるデザインで、まさに新たな気づきを自分にもたらすようなデザインです。

■ Self Development
新たな気づきをもたらすことに加えて、ユーザーの行動を変容させるようなデザインを指します。何か特定のコンテクスト(例: 日本人からコスタリカ地元住民への変容)に応じて、新たなことを学習していたり、スキルを身に付けていれば、Self Developmentを満たしていることになります。

■ Self Expression
最終的には学んでいる状態から、自分で何か新しいことを表現している、作り出していることを目指します。それが、Self Expressionです。例えば、自分のようにコスタリカに住み始めて、国や地域のことを調べ・学んでいる状態から、コスタリカという国で新たなプロジェクトを始めていれば、それはSelf Expressionに他なりません。

※個人的にはこんなに長たらしく体系化しなくても、十分にデザインとして意味を成すだろうと考えていました。先週の例でもそうでしたが、今回の講師は非常に理論家である一方で、分かりにくいことも多かったです。

2. People to Time

デザインを通して、時間の経過を感じさせることが目的ですが、デザインにおける人間の時間の感じ方・捉え方というのは、下に示すように複数存在します。

■ Short versus long term

Hedonic (Immediate / Short Term)
何かデザインをするということは、短期的に人間に変化や利益をもたらします。例えばコップをデザインすれば、飲料は飲みやすくなりますし、エアコンをデザインすれば、人間の生活は快適になるでしょう。当たり前すぎてあまり意識することはないかもしれませんが、多くのデザインの効果は「ユーザーが利用した直後」に表れることになります。

Eudaimonic (Long Term)
上の例とは別に、なかなか短期的に効果が表れてこないデザインも存在します。生活習慣を変えるようなプロダクトは世界に多く存在しますが、なかなか生活習慣を変えることができないのが人間の性だと思います。それでも長期間使っていれば、人間の意識そのものを変えることができるようなプロダクトは存在し、それがこの分類に該当します。

■ Sense of Time
時間感覚は人様々で、年をとるごとに一年が短くなっていくように感じる、という話は有名ですが、人間の時間の感じ方にも干渉できるようなデザインも存在します。少なくとも忙しい日常を過ごしている現代人に、ゆっくりとした時の流れを感じさせることは有益なデザインだと個人的に考えています。

■ Representation of Time
100年カレンダーというものを皆さんはご存知でしょうか。生まれ年から100年のカレンダーを見せることで、死ぬ日までの時の短さをカレンダー形式で感じさせるものです。このように時間という目には見えないものを、物理的に表現することで、時間の流れを感じさせることも可能です。

Project3: Purpose

LoRaが紹介された直後に、今週の最初のプロジェクトが実施されました。

Project Brief
Create a low-fidelity prototype that explores purpose within the larger scale of the city using LoRa with a focus on range.

また今回のプロジェクトでは、コスタリカ特有の文脈を含めてデザインすることも含まれていました。その目的は自分たちのバイアスを壊すことにあったようです。コスタリカに来て7ヶ月経った今、生活をする上で困ることはなくなってきました。生活必需品を仕入れる場所も知っていますし、観光や娯楽事情にも詳しくなってきているのは事実です。ただ一方で、ローカルの人と比べてしまうと、まだまだ知らないことが多いのも事実で、自分の場合は日本にいる時と同じ感覚で、生活していることもあります。

例えば、東京に住んでいた自分は自然や生物についての興味・知識はほとんどなく、またそれらを日頃から意識することはありませんでした。だからコスタリカに来て珍しい鳥や昆虫に遭遇したとしても、「ああ珍しい鳥・昆虫なんだな」くらいにしか思っていませんでした。一方でローカルの人たちからすると、その体験はすごく貴重なことでそれだけで一日が幸せになる人もいるようで、話を聞くまで理解できませんでしたが、要するにコスタリカで何かをデザインする上で、自分のバイアスを壊すためにもコスタリカ自体のコンテクストを理解することは非常に重要だということです。そうした経緯で、自分たちは最初にデスクトップリサーチのような一般的な形から入るのではなく、近所を出歩いてみて何か気になることはないか、という簡単なリサーチから始めました。

Brainstorming/Initial Research

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そしてチームとして気にかかったことは、自分たちの住んでいるエリアは日本では禁止されているようなウォールアートで溢れていた、ということです。そのどれもが高品質で非常に美しかったです。その写真を撮るためにコスタリカの各地から多くのカメラマンが撮影に来ているようで、上の例にもあるように、その中でもウォールアートを背景にしてポートレート写真を撮るカメラマンが多いようでした。

気になったことは、あるカメラマンが話していたことで、「どのウォールアートも美しいのは分かるのだけど、こんなにたくさんあるとどこで写真を撮ればいいのか分からない、また迷うことがある」ということです。自分も趣味で写真に興じているのでなんとなく意味はわかるのですが、撮影場所が多すぎても「ベストな写真」を撮るためには、どこで撮影した方がいいのか迷うカメラマンは意外と多いのではないでしょうか。これはコスタリカのように国全体として観光産業が発展しており、多くのカメラマンが身を寄せる国では起こり得そうな問題と理解しました。

そこで自分たちのDesign Opportunityは、「コスタリカのカメラマンがベストな撮影場所を選ぶためにどのようなサービスを生み出せるか」ということになっていきました。

Desktop Research
なんとなくテーマをチームで共通認識した後は、そのテーマについてリサーチを実施しました。その中で以下のような気になる記事を見つけました。

この記事で言っているのは、カメラマンまたはモデルが撮影場所としてより美しい場所を求めているあまり、撮影場所の環境を破壊している、ということです。この記事ではある花で有名だった場所に、インスタグラマーが殺到し、綺麗なポートレート写真を撮るために花を刈り取ったり、その上に寝そべったりしていることを問題視していました。

集団意識やモラルを持っている人が多い日本では、なかなか見られない問題ですが、京都を中心とした外国人観光客が多い都道府県では、Tourism Phobia(観光公害)という名前で同様の問題が起きています。勝手に古民家に入って写真を撮る外国人観光客は想像に難くないと思いますし、舞妓さんを許可なく撮影する外国人は、「舞妓パパラッチ」と呼ばれています。

時にはメインのユーザーではなく、その周囲に存在する他のステークホルダの事情も考えて問題をフレーミングすることは、デザイナーとして非常に重要だと思いました。

そこで自分たちのチームでは、単純にカメラマンを補助するだけでなく、ある撮影場所が人気になった後も、環境や景観を保てるようにするにはどうすれば良いか、という問いを立てて以下のようなHMW文を設定しました。

Problem Statement
How might we Empower Travelers to explore Vantage points for photography across Costa Rica without disrupting the local Ecosystem?

Prototyping

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自分たちのチームが考えていたプロトタイプは、上の写真に示すようなものです。英語でコンセプトを表すと、以下のようになります。

A Camera that identifies and guides the traveller to explore the best photographic outdoor spaces

■ Functionality
フォトスポットから発されているシグナルを、カメラ備え付けのLED・センサーが感知し、フォトスポットからの距離に応じてLEDの点灯具合が変化するというものです。カメラマンがフォトスポットに近づくにつれて、LEDが点滅を開始&点滅が早くなり、フォトスポット周辺に来たところで完全に点灯する仕組みになっています。

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またフォトスポットがシグナルを発し続けていると、その場所が有名になってカメラマンが殺到した場合、先述したような環境破壊が起きて地域住民の生活を脅かしかねないので、10人のカメラマンがシグナルを受信した後は、シグナルの送信をストップする仕組みも搭載しました。

このシグナル送信の仕組みを国全体に広めることで、カメラマンに撮影場所を提供しながらも、地域住民の生活は守れるだろうと考えていました。

■ Technology
今回利用したテクノロジーは冒頭に記述したLoRaです。フォトスポットに送信者としてのLoRaを設置し、10秒おきにシグナルを発信できるようになっています。またカメラ側にも受信側としてのLoRaを備え付けることで、受信したシグナルに応じてLEDを点滅・点灯させます。

シグナルにはRSSI(Received signal strength indication)という、ネットワークの強弱を表す指標を用いており、RSSIの値の大きさに応じて、LEDの点灯をコントロールしています。

■ Future Consideration
現在LEDの点滅のみでインタラクションを完結させているので、異なる色のLEDを使う等して、より多くのメッセージをカメラマンが理解できるようにすることは重要だと思います。またサービスデザインという側面を考えた時には、そもそも誰がフォトスポットにLoRaを設置するのか、という問いには答える必要があると思います。

Project4: People to Time

最後の一日を使って2つ目のプロジェクトが実施され、このプロジェクトでは、APIを活用してネットワークを構築することが求められていました。

Project Brief
Create a networked TUI prototype that explores a people-to-sense of time connection in the context of Costa Rica using either LoRa and/or Wi-Fi.

Brainstorming

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ブレインストーミングの段階では、議論の中心は「人間はどのように時間を感じているか」という論点にありました。グループメンバの一人が問題視していたのは、「現代人は時間の経過をアラームやチャイム、ミーティングのアポイントメントなどの通知を通して感じることが多いのではないか」ということです。そうしたことを続けていると、人間としては何かに急かされているような感覚に襲われるのではないか、と議論をしていました。

日本の典型的なビジネスマンには特に当てはまると思うのですが、平日は時間に追われるあまり、ストレスを感じやすい環境に身を置かれていると思います。時間を意識して生産的な行動を心がけることは良いことでもある反面、ストレスを生む原因にもなります。一方で海外に来るとわかりますが、同じような状況はあるものの、Chill(のんびりする)の習慣が根付いていることがあり、仕事で忙しくてもその合間に本を読むことやお酒を飲むことがよくあります。この時点でチームはなんとなく、「忙しく日常を送っている人が日頃とは異なる形で時間の経過を感じることはできないか」という問いを設定していました。

ではどのようにすればストレスなく時間を経過させることができるのか。その答えは、夏休み中にコスタリカを旅行した時の経験に答えがありました。

上の記事にも記載してありますが、人間は大自然に身を置いた時に、リラックスした感覚に陥ることが科学的に立証されているようです。リラックスする他に生活習慣が規則正しくなる、血圧が正常値に戻るなど健康面に対する効果も認められています。コスタリカのジャングルや海を旅行していた時に感じていたのはまさにこのことで、そこにいるだけでリラックスしたような気持ちになることができました。チームとしては何とかその感覚を忙しい現代人に感じさせることができないか、と考えるようになりました。

次の論点は、大自然のどのような要素が人間をリラックスさせるのか、ということです。それは視覚的な情報かもしれませんし、川の流れる音のような聴覚に由来するものかもしれません。または葉っぱを触った時の感覚ということもあり得ます。ただチームとして注目したのは、「嗅覚」です。嗅覚は下のプロジェクトにあるように、脳に直接訴えかけられる五感の一つで、嗅覚を通して時間の経過を感知することができたら面白いとチームとして結論
しました。

そして結果として、チームとしてのHMW文は以下のようになりました。

Problem Statement
How might we reconnect people who are busy in their day- to-day activities, to gratifying moments of their past experiences through the sense of smell?

Design Research (One-to-One Interview)
当たり前ですが、時間ごとに感じる匂いは人によって異なります。例えば朝を連想させる匂いは何と聞かれた際に、コーヒーと答える人もいれば、何らかのフルーツと答える人もいるかもしれません。そのため、特定の時間を連想させるいくつかのインサイトを得るために簡単なインタビューを行う必要がありました。

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そこでコスタリカ人を中心に、時間帯別に日頃どんな匂いを体験しているかインタビューを実施しました。その内いくつかの面白い回答を掲載します。

・朝はコーヒー、昼はCasado(コスタリカの伝統料理)の匂いを連想するが、キッチンでは母親の作るCasadoの匂い、祖母の家では古臭い匂いというように時間よりも場所に応じて連想する匂いが異なる

・家では母がつけている香水や服の匂いを連想する

・午後は(コスタリカでは毎日のように起きる)集中豪雨の匂いを連想する

・泥の匂いは、自分の故郷を連想させる匂いであり、同時に自分をリラックスさせる匂いでもある

・山を連想した時には、濡れた樹木や特定の樹木の幹からする匂いを思い浮かべる。またその匂いは、自分が旅行している時の感覚を思い出させ、時に時間の経過スピードをゆっくりにする

このように個人が時間や場所に応じて連想する匂いは異なり、またその匂いから得られる感覚も全く異なることが見て取れます。このような洞察から、ある特定の匂いを強制的に人間に押し付けつのではなくて、個人の経験に応じて匂いを選択できる、Smell Kitのような仕組みを作ってはどうか、と結論しました。

Prototyping

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今回のプロトタイプは、二つのパートに分かれています。

Aroma Diffuser: コスタリカの現地時間に応じて、対応する香りや匂いを発することができます。発せられる香りや匂いは、挿入されたカプセル(上写真の茶色い筒)に応じて決められており、自分好みのものを発することが可能です。

Personalized Aroma Capsule Kit: 複数の香りや匂いに対応するため、カプセルキットも用意しています。対応するカプセルは、カスタマイズできるようにカプセルごとに購入できる想定です。

■ Technology
使っているテクノロジーは非常にシンプルで、World Time APIとArduino Nanoのみです。Arduino Nanoがアクセスポイント(PubNub)を経由して、コスタリカの現地時間を取得し、特定の時間帯(例: 16時-18時)のみLEDを点灯させながら、デバイスを起動させます。World Time APIとしては、Wolfram APIというトーキングマシンを用いており、1分置きにWolfram APIと会話することでデバイスは時間を把握しています。

■ Future Consideration
このデバイスを置く場所として、デスクの上を想定していたのですが、ネットワークデバイスを考えた時には、「誰かのために特定の香りや匂いを発してあげる」というコンセプトも面白そうです。その場合は、カレンダーAPI等を駆使して、誕生日や記念日をリマインドしてあげる・通知してあげるというコンテクストがぴったり合いそうです。

他の学生からは、これを特定の場所に置くのではなく、ポータブルデバイスにすると利用できるシーンが増すのではないか、という声も挙がりました。

また、香りのような目に見えないものを発することができる電気部品も存在するようで、複数日あれば以下の部品に手を伸ばすこともできました。

このような形で新たなテクノロジーとデザインを学びながら、2つのプロジェクトを実施するというなかなかのハードなスケジュールとなりました。来週は最終週となり、1週間丸々与えられてのプロジェクトとなりますので、気を引き締めていきたいと思います。

町田

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