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CIID Week9: Prototyping as a Process

今週はCIIDとして初めてのコースとなるPrototyping as a Processを学習しました。コース名の通り、プロトタイプをいくつも作成しながら、プロジェクトを進めるコースなのですが、今までビジネスのプロジェクトで考えてきたプロトタイプとは考え方が異なっていたので、学びが多かったです。最近はビジネスの現場でも、イノベーション系のプロジェクトで、本格的にプロダクトやサービスをローンチする前にまずはプロトタイプでテストする試みが増えつつあると思います。これは従来のウォーターフォール的な考え方とは明らかに異なり、まだまだ理解が深まっていない領域だと考えています。

そんな中、プロトタイプするとは言っても、そもそも何をテストするのか、どんなプロトタイプを作る必要があるのか、どのくらいの期間プロトタイプに時間をかける必要があるのか等、疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。実際ビジネスの現場で語られているプロトタイプの多くは、相当に高度に作り込まれたワイヤーフレームやモックアップなど、本来デザイナーが手掛けているプロトタイプとは異なるモノが多いです。単純に「本番環境のプロダクトより少し劣ったモノがプロトタイプ」というビジネス流の考え方を続けていては、良いアイディアも発展させることができないと思います。

今回は元々は「ビジネス流のプロトタイプ」を手掛けていた自分が「デザイナー流のプロトタイプ」を学んだという文脈で、学び別に実際のプロセスに即して記事をまとめてみました。

学び1: “Low Fidelity”から”High Fidelity”へ

先に述べた通り、ビジネスの現場でプロトタイプを作る際によくイメージされるのは、ある程度コンセプトが決まった後のアプリのモック画面やサンドボックス環境で動くほとんど実物と見なすことができるプロダクトだと思います。

一方で今回のコースで最初に作成したプロトタイプは2時間程度で作成することができるペーパープロトタイプです。「本質的に何を解決したいのか」が決まっていない状態から精巧なものを作り込む必要はありません。そのステージに沿ってプロトタイプから「何を学びたいのか」を考えて、適切なFidelity(度合)を決めます。今回のコースでは以下のような段階があるように思えました。段階が増すたびにFidelity(度合)がリアルに近づきます。

Step1: 人の動機や課題を学ぶためのプロトタイプ
今回自分たちのグループに与えられたテーマは「太陽光発電をシェアするコミュニティが一般的になった未来でどのように限られたリソースを配分し合うのか」です。そこでまず自分たちは、この環境下で人にどのような行動が見られるのかをテストするペーパープロトタイプ作りを実施しました。

例えば、「人はエネルギーをシェアしている環境下で、エネルギー消費量ランキングが可視化された際に、自分の消費量を恥じて消費量を減らしたいと思うのか」をテストするプロトタイプは以下のようなものです。これだけでもユーザーとの会話を促すには十分で、様々な角度からフィードバックを得ることが可能です。

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Step2: コンセプトを視覚化するプロトタイプ
上記からある程度、肯定的な反応が得られたので、プロダクトの要素として取り入れることにしました。自分たちのグループはiPadやARのようなものでユーザーとインタラクションすることを想定していたので、次のプロセスでは「どのような要素を画面に取り入れればユーザーはエネルギー消費量を減らすようになるのだろうか」と考えていました。

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Step3: ユーザーを実際の状況において体験を確かめるプロトタイプ
次はある程度想定される画面を作り込んだ後に、実際の状況を考えて「どのように体験をスタートさせるべきか」「何をすればプロダクトを使用し始めるのか」など、インタラクションのキーとなる部分をテストします。まずは簡単に状況をスケッチし、実際の仮想環境にユーザーをおいてみて、どのように感じるかをテストしてみました。

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実際にユーザーを想定している環境下において体験をテストしている状況は以下のようなモノです。ユーザーは画面をクリックして次の画面に遷移するなど、実際のインタラクションが発生していますが、それはフェイクで裏側でチームメンバーがユーザーの動きに合わせて画面を操作しています。

Step4: リアルデータ・機能をテストできる形まで体現したプロトタイプ
次は実際のデータや機能を再現して、本物と感じられるレベルまでプロトタイプを作り込んでみます。これは現在のビジネスの現場で語られているプロトタイプのイメージに近いです。以下は画面遷移図になります。

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学び2: 解決する課題に集中し、ビジネス要素は一旦無視

プロトタイプ段階で重要なのは、「ユーザーにとって何が課題でそれをどのようにプロトタイプで解決するのか」です。プロトタイプを作成していると、頭の良い人ほど、色々な機能や制約を考えがちですが、本来それは何らかの課題を解決する際に不要でしかありません。

また、ビジネスの現場でよく考えられる「どのようにマネタイズするのか」という問いもプロトタイプ初期段階ではあまり考えません。そもそも解決すべき課題が間違っていてはプロダクトを作る意味すらないからです。マネタイズする仕組みは、コンセプトがしっかり決まった後に考えるべきだと思います。一方で日頃から、マネタイズする方法についてリサーチを重ねることは非常に重要と思います。

自分たちの場合、今回のコンセプトを成立させるのに重要な課題をシンプルに可視化して、議論が複雑になった際に立ち戻れるようにしていました。

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学び3: 手を動かしながら考える

特にプロトタイプの初期段階ではプロジェクトメンバと話すことよりも、何かを作って何らかの可視化をした方が議論が進みやすいと思います。この段階では言語化できていない部分が非常に多いので、可視化してみることで他メンバから思いがけない示唆が得られたり、言語化できていない部分が自分の中ではっきりすることがあると思います。

自分たちの場合は、初期段階でそれぞれがテストしたい内容を考えてできるだけ多くのプロトタイプコンセプトを考えました。それもテストしたい内容を精緻に固めるのではなく、ある程度の思いつきを許容してできるだけ早く作り込み、人とコミュニケーションすることを心がけました。

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プロジェクトにおけるプロトタイプの考え方は、いかがでしたでしょうか。まだ1週間プロトタイプの世界に身を委ねてみただけなので、はっきりしない部分も多いのですが、デザインスクールに所属する限り、触れ続けるトピックと思いますので、今後も考えを深めていきたいと思います。

町田


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